第24話:『偽りのステージ、真実の資材』
ショー当日が迫る中、ガレージは異様な熱気に包まれていた。
「右、左、ターンしてキメ!……おい、アリス! 遅れてるぞ!」
ゼンジの罵声が響く。アリスとユイは、
汗だくになりながら猛特訓の真っ最中だった。
「歌は音源を流すから口パクでいい。
その代わりダンスだけは完璧に叩き込め!」
ゼンジの無茶振りに、二人は必死で食らいついている。
パイロットのユイは、さすがの運動神経で踊りこなすが、
問題はアリスだ。足をもつれさせ、悲鳴を上げている。
「待って……。整備の計算より、このステップの方が
よっぽど難しいわ……っ!」
膝をつくアリスを余所に、ゼンジは容赦なく音を鳴らす。
「泣き言を言うな! 十億円の価値を見せつけるんだよ!」
一方、俺は会場への搬入資材の最終チェックに追われていた。
「……氷の粉砕用チップ、ヨシ。フォグランプ予備、ヨシ」
手元のリストを埋めていく。
会場が決まった以上、もう後戻りはできない。
今回運ぶのは、本物の換装パーツではない。
あの日、段ボールの代わりに突貫で作った「見栄え重視」の
ハリボテと、偽物の変身を演出するための手品装置だ。
だが、その外装の質感には、俺の誇りを込めてある。
「……十一億円分の嘘、か」
俺は積み上げられたコンテナを叩き、独りごちた。
アリスが必死に踊り、ユイが笑顔を練習し、
俺が偽物の舞台を整える。
すべては、いつか来る「本物の戦場」のために。
整備士の俺ができるのは、この馬鹿げた祭典を、
事故なく、完璧な「嘘」として完遂させることだけだ。




