第22話:『十一億円の少女』
なんやかんやでハリボテの設備を揃えた結果、
政府から出た前の報酬は、ほぼ底をつきかけていた。
「……ゲンさん、これ次の仕事がすぐに来ないと、
維持費だけでうちの会社、マジでジ・エンドよ」
アリスが空っぽの通帳を手に、真っ青な顔で震えている。
「チッ、整備機材ってのは金がかかるんだ。
偽物の変身装置だってタダじゃねえんだよ」
俺が苦々しく吐き捨てると、ゼンジが不敵に笑った。
「金がねえなら、直接国民から吸い上げればいい。
……よし、ユイの『握手会』を開催するぞ」
ゼンジが打ち出した条件は、正気の沙汰じゃなかった。
入場料十万円のチケットが一万枚。
さらに、限定百枚の「握手券」は一枚百万円。
「……百万円!? 誰がそんなの買うんだよ」
ユイが呆れて言うが、ネットに情報を流した直後、
サーバーは予約殺到で一瞬にして火を噴いた。
「――十万円の入場券、一万枚即完売だ。
百万円の握手券も、数分遅れてすべて完売。
……しめて、十一億円の予算が確定したぜ」
ゼンジの端末が、勝利を告げる通知を刻み続ける。
「……世の中、やっぱりロリコンばっかりなの?」
ユイが本気で引き気味の声を漏らしたが、
これで当面の機体維持と、設備投資の目処は立った。
「よし、ゲン。ステージ用の『氷の変身ギミック』を
完璧に仕上げろ。大金を払う客を心酔させて、
もっと太いパトロンを捕まえるんだよ」
俺は複雑な心境で、偽物の氷を砕くための
点火プラグを磨き始めた。
十一億円分の期待……戦場とは違う重圧が、
このボロガレージにのしかかっていた。




