第20話:『嘘の具現化』
「……ゼンジさん、変身装置って言われても困るわ。
あんな動画みたいなもの、技術的に不可能です」
アリスが頭を抱え、モニターの再生画面を指差した。
宙を舞う水が体にまとわりつき、一瞬で凍り、
氷が砕けたらスーツ着用完了……。
そんな魔法のような技術、この地球のどこを探しても、
あるいは銀河連盟にだって存在しないだろう。
「あの動画は、あくまで私が加工した『嘘』です。
実物を作れなんて、物理法則への挑戦だわ」
正論を吐くアリスに、ゼンジはニヤリと笑った。
「お嬢ちゃん、難しく考えるな。本物を作る必要はねえ。
……いいか、透明なアクリル板と、細かいガラス細工、
あとは大量のフォグランプを用意しろ」
ゼンジの「演出案」はこうだ。
ユイを円筒形のカプセルに入れ、周囲に水を噴射。
そこに強力なストロボを当てて視界を眩ませ、
氷が割れるような派手な「音」をスピーカーで流す。
「客が見るのは、カプセルの中で光が爆ぜる瞬間だ。
光が消えた時、ユイがスーツ姿で立っていれば、
脳内であの動画のシーンと勝手にリンクしてくれる」
「……つまり、大掛かりな手品をしろと?」
俺が横から口を挟むと、ゼンジは指をパチンと鳴らした。
「正解だ、ゲン! 整備士のあんたなら、
その『氷が砕けるように見える照明のタイミング』、
完璧に制御できるだろ?」
「……ハッ。精密な点火制御なら、俺の本業だ」
俺は呆れながらも、既にカプセルの設計図を広げていた。
存在しないオーパーツを、既存の技術とハッタリで
「そこにある」と思わせる。
これは、技術者としての新たな「戦い」の始まりだった。




