第19話:『見栄とハリボテ』
整備を終えた深夜の祝賀会。安物の肉を突きながら、
ゼンジが上機嫌でジョッキを置いた。
「……よし、今日の報酬で設備をまともにするぞ。
ゲンは発進システム、アリスは変身装置の担当だ」
アリスは驚き、即座に首を振った。
「ダメよ、そんなの! せっかくの貴重な資金だもん。
もっと貯まってから、完璧な機材を揃えるべきよ」
「……お嬢ちゃん、甘いぜ」
ゼンジはニヤリと笑い、モニターの通知を指差した。
「今回のバズり方を見てみろ。近いうちに、
必ず視察や見学を希望する『偉い奴ら』が来る」
「そんな奴らに、黒く塗った段ボールを見せるのか?
……いいか、とりあえず動かなくてもいい。
『段ボールではない何か』を並べておく必要があるんだ」
「でも、動かないものを作っても意味が……」
食い下がるアリスを、ゼンジが手で制した。
「客が来たら『あいにくメンテナンス中で動かない』
とでも言っておけばいい。大事なのは、ここには
『本物の技術と予算がある』と錯覚させることだ」
俺は黙って話を聞きながら、ビールの缶を潰した。
「……つまり、巨大なハリボテを作れってことか」
「そうだ。外見はゲンが本物っぽく仕上げろ。
内部は空っぽでいい。人気を維持するための、
必要な『嘘』の投資ってやつだよ」
「……はぁ。整備士にハリボテを作らせるとはな」
俺はあきれながらも、既に脳内で「それっぽく見える」
ダミー機材の設計を始めていた。
真実を守るために、さらなる嘘を積み上げる。
この奇妙なガレージの戦いは、まだ始まったばかりだ。




