第18話:『祝杯の前に』
帰還したユイは、ガレージのモニターに映し出された
自分の「変身シーン」を見るなり、顔を真っ赤にした。
「……なにこれ。聞いてない。恥ずかしすぎる」
あまりの羞恥に耐えきれず、彼女はコアの陰に隠れた。
一方で、アリスは政府から届いた通知を二度見していた。
「……う、嘘。一回の出撃で、こんな額が……!?」
画面に並ぶゼロの数に、彼女は膝を震わせている。
前職の時なら考えられない、純粋な成果報酬の重みだ。
「ハハッ、言っただろ? 煩悩は金になるんだよ」
ゼンジは満足げに笑い、機嫌よく手を叩いた。
「よし、これだけありゃ今夜は豪勢にいけるな。
ゲン、アリス、ガキ共。まずは祝賀会だ!」
「……悪いが、俺はパスだ。やることがある」
俺は浮かれる連中を余所に、作業着の袖を捲り上げた。
「えっ、明日でもいいじゃない。疲れてるでしょ?」
アリスの引き止めを、俺は首を振って拒絶した。
「いつ次の出撃要請が来るか分からねえんだ。
あの激しいドッキングをこなした後のジョイントを、
放置して酒を飲めるほど、俺の心臓は図太くない」
俺がコアの下に潜り込み、レンチを当てたその時だ。
「……私もやる。早く終わらせて、お肉食べる」
ユイが恥ずかしさを押し殺し、軍手を持って現れた。
アリスも「……そうね。これが私たちの命だもんね」
と、決意を込めて雑巾とオイルを手にする。
「……チッ。どいつもこいつも真面目かよ」
ゼンジも文句を言いながら、照明機材を片付け始めた。
鉄と油の匂いが満ちる狭い格納庫。
だが、全員で機体に触れるその空気は、
どこか誇らしげで、本物のチームの熱を帯びていた。




