第16話:『虚構の翼、真実の出撃』
サオトメ技研に、ついに政府からの緊急出撃依頼が届く。
「依頼を受ける以上、配信の義務があるわ。
でも、うちには派手な舞台装置なんて一つも……」
不安がるアリスに、ゼンジが不敵な笑みを浮かべた。
「安心しろ。配信画面は俺がジャックして加工する。
前の段ボール動画を素材に、完璧な合成を見せてやるよ。
外から見れば地味な発進だが、ネットの向こうじゃ
伝説の神話が始まってるように見せてやる」
今回の出撃で使えるのは、動画用に整備した飛行パーツのみ。
だが、ユイの腕ならそれで十分お釣りがくる。
ゼンジは事前に「搭乗シーン」のCGも作り込んでいた。
配信が始まると、世界中の画面に衝撃的な映像が流れる。
ユイが静かに服を脱ぎ捨てると、どこからか水が溢れ出し、
彼女のしなやかな体にまとわりつく。
次の瞬間、水が白く凍りつき、直後に激しく砕け散る。
氷の下から現れたのは、肌に密着した最新のスーツだ。
「――ユイ、行くぞ!」
「……了解。ゲンおじさん、行ってくるね」
ユイはそのままコアの上部から鮮やかに飛び乗り、
ハッチが閉まると同時にエンジンが咆哮を上げた。
実際には、ユイはボロいガレージで着替えていただけだし、
コアもただ滑走路を走り出したに過ぎない。
だが、ゼンジがリアルタイムで被せる「リボルバー」の
加工映像により、世界は再び熱狂の渦に叩き込まれる。
「……ハッ、嘘もここまで極めれば芸術だな」
俺はモニターの派手な演出と、目の前の静かな出撃を
見比べながら、ゲンナリしつつもレンチを握った。
この「偽物の魔法」が解ける前に、ユイが敵を殲滅し、
本物の勝利を掴み取ってくれば、それでいい。




