第11話:『段ボールのリボルバー』
サオトメ技研の格納庫。ゼンジは一歩足を踏み入れるなり、
「……最悪だ。狭い上に、ギミックを足す予算もねえ」
と、不機嫌そうに鼻を鳴らした。
だが、中央に鎮座する換装コアを一瞥した瞬間、ニヤリと笑う。
「ゲン、格納庫が狭いなら、それを逆手に取る。
お嬢ちゃん、段ボールを山ほど集めてこい!
あと、工事用の真っ黒な塗料と、強力な照明だ!」
数時間後、ガレージには異様な巨大オブジェが完成していた。
それは、黒く塗られた段ボールで作られた、
巨大な拳銃の「シリンダー」を模した換装ドックだ。
「いいか、ゲン。コア自体に加速させて、このシリンダーの
中にある素体目がけて、弾丸として突っ込ませるんだ。
リボルバーの薬室に弾丸が装填される……どうだ、映えるだろ?」
「……バカか。段ボール製だぞ? 衝撃で潰れるだろ」
俺が呆れて言うと、ゼンジは不敵な笑みを浮かべた。
「だからそこはゲンの腕の見せ所だ。
外側は安物の紙だが、内部のレールだけは鉄板で補強しろ。
カメラを通せば、これは『巨大な鋼鉄の銃身』に見える」
ゼンジの狙いは、加速するコアがシリンダーへ吸い込まれ、
ガシャリと噛み合った瞬間に、そのまま発進するスピード感だ。
闇の中に浮かび上がる巨大なリボルバー。
その中を、ユイの乗るコアが弾丸となって駆け抜ける……。
「最高だ。メッキの玩具じゃねえ、硝煙の匂いがする演出だ。
ユイ、お前は弾丸だ。加速を緩めるんじゃねえぞ」
ユイは「……これ、段ボールでしょ?」と冷めた目で
巨大な筒を見上げていたが、言われるままにコアへ乗り込んだ。
「ゲン、調整しろ! 接続までコンマ数秒。
その瞬間の重圧感を、世界中に叩きつけてやるんだよ!」
俺は苦笑いしながら、安物の段ボールの中に、
精密極まる鋼鉄のガイドレールを溶接し始めた。




