第10話:『覚悟の所在』
「……お前の言うことはもっともだ、ゼンジ。
だがな、それを決めるのは俺の仕事じゃない」
俺はそう言って、呆然と立ち尽くすアリスとユイを、
汚れた親指でグイと指し示した。
「ここの社長はアリスだ。そして、命を懸けて
そのコックピットに座るのはユイ、お前だ。
俺は、お前らが決めた道を全力で支えるだけだ」
ゼンジの鋭い視線が、今度は二人の少女に注がれる。
「……いいか、お嬢ちゃんたち。俺が動く以上、
お前らの『普通』は捨てる。地味な勝利を、
熱狂的な神話に変えて、人気を奪い取るんだ」
アリスは拳を握りしめ、横に立つ妹の顔を見た。
「……ユイ。私たちは、あの大企業に勝たなきゃいけない。
あいつらから人気と補助金を奪い取って、
この会社を、本物を守れる場所にしたいの」
ユイはしばらくの間、黙って自分の小さな手を見つめた。
そして、顔を上げると、ゼンジを真っ直ぐに見据えた。
「……おじさんの作った動画で、会社に金が入るの?
それで、ゲンおじさんの給料が払えて、機体が直せるの?」
「ああ。お前が映えるだけで、装甲が一枚増えると思え」
ゼンジが不敵に笑うと、ユイは小さく溜息をついた。
「……わかった。私、やるよ。
ただし、操縦の邪魔になる変な飾りは絶対に拒否する」
ゼンジは最後の一滴を飲み干すと、空瓶をゴミ箱へ。
「交渉成立だ。……おい、お嬢ちゃん。
まずはその格納庫ってやつを見せてもらうぜ」
落ちぶれた神が、再び目を醒ました。
地味な町工場が、世界を熱狂させる反撃の拠点へと
変わり始めた瞬間だった。




