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そのお店の近くまで来て、お店に明かりがついているのに気がついた。深夜だというのに、どうしたんだろうか。気になってなかをのぞいてみた。おそらく店主のものだ。大きな背中とそれにふさわしい大きなお尻だけが見えていて、それらの持ち主の顔は見えない。背中にしろ、お尻にしろ、ときおり動いているような、けれども、じっとしているような。まさか、と思い、思いきってお店のなかに入ってみた。
さっと背中とお尻が向きをかえ、見慣れた顔があらわれた。
「あれえ、ダニエルさん、どうしました?」
「ああ、いえ、ちょっと」
「夜のお散歩ですかな?」
「そんなとこです」
「暑かったんじゃないですか?いま冷たいの入れてきますかねえ」
深夜にもかかわらず、気をきかせてくれる。
「いえいえ、いいです、いいです。明かりがついてたから、どうしたのかなって、それだけですから」
お店の奥に引っ込んだ店主は、わたしの言葉を背中で受けとめた。遠慮をしたわりに、わたしはその場に立ちつくし、行ってしまおうとしなかった。冷たい飲みもの欲しさにではないし、店主が車で家まで送っていきましょうかとの申し出を期待してのことでもない。明るいお店のなかから暗い外に出ていくのが嫌なのか。それとも、ひとりになるのが…
どうなんだと自問自答の間もなく、店主が飲みものを持ってきてくれた。ふわりと小さく風がそよぎ、わたしと店主との空間が、いくらか和んだものになった。そんな気がした。




