発見
警視庁○○警察署。
署内の一室で、初老の男性が刑事と向かい合っていた。
「事情は分かりました」
刑事は手元の資料へ目を落とした。
「息子の明人さんが、お孫さんを預けに来た」
「そして、二週間たっても戻らなければ、警察へ届け出るように言われたんですね?」
「はい」
明人の父親は重く頷いた。
「最初は、何のことか分かりませんでした」
「ただ、あまりにも真剣な顔をしていたものですから……」
父親は苦しそうに顔をしかめた。
「その後、明人さんから連絡は?」
「ありません」
「現在、どこにいるか心当たりはありますか?」
父親はゆっくりと首を横に振った。
少しの沈黙が流れる。
父親は不安そうに刑事の顔を見た。
「あの……」
「発見された夏未さんたちは、今どうしているんですか?」
刑事はすぐには答えなかった。
手元のメモを閉じ、何とも言えない表情を浮かべた。
◇
半日前。
湖畔にある工房の前に、二人の警察官が立っていた。
『これより、工房内の捜索を開始します』
一人が無線で本部へ連絡する。
もう一人は、窓から中の様子をうかがっていた。
「人影は見えないな」
入口へ回る。
「扉が開いてる」
警察官たちは慎重に工房へ入った。
「警察です!」
「誰かいませんか!」
声を張り上げる。
しかし、返事はなかった。
二人は工房内を見回した。
作業台。
木材。
工具。
完成途中の家具。
人がいた形跡はあるものの、誰の姿も見当たらない。
「誰もいないようだな」
一人が首を横に振り、入口へ戻ろうとした。
そのときだった。
一匹のシベリアンハスキーが、勢いよく工房へ駆け込んできた。
「うわっ!」
警察官が驚いて身構える。
「リードがついてないぞ」
「ここの飼い犬か?」
ハッピーは二人には目もくれず、工房の奥へ走っていった。
床に敷かれたラグの前で止まる。
その上には、大きな収納棚が置かれていた。
ハッピーは棚の周囲を歩き回ると、前脚でラグを何度も引っかき始めた。
「何してるんだ、あの犬」
警察官の一人が近づく。
ハッピーはラグの端を口にくわえ、必死に引っ張った。
「おい、待て」
警察官が眉をひそめる。
ラグの一部をめくり床へ耳を近づけた。
「おい、どうした?」
相棒が声をかける。
警察官は黙るように手を上げた。
そして――
「この下に、誰かいるぞ!」
◇
消防隊員や警察官が、慌ただしく工房を出入りしている。
地下室に監禁されていた二人は救出され、二週間ぶりに地上へ運び出された。
一人は女性。
ひどく衰弱し、錯乱状態ではあったものの、意識は残っていた。
もう一人は、椅子に縛りつけられていた男性。
救急搬送されたが、その後、病院で死亡が確認された。




