表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

「ふう……」


明人は大きく息を吐いた。


「さすがにしゃべりすぎたかな。疲れてきたよ」


和宏と夏未を交互に見る。


「じゃあ、あとはお二人で仲良くどうぞ」


明人が階段へ向かうと、夏未がその背中に抱きついた。


「お願い、明人!」


明人の足が止まる。


「もう、こんなことやめて」


明人は夏未の手を振りほどき、振り返った。


その顔から笑みは消えていた。


「夏未」


「ここまでやったんだ」


「もう、引き返すことはできない」


一度、和宏へ視線を向ける。


「それと――」


「二人のエピローグは、俺が決めさせてもらう」


夏未は首を振り、再び明人の胸にすがった。


「お願い……」


「私たち、夫婦でしょ……」


「私だけでも、許して……」


明人は黙って夏未を見下ろした。


そして、そっと抱きしめ返す。


夏未がその胸に顔を埋めた。


明人は耳元へ口を近づけ、優しく囁いた。


「夫としての最後の忠告だから、よく聞いて」


夏未の身体が固まる。


「警察がここを見つけるまで、どれくらいかかるか分からない」


「二週間かもしれない。一か月かもしれない」


明人は地下室の隅を指さした。


「口にできるものは、限られた水とハッピーの餌だけだ」


「それをどうするのか、よく考えるんだ」


明人は夏未を離した。


「いや……」


夏未が服をつかもうとする。


明人は一歩下がった。


「いやあああっ!」


再び抱きつこうとした夏未を、力任せに押し返す。


夏未の身体が壁へぶつかりその場に倒れる。


その隙に、明人は階段へ向かった。


「待って!!」


夏未が追いすがる。


明人は振り返らず、木製の階段を上っていく。


地下室を出ると、重い扉へ手をかけた。


「お願い!閉めないで!」


明人は扉を閉めた。


最後に見えたのは、必死に階段を這い上がる夏未の顔だった。


重い音とともに、地下室は暗闇に閉ざされた。


明人の手は止まらなかった。


床にラグを敷き、その上へ重い収納棚を移動させる。


夏未の声は次第に遠くなり――


やがて、何も聞こえなくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ