第九話
「私が幼いころに見たモノとは少々名前が代わっているな」
「山ん中神官が勝手に書き換えたのじゃ、より武闘寄りにするためにな」
まったく無駄のない体躯のおおばば様はポスターに歩み寄りそれを軽く摩った。
「この武装都市ヤッチマイナの風物詩、魔法、剣技、弓矢が交錯する美しい戦いの数々。
そんな素晴らしい大会だがそこにまったく類を見ない”肉体派”が加わることになる、
さてどうなる事やら・・・」
「おばあ様、そんな他人行儀なっ」
奥方が怪訝な顔をするがおおばば様は不敵な笑みを浮かべ続ける。
「フィフィ(奥方)よ、私はなあの山ん中神官は確かに動機は不純かもしれん。それは誰の目にも明らかだ。
しかしだ、それによって今までは魔法一方で軟弱物が多かったエルフに喝を入れることになったのもしかり・・・」
「おおばば様・・・」
その場の空気が重く沈む。
近年では魔法技術の発達により確かにあまり”動く”事を好まなくなったエルフがいるのも事実。
もはや一種の王国問題になりつつあった。
「それともっ、あえて王国としての魔法文明を今一度誇りに戦うかね?!うん?」
おおばば様はプラプラの顔めがけて人差し指を突きつける。
その近さは目と鼻の先、あまりにも一瞬の事でプラプラは瞬きする暇もなかった。
しかしプラプラはなんら怖気づくこともなく、むしろその無駄すぎるデカい胸を張り答える。
「勿論だおおばば様!このプラン・プライト、王国の名に恥じぬようにあの破廉恥山ん中君を打倒して
憂愁の美を飾ろうではないか」
「いやいや、ちょっと待ってよっ。あんた解ってんの?プラプラの魔法なんかぶっ放したら武装都市が
瞬く間にボロボロになっちゃうでしょ」
高らかに宣言するプラプラをピコピコが制止する。
「そ、その点については大丈夫じゃないかな。ほら広場で見たあの魔法陣。あれって魔法レベルを一定まで
下げるリミット効果でしょ?」
それを聞いてピコピコはハッとする。
「あ、あれってただのリングじゃないの?」
「いえ、あれは魔法の効力を下げるカテゴリー13レベル2の結界魔法です。しかも神官が腕利きをそろえて
より効果をあげているはず・・・ですよねニッセル騎士師団長?」
フィフィはそういってニッセルに振ると気まずそうな顔をして軽く咳払いをした。
「不本意ながら・・・うちの師団にも山ん中神官支持派がいてな。気が付いたときには既に時遅く
より強力な結界が張られていた」
「さあどうする、王女様。相手はグリーンオークも顔負けも筋肉隆々肉体。
方やエキスパートとはいえか弱き体の魔法少女。勝算はさほど高いとは言えないよ」
おおばば様はそういって顔をニヤリとさせた、まるで王女の答えを知っているかのように。
「無論、きまっておろう!」
「おお~?」
「魔法陣を破壊しに行くぞっ!!」
「「「そっちかよ!!」」」(←二人+奥方)
ーーーそして大会当日。
「えっ早くね?」
「ま、まああんまりずるずる引きずるのもなんだしね。どこぞの少年漫画みたいだし。
そ、それにあんな特訓はもうこりごりだしぃ」
メソメソはその名に恥じぬべそをかき始めた。
「思い出したくもないってか我の言う通り魔法陣をとっとと破壊してたらいいものをー」
「カぁ!!」
プラプラが憤り露にするところをニッセルが後ろから喝を入れた。
「「「うわっ!!」」」
「お三方とも・・・わずかな間ですがよくぞ今まであの騎士師団謹製地獄特訓をやり遂げ私は師団長として
誇りに思います」
「でたよ、真正のサドが」「そこっ!サドとか言わん!」
「しっつれいしましたぁ!!!」
何があったかは三人の様相を見るに明らかではあるが、一同のいる”ヤッチマイナ杯・魔法騎士(武闘)決定戦”会場は
歓喜、喧騒、雑音に大勢の人がごった返してその名に恥じぬ一大イベントである事は明白だった。
勿論三人はそこへとエントリー済みで予選もすでに突破。
トーナメントに王女の名前が挙がった途端、裏博打のオッズは跳ね上がり大会への盛り上がりをより一層
大きくした。
「あれっ、ちょっと待って出場選手の端の方」
「ニッセルゥ・・・ってニッセルさんも出るんですか?!」
ニッセルは胸を張り、腰のレイピアを抜いて天高らかに掲げた。
「あたりまえです!私は師団長としてシード選手として出場しなければならない義務がありますので」
それを聞いた三人はげんなりした。
「嘘でしょ、そんなの絶対勝てるわけないし・・・あんなサド的なーーー」「そこっ!サドとか言わん!」
「うむ、ともかく大会が盛り上がるのは大いに結構!いざ参らん」
プラプラの呆れるほどの元気の良さにピコピコは大きくため息をつき、一同は競技場へと向かった。
しかしーーー。
「「これがほんとの”マジかよ”・・・だな」」
競技場に着いた一同は驚愕した。
「魔法を使うような人間が一人もいない」
一同が見渡す限りエルフお得意の弓や魔法を使う人間はほぼ見受けられない。
それに反して目立つのはいかにも武闘派ぞろいの鋼のような肉体をした男たち。
エルフ特有の美貌はどこへやら、まるでオークと融合したのかと言わんばかりの顔つきから
ゴリラクリスもうっとりの三角筋に会場の熱気はより一層のヒートアップ。
すると会場から決勝戦を知らせるファンファーレが鳴り響いた。
”お集りの皆さん!静粛に願います。
決勝ロイアルを始める前にヤッチ・マイナ代表・山ん中マッスルン神官よりご挨拶があります”
「出たか、そしてあいつが総本山」
”決勝大会に出場した皆ぁーまずはおめでとう、マッスルンだよぉ!!”
その時、望遠された投影魔法の映像に見覚えのある姿が見えた。
「ちょっと待ってっ。あれもしかして、ねえプラプラ、あの人、そうでしょっ?!」
ピコピコは何かに気が付いたのかプラプラを掴み映像を指差す。
「ピコピコ、今は静粛に、だ」
「ちょっ、なにが”静粛に”よっ。いいからあれ見てよ、あ、ニッセルさんもっ」
”この決勝大会は例年とは違い今回からはバトルロイヤル。ほかの選手とつるんで強気を挫くもよし、ひたすら逃げて
他者がつぶれるのを待つのもよし!最後の三人になるまでただひたすら戦い続けるのです!”
ニッセルはピコピコに肩を叩かれ、指差された映像の方を見て驚愕する。
「な、なんだとっ!いやまさかそんな予選には影も形も・・・そうか奴もっ」
”そして最後の三人になったとき、この神官の座を駆けてっ”
山ん中マッスルンは肩にかかったマントを前方の映像(カメラ目線)を遮るかのような振舞をとり。
「あ、あれエルフレート、し、親衛隊のっ」
ぶあさぁあああとマントを外し、その汗も滴る山ん中マッスルンの肉体が露になった。
”ーーー私、山ん中マッスルンと戦いましょう・・・さぁああああこい!!”
「「「「プルプルだぁ!!!」」」」
「プルゥと呼べ!プルゥ・プルンドルだ!」




