第三話
首都プライト城下町。
この城下町では様々な商店が立ち並び生鮮食品から骨とう品や武器、さらにはご禁制まで取り扱う
店がひしめき合っている。
もはや一種の行楽地と化していると言っても過言ではない。
その城下町の外れ、山を背にしてプラプラ達が日々鍛錬にいそしむ学び舎、キャンバスという塔のような魔法学校が
そびえ立っていた。
その塔から多数の魔術生に混じりよろよろ這い出てきた一人の小柄な少女。
「ググッ、ま、また買えんかったし・・・おまんら許さんぜよ・・・」
少女が恨めしそうに眺めていた先は塔よりほど近い購買部。
それはそれはとても学生が食べるとは思えないほどの豪華な軽食が沢山あった、先ほどまで。
「おっは!」
ぱぁああん!
「おほぅうう!!」
立ちすくんでいた少女は不意を突かれたように尻を軽快に叩かれる。
尻を軽快に叩いたのはプラプラだ。傍らには山のようにソラマメパンを抱えたピコピコが呆れかえっている。
辺りには小気味いい音が響き渡り、周りのエルフ達はくすくす笑い出した。
少女は痛みにこら涙目を浮かべながら顔を赤めらせる。
「お疲れだメソメソ!また買えなかったのか?!」
「ちょっ、おまっなにすんだって、げ、プラプラ!なんでまた王女がここに」
メソメソと呼ばれた小柄(陰キャ)だがプラプラに負けず劣らず出るとこは出ている少女は
プラプラを見るなり人一倍顔をしかめた。
「まったく、相変わらず王女をプラプラ呼ばわりするとは。しかーし今日はそんなことを言いに来たのでは無い!」
メソメソはそれを聞くなり回れ右をし、すぐさまその場を立ち去ろうとしてピコピコに頭を掴まれる。
「や、やめーい。なんだろうが絶対嫌!プラプラに関わるとロクなことない!」
「そうはいかないわよメソルト・メソトレキセート。あんたも一緒に来なさい、マジカよ」
ピコピコはメソメソの顔を覗き込んで顔をイヤミったらしくニヤつかせた。
「まじか?!絶対嫌!!そんなの王国騎士に任せておけばモウマンタイ!しかもプラプラと一緒とかアリエン氏!
暴力魔法バカバカ撃たれたらマジカ以前にこの星が滅ぶ!」
「え、メソメソ私の事そんな風に思っていたの・・・軽くショックなんだけど」
付き合いが長いわりに今更ながら事実を知ったプラプラはシュンとする。
「うっさいわね。ほらパン買ってあげたからとっととついてきなさいよ!!
こっちも女王の勅命だから断れないのよ。私だけ近所付き合いが長いからって世話役とかこっちがアリエン氏!」
「ちょっ、アリエン氏って誰?!」
一人すっかり蚊帳の外であるプラプラは二人に詰問するがまったく相手にされることもなく押し問答している。
その時だ。
「マジか~!マジか~!」
か弱きエルフ少女の黄色い悲鳴が校庭の方角から聞こえてきた。
「うっそでしょ?!いきなり首都に攻め込む?!」
「・・・勉強不足、マジカは異世界から不特定転送されてくる。どこにどのタイミングで出てくるなんて誰にも
わからんし」
「おい、アリエン氏ってだれなんだよ!?」
プラプラを他所に二人は買ったパンを貪りながら急ぎ悲鳴の方まで向かう。
「アリエン氏・・・なに者なんだ・・・」
プラプラは顎に手を当てながら一人意味も解らず現場へと走っていった。
「うわ・・・これはきついな」
「まじか・・・」
「何という・・・破廉恥極まりない!!許せん!」
三人が現場で目の当たりにしたのはぱっつんぱっつんの身体に張り裂けんばかりのピチピチのTシャツを着た
常に汗をかいている男であった。
Tシャツに書かれたアニメのエルフの顔はピチピチに着たおかげで歪み切り、悲壮な顔に変貌している。
「見ろっ!あいつの身体をっ!仲間が捕えられているぞっ」
プラプラは拳を握りしめ怒りをあらわにした。
「大丈夫、あれ魔導書によると”ふるぐらふぃっくTシャツ”っていう魔道具、害はない、筈・・・匂い以外は」
そういえば敵とはまだある程度の距離が保たれているにもかかわらず既に・・・汗臭い臭いが漂っていた。
「何、そのふるぐらふぃーってやつは」
「ただの絵のはず・・・あいつら、マジカの異世界”ニポンバシ”でベーシックに着られているって
”ぶるる”とかいう魔導書に書いてあった、何の知識の足しにもならんかったけど」
三人がそれぞれの反応で見つめる中、フルグラフィックシャツを着た男は一人光悦の笑みを浮かべてきた。
「・・・・・・・周りがみんなエルフばっかり、しかもかわいい!ロリ!、色々デカい!太腿の境界線ライザ・・・勝った!
俺は勝ったぞ!」
「何だこいつ・・・なぜ戦わずに勝利宣言する?!」
きゃっきゃっとはしゃぐマジカを前に三人は口をあんぐりと開けただ呆然としていた。
「あんた、なんかクラス2でもお見舞いしてやんなさいよ!」
ふと、肘でこつきながらピコピコはメソメソにけしかける。
「い、嫌だっ!なんか知らんけど・・・自尊心が・・・色々なものが汚れる気がするっ!」
メソメソはその名に恥じぬ泣きべそを掻きながら回れ右して帰ろうとしてそれを必死にプラプラが引き留めた。
「出だしで回れ右はないだろうっ!よし分かった、なら私がっ」
「解らんでよし、プラプラ。解ってると思うけどあんたは昔から魔力がオーバーハングしてんのよっ!
今は早く学校で魔力を下げる方法を身に着けなさいな」
そうやって三人が押し問答している間にマジカはいつの間にか俊敏な動きで間合いを詰めていた。
「しまっーーー!」
「ミッチモニモニ」
マジカはとても詠唱してるとは思えないほどの独り言のようにぶつぶつ呟いた。
「ううぉおお、おほっ、ほぁああああああ!」
「えっ、嘘でしょ?!」
「これは驚きですわ・・・」
素っ頓狂な声を上げるプラプラを見て二人は思わず口を手で押さえ羞恥した。
「わ、私のふ、服がドンドン縮んでは、肌に食い込むっ!マジかーー!」
「おほっ、チャンス!」
マジカは懐から光る金属の板を取り出してプラプラをあらゆるアングルから情け容赦なく撮影し始めた。
「あーあー知らないっとっ。あれ写真って奴とってるよ。ずっと消えずに未来永劫残るやつ、多分」
「カテゴリー1のクラス3・・・本来傷の止血の為に物を縮めたりする初期魔法だけど、こんな使い方する奴初めて見た」
「マジカって異世界から来てるから魔法の使い方が異質なんだよね。なんて言ったらいいのかな、そう・・・」
メソメソが顎に手を当て考え込むなかピコピコがポンと手を叩いて閃いた。
「わかった!変態だ!」
「そう変態!やっぱり変態だよね☆」
「おい二人とも納得してないで何とか・・・んおほっ!」
既にプラプラの服のあちこちは耐えきれず裂け、あらぬ部分が見えそで見えない。
マジカは更に鼻息を荒くし、発汗量を倍増しにした。
「ぐあっ!・・・すごい臭いだわ、鼻がもげそう。しょうがないわねっ・・・」
服が裂かれ、ビーナス状態になったプラプラはさておき、ピコピコは両手首に付けたリングを回転させ、呪文を詠唱する。
「・・・エレクトローン!」
刹那、マジカの周りに浮遊するけして肉眼では見えないであろう量子が電気を帯び始め、
帯電し、やがて稲妻という閃光になった。
ピシャーン!!!
「んぎゃぁあああああマジかぁぁあああああ!」
稲妻はマジカの持つスマホに直撃し、男は感電して自己紹介ともいえるお決まりの台詞を吐く。
「ふふんっ!どうよ」
ピコピコは腕を組んで得意げにどや顔をする。
「流石、雷魔法(カテゴリー4)はピコピコの右に出る者はいないね。学校一じゃね?」
「エルフレート王国一番よっ、これでも控えめで言ってんだからね・・・て、この気配は・・・」
プスプスと煙をあげるマジカを見ていた二人だが、あらぬ気配を背後から感じ思わず二人して後ろを振り返る。
「許さんぞマジカ・・・公然での裸体晒しの刑、身に染みたぞ。今度はこちらの番だ!」
プラプラはビーナス体系のまま既に詠唱を終えており、気づけばマジカの周りだけでなく、
ピコピコたち二人、ギャラリーの周りまで電気を帯びた量子が浮遊し始める。
それはもう肉眼で確認できる、量子とはとてもいいがたい大きさであった。
「ばかじゃねーの!?」
「あ、これヤバい奴---」
二人が言い終わる暇もなく。
「エ・レ・ク・ト・ローン!!」
ドォオオオオオオオオン!!
辺り一帯は強烈な閃光に包まれ、一同は全員チリチリになった・・・・・・・・・主に服と髪が。




