第二話
「あ、貴方様はっエルフレート王国王女ぷらぷっーーー!」
「こら馬鹿お前っ! ごほんっ!プラン・プライト王女様、かたじけのうございます、すべての村民に成り代わり
お礼申し上げます」
村長は傍らにいた村民が何か名前を口ずさもうとしてそれを慌てて抑え、代わりに弁明した。
(出たよあのいきり王女)
(ぷぷぷ、プラプラ~プラプラ~)
すると野次馬に徹していた数名のエルフが王女を見るなり口々に耳打ちし始めた。
「おいお前ら!」
「な、なんでもありませんっ!」
地獄耳の村長はすぐさま叱責し、村人たちはすぐに目を背けた。
「・・・うむぅ、マジカ襲来の報を受け急ぎ駆け付けたが時すでにおすし・・・こちらも詫びようぞっ、トウッ!
どわっと?!」
高台より村を見下ろしていたプランは颯爽と駆けカッコよく決めようとしたがすっころんでパンツがあらわになり、
村人は既に見慣れているのかすっかり呆れたような顔をした。
そして体勢を立て直してほこりを払うと、腰に手を当て”ふふん”とイキリ顔で目の前の男と対峙する。
男の足元には涎を垂らし上目を剥いて所謂”アへ顔”をするエルフが数名横たわっている。
「うぐぐ・・・なんという非行っ。噂には聞いていたがこれがマジカというものなのか」
「お、王女様ぁ?!なんてかわゆぃんだぁ、ぼぼ、ぼくが、ゆ、ゆう、ゆゆゆうしゃでうぇっす!」
悲痛顔を浮かべるプランを前に男は嬉々とした。
「馬鹿者っ!貴様が勇者な訳あるか!王国はお前が来るまではいたって平和そのものだ。お前が平和を乱しているのだ。
666年に一度訪れる厄災、異世界”ニポンバシ”からくる獣”マジカ”め!覚悟しろ」
そう宣言するとプランは早速方手首から肩にかけてつけている大きな腕輪を構えると呪文を詠唱し始めた。
「うっそでしょもう詠唱し始めたの!?馬鹿プラプラ!」
「皆のモノ、急ぎこの場を離れろ!まだ動けない奴がいたら肩を貸してやれ!」
村の人間はプランが詠唱始めた途端顔が青ざめ、皆一目散に逃げ始めた。
「ちょっ、マジか?!ぼ、僕の話をきいてよ、ねえぇ!ホント異世界から来た勇者だってっ!」
「やはり言ったな”マジカ”と。やはり異世界ニポンバシから来たのは間違いないようだっ
早く母に・・・女王陛下に知らせなければ」
プランは男の台詞に確信を得た。しかしながら男は全く別の意味で行ったのだがこのエルフ達には通じることは無い。
まあ当然と言えば当然なのだが・・・。
「スアン・フラァアアア!」
「馬鹿っプラプラのやつ!こんなとこでカテゴリー3、クラス1なんか詠唱したらっ!」
村長が言い放つ矢先、辺りは大小様々の凄まじい光の玉に包まれた。
そしてその光の玉は更に光り輝き。
大爆発を起こした。
「----ぬぉおおお!?」
「マジかぁあああああああああああああああああ!!」
プランの叫びと共に美しい村は一瞬に崩壊し、瓦礫の山と化す。
砂塵が収まるころ・・・開けた視界の先にはまるで実験に失敗したどこぞの博士のようにただでさえ無い髪をチリチリにさせた
黒ずんだ丸裸になった男と服がボロボロになってあられもない姿になった村長以下煤にまみれた村人たちだった。
「・・・これにて一件落着!はっ、こうしてはおれん。村長、また何かあったら直ぐ報をよこすがいい!」
「いやあの・・・次は私達で何とかするんで、もう来ないでください・・・」
村長は走り去るプランのズレたスカートから垣間見える張りのある尻を眺めながら呟き、がっくりと肩を落とした。
エルフレート王国・首都プライトネス
その中央に位置する魔法城。
「報告します。王女プラン様、ご帰還なさいました!」
「・・・はあ。プルゥよ、通しなさい」
エルフにしては珍しく逞しくスレンダーな騎士、プルゥは高らかに王女にそう告げるとプランを通すようにドアの両脇に控える
兵士に合図を送った。
腕に巻きつけられた緑リボンは騎士団長の証である。
”プラン様、ご帰還~”
謁見の間のドアが開け放たれ、勇ましく胸を張って登場したのはプラン。
「母上!やはりおっしゃった通りであった!マジか!マジかが出た!厄災がやって来たのだ!」
「解っておる・・・というかプラン、もう少し品のある声を出さんか。あと謁見の間で母はやめて」
女王は玉座の肘置きに持たれながら疲れたように溜息をついた。
「失礼した女王”ブラミール・プライト”女王陛下!マジカ討伐だぞプルプル騎士団長!」
「プルプルはやめてください王女様、私プルゥ・プルンドルという父親から授かった立派な名前がございます。
王女も”プラプラ”って呼ばれたくないでしょう?」
「プラプラとは酷いではないか」
どうもこの王女は空回りが過ぎるのか騎士団長ですら呆れた様子だ。
「で、母上!当然任せてくれるん、マジか討伐!?まじか~”ムネアツ”だな~」
プランは美しい姿とは裏腹にあまり品の無い行動を取るのが好きなのか腰を落とし力士のように四股を踏む。
パンツが丸見えである。
「・・・はあ、あんたまたやらかしたんでしょう?村の人から連絡魔法が入ってるわよ」
「あれえぇ?ピコピコぉ~いつの間にいたのぉ?」
プランが声の先を見ると女王のすぐ傍らに華奢な体躯をした可憐な少女が腕組して仁王立ちしていた。
背丈はプランと同じぐらいだが体格がまるで違くプランはあどけない顔に加え年不相応に出るとこは出すぎなぐらいである。
「あんたがここに入ったときにはここにいたでしょうが!まったく、あんたクラス7詠唱したんだって?!
竜馬狩りでもしてるつもりなの?相手は人間の形をしたただのバケモンでしょう」
「で、でもあいつもアシッドール使ったもん!だからヤバいなって思って」
「アシッドールは子供でも使える者もいます。それに不意を突かれなければ30秒もすれば元に戻れますよ」
騎士団長はプランの傍らでさりげなく呟く。
「そ、それにもうあのバケモノの足元には既に光悦の表情を浮かべた犠牲者が多数---」
「死んだわけじゃないでしょに、この勇み足プラプラがっ」
「うぐぐ」
ピコピコと呼ばれた少女は呆れたように反論をし、プランは押し黙ってしまった。
「プラン、貴方の友人ピコスルファート・ピコヴェンデッタを呼んだのは他でもありません。
貴方のマジカ討伐は彼女と共に行くのです」
「ええぇ~!!そんなぁヒーローになりたいいのにぃ」
女王陛下にピシャリとたしなめられプランは悪態をつきながらがっくり肩を落とした。
「町や村を破壊するヒーローがどこにいますかっ。それよりも許可が出ただけでもありがたいと思いなさいな。
いい、私がついていく以上勝手な事は許さないんだから。後魔法。どんな才能が有ってもあんなに超ド級の魔法連発されたらマジカ云々以前に国が持たないわよ、いいわね?上級魔法禁止!」
「うそでしょ?!ははうえぇええ~」
「駄目です」
ピコピコに首根っこを掴まれ、プランもといプラプラは謁見の間を引きずられながら後にした。
「女王陛下、それでは我々もマジカ討伐の為、編成準備を急ぎます」
「解りました、賞金もかけてはおりますが国で処理できれば財政的に助かります。頼みましたよプリプリ」
「いやあの、プルプル・・・あ、はい、もういいです」
騎士団長プルゥ・プルンドルは何かを悟ったようにすました顔で敬礼した。




