第29話
「と言う訳で今に至ると言う訳で・・・」
「回想が長かったね・・・」
凍える険しき山道をトボトボ歩く三人とーーー。
”出てこなければやられなかったのにっ”
「やられてなかったのかよ・・・」
三位一体プラピコメソンを引き連れていよいよ異世界へとつながっているであろう山頂まで差し掛かった時だった。
「なんか・・・寒くね?」
「ならなぜ脱ぐ」
プラプラは寒さを訴えながらも服を脱ぐという奇怪な行動を取り始めた。
「いや、プラプラだけじゃないわよ・・・私もなんか暖かいっていうかその・・・」
「あ、あそこ見てよほら!」
メソメソが指さす先、ちょうど8合目と書かれた看板から先は雪がまったくなく、それどころかまるで春先のように
暖かな新緑が生い茂っていた。
「流石はイキリン山、曰くありきという事か」
「という事はいよいよね、ここに禁忌物を放った元凶・マジカとーーー」
ピコピコに続き、プラプラは目の色を変えて先を見据えて呟く。
「ーーー神官クラスのエルフがいる」
「そうと解れば、ほら出番よっ。何だっけ、プラピコとかなんとか」
ピコピコはプラピコメソンに偵察の指示を出す素振りを見せる。
”やめてよね、僕が本気になったらーーー”
「いいからいけっつーの!」
ピコピコはプラピコメソンを蹴り飛ばして先の雪解けの領域へと追いやった。
”あ、遊びでやってんじゃないんだよぉー!”
「わ、私のプラピコメソンがぁ!」
プラプラは結構気に入っているのか足早にプラピコメソンを追う。
しかし、プラピコメソンが領域に入った途端いきなり震えだし、プラプラは思わず急制動をかける。
”た、対空砲火、か、かかかあか・・・なにやtって・・・・て・tんnーーー”
プラピコメソンは暫くは動き回っていたがまるでバッテリーが切れたかのようにその動きをゆっくりと止めた。
「え、えと、どうなってんの?」
メソメソがきょどりながらプラピコメソンを見つめる。
「動かなくなった?もしかしてさっきの戦闘のダメージが今になって」
「いや、多分そうじゃない」
ピコピコが疑問を抱く前にプラプラは何かに気付いたのか再び歩み始め領域に入る。
「ちょっ、危ないわよプラプラっいくらあんたでも」
そう呼び止めるのも間に合わず、プラプラは領域に入ってしまった。
二人が不安そうに見つめる中、プラプラは辺りを見渡して手のひらや手首のマジックリングを軽く摩るなどして
何か納得した様子だった。
「二人とも、こっちに来ても大丈夫だ。ここは暖かいぞ」
プラプラが手招きするのを見て二人は一瞬不安そうに顔を見合わすもしぶしぶ領域に入った。
「うわーめっちゃ気持ちいい、適温だわこりゃ」
「ピ、ピクニック日和っていうか、風の吹き方すら全然違う。めっちゃ緩やかっていうか
もしかしてここだけ結界張ってる?でも魔法的なものは何にも感じな・・・い?」
人一倍敏感なメソメソがすぐさま異変に気付く。
「どうしたのよメソメソ?この辺りは例の裏切り神官クラスが結界張ってるんじゃないの?」
そう言ってピコピコは辺りを索敵する魔法を詠唱するが。
「はれ?変ね、反応がまったくない。ていうかなんか、魔力が出ない・・・」
ピコピコはそこで初めて気が付いた。
「ちょっと待ってここ。もしかしてここって魔法が発動できない?!
山の頂上付近に強力な結界が張られてるんじゃないでしょうね」
ピコピコは焦って辺りに敵がいないか四方八方見渡すがそれらしいものは見当たらない。
「たぶん間違いだピコピコ。多分ここは”土地的”魔法が存在しないところなんだ。
むしろ、今までの吹雪いていたところが魔法で、つまりは結界であったと言える」
「何言ってのよ、それじゃまるでここがーーー」
”ここが異世界であるという事です”
三人が辺りを警戒する中、プラプラはすぐにその音源が頭上である事に気が付いた。
それは白いボディのドローン、空中をホバリングしてカメラは三人をとらえている。
”つまりここでは君たち三人はただの乳のデカいエルフという事だ、まあ一人は違うみたいですがね”
「何なのこの物体っ、ぶっ飛ばしてやろうかしら!」
プラプラは言わずもがな自分の事を指されたと思い、怒り心頭で石を投げつけるが
ノーコンにもほどがあるほど的外れだ。
”まあ落ち着いください。ついて来て、どうぞ”
そう言ってドローンは軌道を変えてプラプラ達の前の道をゆっくり滑空しだした。
「なんかあの物体変わったしゃべり方する」
「それよりプ、プラプラどうすんの?!絶対罠だよっ、一回帰って騎士団連れて戻ってこようよっ。
魔法便りで武器なんてほとんど持ってきてないよっ」
メソメソはそう言って背負っていたリュックの中を見せる。
たしかにそこには薄い本が数冊と水筒、非常食ぐらいしかなかった。
そこにプラプラがおもむろにプラピコメソンを拾い上げて突っ込む。
「ええっ!!こんなの何にも役に立たないじゃない!」
「メソメソっ覚悟完了だ!罠かもしれん、しかし火中の栗を拾うには今しかない!」
「あんた絶対今、自分でかっこいい事言ったって思ったでしょ」
ピコピコは突っ込むもプラプラはいつもの調子でドローンを足早に追い始め、二人も仕方なく後を追うのであった。
「見事なものだ」「何なのここ・・・」「うーんでもまとまりがないというか何というか」
ドローンを追ってたどり着いた先は何とも奇天烈な場所だ。
ネオンサイン輝く外壁に目をやったかと思えば真向いは眩いルネサンス、ともすれば地面はアスファルトが
張り巡らされるわ、様々な異形の建物が立ち並んでいる。
「本当にここが山頂なの?なんか驚くのを通り越して呆れてるんだけど」
「凄まじいな・・・たしかにイキリン山の伝承通りではあるが」
「あ、あそこ!あそこに誰かいる」
メソメソが指さす先を見るとちょうど中央ドローンが着陸した先にテラスのように開けた
部屋の一角(?)のような場所に三人の姿が見えた。
急ぎ三人が駆け寄るとそこには人間社会、つまりはマジカでありふれたような三人の男達(オッサン?)
が畳の上で各々くつろいでいた。
壁には掛け軸が掛けられており、”空手部”と書かれていた。
それを目の当たりにしたメソメソが目を丸くしながらゆっくりとつぶやく。
「まずいですよこれは・・・」




