第27話
ビョオオオオオオオオオオオ!!
「全員、対防寒姿勢ぃいいい!」
「そんなのないでしょうにぃいいいい、きゃあああぁぁぁ寒い!!!」
山道は険しいの一言だった。
しかも険しいのに加え、急な天候不良、そして・・・吹雪。
「だ、大体イキリン山は年中吹雪いてるってわかりきっているじゃん!
なんで防寒着いれてこなかったんだよぉ!」
「何を言うメソメソ!防寒着を着るとラッキースケベが出来んだろうがっ。耐えろ!耐えるんだぁ!」
「ぜったい言葉の意味間違えてるし‥」
三人は寒さに震え、身を寄せ合いながらもおおばば様から聞いた例のスマホの元凶を討つべく山頂を目指す。
ーーーー数刻前。
「空から・・・降って来た?!」
「その通りですじゃ。イキリン山の頂上から突然、無数の空飛ぶ人形のようなものが現れて
例のスマホとやらを人々に渡しまわっていったんですじゃ・・・」
「魔力は相当なものね・・・無数の人形を動かす、しかも宙に飛ばすなんて芸当は多分プラプラとタメ張れるわよ」
ピコピコが神妙な面持ちをする。
「それが・・・魔力などは一切感じられなかったのです。ワシが歳を取り過ぎただけかもしれんが」
「ま、魔力が感じられないってことはやっぱりマジカと同じ異世界から来たんじゃないの?
ほら科学とかいう魔法とか対を成すものだったはず」
「だとしたら余計にマズいことになる・・・複製魔法で禁忌物を複製する神官クラス、プラプラ並みの魔力のエルフ。
そして科学なる力を用い恐るべき力の禁忌物を製作するマジカ・・・これはかなり事だ」
プラプラは伝令魔法を使い王国へ連絡を取るとプルプルと情報共有する。
「は、早くいかないとあちこちに拡散し始めるよ。い、一応街道を一直線にいけば王国まですぐ行けるんだし」
「イキリン山はかつてマジカの降り立つ厄災の地として伝承されてます・・・最近は荒れ模様で危険ですよ・・・」
おおばば様は溜息をつき、うなだれている。
「おおばば様、任せてよ私達がきっとーーー」
その時、ブウウウゥゥゥゥゥンとけたたましい音が聞こえてくる。
「ああっ、あ、あれじゃ!あの人形じゃ!」
音に気付いて三人が上空を見上げると、三体の人形がスマホを持って悠々自適に滑空している。
すると三体のうちの一体がこちらの視線に気が付いたのか相方に合図を送るとこちらに向かって急降下してきた。
ヒュルルルルルル・・・ドーン!
「・・・うむぅうう!何者だぁ!」
舞い上がる砂煙の中、プラプラが叫ぶ。
やがて砂煙が落ち着き、三人のシルエットが露になった。
「・・・すっご。あの格好はプルプルやニップルにも勝てるわね」
「あ、あれ知ってる、マジカの世界で”美プラ”(美少女プラモデル)っていうやつだぁ!」
現れた三体の人形・・・のような美プラ。
不自然までに膨れ上がった逆三角形、そしてそれに反して顔はロリ顔、肩や腰、背中にはメカニカルなパーツを付けているが
基本的には半裸である。
三体はスマホを持ったまま、プラプラ達を凝視し、沈黙し。
”・・・・・・・・”
そして。
”パンパかぱぁーーん!!!”
”おめっとーございまぁあああああああす!”
”道行く貴方達エルフに、【実質0円!】のスマートデバイスが当たりましたぁああああ!”
「うぬぅ、おおばば様の言う通りやはりこ奴らがスマホを配っていったのは間違いなさそうだな」
「実質0円ってなによそれ、金取ろうって言うの?」
「・・・パンパかぱぁーんってポルナレフかっつーの」
三者三様の感想を述べる中、人形の一人がメソメソに目を付けるないやなずいっと歩み寄って来た。
”そこのいかにも陰キャでお金のなさそうなあなた!”
ひときわ乳のデカい美プラがスマホを勢いよくメソメソに投げつけ、条件反射でキャッチしてしまう。
「うわっ!なにすんだっ」
”今ならキャンペーン期間中!24回月額2980円の所なんと980円より!(月賦払いを除く)
契約するなら今がチャーンス!!”
「な、何言ってんだ!禁忌物を契約するわけないだろう・・・が・・・」
メソメソはそう言いながらもスマホに映る、エルフの世界ではお目にかかれないであろう異世界の”ゆるキャラ”に
既に心を奪われそうになっていた。
更にスレンダーな美プラが畳みかける。
”さらにさらに!お客様の持っているスマホはこの間発売されたばかりの予約必須!チョーハイエンドの
プニフォン29!(定価114,514円)を毎月1円の月額払いで使えちゃう!
(25回目から通常料金に切り替わります)”
メソメソは自分の持っているスマホを見て驚く。
「こ、これそんなに高いの?!さすが禁忌物」
とどめに三体目の一際美人の美プラがメソメソに天使のように降り立つ。
”二度と訪れることのない機会、それをチャンスといいます!さあ、レッツサブスクリプション!!”
「まじか・・・月々の支払シミュレーションだけでもやってーーー」
「クラス4!!!」
ドグァシ!!
「ぎにゃあぁああ!ちょっ、なにすんだプラプラぁ!」
うつろな表情を浮かべ、思わず利用規約を端折り契約に映ろうとするメソメソに一撃を入れたのはプラプラ。
「正気に戻れメソメソッ!お前のMPが大変なことになってるぞっ!」
一体何のことかと思いメソメソは自身のMPを目の前へと数値化して現した。
既に三桁を越えていたMPは瞬く間に減っていっており、今もなおその勢いは止まらなかった。
「うぁあああああああ?!なんだこりゃぁああ!」
「メソメソっ!そのスマホ、スマホを捨てて!」
ピコピコが急ぎメソメソの持っているスマホを蹴り飛ばす。
よっぽど当たり所が良かったのかガシャーン!っと素晴らしい程のガラスの割れる音を響き渡らせ飛散した。
”なんてことをーーー”
”はーいっ、弁済金五万・違約金5万・月賦滞納金月割計算30%マシでございまぁああす!”
”でも安心くださいっ!そんな急な貰い事故にも安心プランーーー”
三体の人形の顔がくるりと回り、無機質な機械顔へと変貌する。
「来るぞっ!!」
”火の車プランもございます!!”




