第23話
翌日、エルフの洋館特設キッチンコロシアム会場。
中央の陪審員席、そして向かい合う様にキッチンカウンターをはさんで両者が対決する
正に決戦場といった場所。
人っ子一人いないと思われた山奥の洋館はいったいどこから湧いて出たのか
と言わんばかりのギャラリーで埋め尽くされていた。
「今日はお客さんが沢山だなっ!よしっパパンが腕によりをかけてうまいもん食わせてやろうっ」
パパンはご自慢の岩のように固いブロック顎をゆっくり摩りながら高笑いする。
「ど、どうするんです・・・ロクな準備もせずに対決の日になってしまいましたよっ」
小声でつぶやきながらペロペロは陪審員の席を見て狼狽していた。
「有無ぅ、心配なかろう!こっちはエルフレート学園一の知識家、メソメソが出張っているんだ!」
「い、いつのまにエルフレート一になってんだよ・・・」
「両者とも言い面構えです、今日の、特に、その、パパァン・・・ああやだ、もう待ちきれないっ」
高笑いするプラプラ、何を思っているのか想像もしたくないうじうじしているモコモコ。
そんな取り付く島もない様子にキッチンカウンターをはさんで
メソメソはピコピコと助手のペロペロと共に冷や汗をかいていた。
「まあそんなことより、あれは無いでしょうよ」
ピコピコは向かい合うパパンの横の助手・・・そうサワサワを指差す。
「いつかはこの日が来ると思っていたわ。我が生涯のライバル・・・ペロペロ、勝負よ!」
「なんという事・・・まさかサワサワがパパンの手に落ちていたなんてっ」
「チッ・・・ま、まったくどいつもこいつも・・・」
メソメソは呆れた様子で悪態をついた。
メイドの一人が懐中時計を確認し、モコモコに耳打ちする。
モコモコは立ち上がり襟を整えるとざわつく観客に向かって一喝。
「諸君、静粛に!これより・・・我がエルフレート代表料理人と異世界から来た伝説の料理人、パパンの
料理対決を始める。この勝負に勝利したものは双方の宝を献上するものとする。我々はこの王国直属料理研究所および料理番の地位を!そしてパパンからはーーー」
「なにそれ、初耳」「この対決が決まるとき、お互いがフェアである為に大事なものをかけ合おうという事になったのです」
「え、エロゲ的な展開じゃないのか・・・」
メソメソ達三人はひそひそと小声で話す。
「あーそうだったそうだった。えーとじゃあ、こんなものでいいんだっけな、ほれ」
そう言ってパパンは机の上に手のひらサイズの黒い金属板のようなものを置いた。
「ま、ここじゃ電波も無いしため込んだ音楽聞いたりエロ画像みたりエロ動画みたりエロ漫画見るしかないしな」
パパンは特段惜しむ様子は全くない。
「なんだあれ、黒い・・・ガラス盤?」
「あ、あれがマジカたちの宝って・・・流石変態を具現化しただけあるなぁ」
その時、黒い板が煌々とひかり、何かを映し出す。
それはパパンがいつも壁紙にしているグラビアアイドルのお昼を知らせるアラームだった。
「うわっなにあれ、魔法石?!」「でもないようですが・・・魔法の類の一種でしょうか?」
「あれから魔力を一切感じられない、どういう事だ?」
ピコピコ達やギャラリーが何やら怪訝に見る中、鋭い怒号がメソメソを襲う。
「メソメソ!!」「うぁあああ!!なになに何なの?!」
声の発生元をたどるとそこには普段の顔つきとはまるで別人のプラプラが腕を組んで神妙な面持ちで
ガラス盤を見つめていた。
「プラプ・・・王女、いったいどうしたの?いつもなら”なんだこの珍品はぁ~”ってーーー」
「メソメソ、必ず勝て。敗北は認めん」
その気迫に会場の全てが息を飲み、ついでにパパンもよくわからないがとりあえず合わせて緊張した面持ちでいた。
「ど、どうしたの・・・プラプラ」
メソメソがおびえながら尋ねる中、プラプラは腕を組みながら静かにつぶやく。
「なんてことだ・・・お母様に報告せねば」
プラプラのいつにない態度にピコピコは急ぎ歩み寄り臆することなく詰め寄る。
「いきなり何なの王女様?!いったいあのパパンの出したものがどんだけヤバいお宝なのよ、説明したら?」
ピコピコの詰問にも何らか顔色を変えることなく暫く俯き、そしてゆっくりと口を開いた。
「あれは・・・この”世界”に絶対にあってはならないもの。いつかは持ち込むものがやってくるとは
聞いていたが、まさか私が対峙することになろうとは・・・」
「だから~何だって言うのよ!!はっきり言いなさいよ!」
歯に衣着せぬ物言いにピコピコもしびれを切らす。
するとプラプラはピコピコを真っすぐに視線に捕えゆっくり口を開きその禁じられた言葉を口にした。
「・・・カテゴリー66、クラス黒」




