第21話
「本当にごめんなさい。まさか王女が来賓されるとは思ってもみなくて・・・」
「何を言う、こちらこそ突然の来訪を受け入れていただき、個々より感謝する」
館の主とプラプラが談笑をする中、メソメソは終始ご機嫌斜めだった。
「ふ、ふざけないでよっ、”美食の館”って。あーもー、一生ネタにされるるるぅう!」
「もういいでしょ、あんたの言うホラーな館じゃないだけマシでしょうに」
メソメソの絶叫が木霊したダイニングルームは先ほどの不気味さなど微塵も垣間見れず、
目の前のテーブルは隙間なくトマト料理で埋め尽くされている。
「本当に失礼いたしました・・・まさかトマト料理のメインディッシュの一つ”トマトボウルの爆弾つつみ焼”が
本当に爆発するなどとは」
「ご、ご主人様っあれは食べ方に順番がありましてっーー」
「もうよいペロペロ、そもそも料理に”危険はつきもの”という貴様のその考えが--」
とてつもないロングヘアーのエルフが必死に言い訳する中、いる場所が違うのではないかと言わんばかりの
小麦色の肌がまぶしいスポーツマンなエルフがため息交じりに叱責する。
「サワサワ、あ、貴方こそ”オムレツケチャップ乱舞”などという凄まじいケチャップの集中砲火で
床がケチャップまみれにっ」
「ああ、もうよい、客人の目の前だぞ。申し訳ございません王女、ご覧の通り会食時のアクシデントにより
全員風呂に入っている所にまさか王女が尋ねてきたとは露知らず、このような失態を露見することとなろうとは」
「良いではないかっ、主”モコモコ”よっ!私もその魔力を使った料理を存分に楽しみたくなったっ。
是非その自慢の腕をーーー」
「ちょっと待ってよプラプラ。モコモコ様、美食を求めるのは良いとしてこんな夜中にまで料理をするには何か
理由がおありだったのでは?」
いつもの調子でしゃしゃり出ようとするプラプラをピコピコが横やりを入れる。
するとモコモコは顔をしかめてバツの悪そうに俯く。
「流石エルフレートの特待生、察しがいいですね。その通りです、我々は寝る間も惜しんで料理を研究せねばならぬ
事情があるのです」
「あ、あーやめよ。めっちゃ嫌な予感がする。ほら、いや、この話の流れはもういい加減読もうよ、ね?ほらーー」
「薄情だぞメソメソっ!してその事情とは・・・?」
メソメソが瞬間的に気付いたがもちろんプラプラはそれを”お察し”することも無く余計な話に首を突っ込んだ。
「ーーー実は、数日前に突然現れた”マジカ”に料理勝負を挑まれたのです」
「あーほらもうー言わんこっちゃない!!」
数日前の事、それはそれは顎の角ばったゴリラのような巨体のマジカだった。
突如”ゲンツキ”と呼ばれる乗り物にやって来たそのマジカは突然厨房に入ってきては
大した食材が無いにもかかわらず見事なまでの料理を披露して見せた。
「なんというっ!素晴らしき料理っ!」
「こんなのインチキよっ、どうせマジックアイテムかなんか使ってっーー」
「それは無いぜペロペロ。見てみろよこの料理、魔力はおろか残り香すら感じない。漂ってくるのは香ばしい
バターの香りだけだ・・・」
館の三人、メイド達は皆感嘆の声を漏らした。
「さあたくさん食べて、大きく(主に〇と〇が)なれよ!パパンが何でも作ってやるっ!」
自らをパパンといったマジカはそう言ってご自慢の角ばった顎を得意げに摩る。
「(;゜д゜)ゴクリ…もう我慢できない」
「駄目ですよっモコモコ様っ!マジカの作った料理などっ」
サワサワの制止も耳には入らず、おもむろにスプーンを取っては目の前のそれを人救いして口に運んだ。
パクッ、ゴックン・・・。
「・・・・・・・これは」
「モコモコ様っ?!」
「・・・・・・・・・・・・これは」
「だ、誰か救急箱をーー」
「うまいぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
バリバリバリバリバリバリ!!!!
モコモコの背後に稲妻が走り、服がビリビリに破けて、あろうことか下着姿一枚になる。
体中のありとあらゆる細胞が喜び、踊り、エナジーが走る。
目の瞳孔はハート一色に染まる。
「ふおおおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ドカァアアアアン!
モコモコは全身にオーラをみなぎらせ館の壁を貫き、そのまま浜辺まで走っていくと。
「うっ嘘でしょ?!」
沖を通り越し、何と海の彼方まで電光石火の如く走って消えていった。
「うまい、うまい、うまいぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「どうだ、パパンの料理は?これからも毎日うまいもん沢山食わせてやるぞっ」
最後らへんがちょっと意味深な言い方で顔が少しニヤついている。
「な、何よあんたの料理なんかっ!私達の方がもっとおいしい物を作れるわよっ!」
「そ、そうさ、突然現れたマジカなんかにお株を取られてたまるかってのっ。なあ皆の者ーーー?!」
サワサワが賛同を求め振り返ったとき、そこには料理を食べるために争っているメイドたちの姿しかなかった。
「マジか・・・」
「という事情があってな・・・」
「あ、あってな、じゃねーよ。そのパパァンとかいうやつなんか魔法でぶっ飛ばしてしまえばいいのでは?」
メソメソがぶっきらぼうに言った時、突如周りのメイドたちがメソメソを取り囲んだ。
「「「い・け・ま・せ・ん!」」」
「は、はいー?!」
メソメソはメイドたちの剣幕にビビりまくった。
「あのお方は舌にかいか・・・もとい、感動を与えてくれるパパァン様!」
「王女のお付きともあろう方が、卑怯ですよっ!」
「そうです、もしもやるなら正々堂々と勝負してくださいませ!」
(・・・舌に感動?)
ピコピコの眉がひそかに動く。
「まあ、そんなわけで。私を始め、個々の者たちはみなパパァンの料理に魅了されてしまっている。
サワサワもペロペロも彼を超える料理を作ろうとするが到底太刀打ちできるようなものではない。
このままでは・・・」
モコモコは顔を赤めらせ俯く。
「勝負に負けて身も心も(主に身)をパパァンに捧げなくてはならない!」
「な、なんちゅー勝負挑んでんだか。プラプラ、皆さん大変そうだけど今回ばかりはどうにもーーー」
「やりましょう」
ピコピコはもはや返す言葉もなかった。
いや、こんな性格だからこそあえて王女をやってられるのかと逆に感心してしまうほどだ。
「エルフレート随一の知識の宝物庫!このメソメソなら膨大な知識を生かし、パパァンを越える料理を作れるはずっ」
「なんとっ!」
一同の視線がメソメソに集中する。
「う、うんそうだね。私の知識なら料理の一つや二つ~って馬鹿じゃねーのおめーら」




