第19話
事後処理もろくにせず、エルフの海を後にしたプラプラ一同。
だが一同は当初の目的の都市ではなく畦道のような場所でげんなりしていた。
またもやプラプラはやらかしていたのである。
「おかしい・・・この誘導魔法、グルグマ・ププでは目的地の最短距離でルートナビしてるのに
ナビゲートは人がやっと通れるほどの畦道ばかりを示している」
「ぐ、グルグマ・ププは馬車向きじゃないよ・・・馬車で誘導魔法かけるならヤフマ・ププでしょ」
「あらま」
「ったく何やってんだか。どうすんのよ、もう日も暮れ始めているしこのまま引き返しても無駄にMP消費するだけだわ」
ピコピコ達がヤル気ゼロを見かねてプラプラが柄にもなく王女風を吹かせて私に任せろと言わんばかりに唸り始めた。
「えーもー野宿なの~おうじょさまぁ~私シャワー浴びたいんだけどぉ」
「おなか減ったなぁ・・・もう食べ物も無いし、水も少しだけ」
メソメソは半泣きになりながら我先にと水筒の水を飲み干す。
「ちょっメソメソ、あんたずるいわよ!」
「だって・・・のどか湧いていたんだもん、無実だもん!」
二人が残り少ない水筒の水を争いだし、プラプラのイライラは爆発した。
「だーもー五月蠅いぞ皆のものぉオオオオオオオ?!」
プラプラは絶叫しつつも語尾が疑問形へと変貌する。
「ちょっと王女、また何時もの”ほぅうう!”なの所かまわずアヘるの止めてくんない?!」
「だーもー違う!あれを見ろ、あれだ!」
プラプラは馬車の上から大きく明後日の方を指差した。
「??え、なに、なんなの?」
「・・・え、ちょっと、嘘でしょあれはヤバいパターンだって!」
二人はプラプラの指差す方を見て驚愕の表情を浮かべた。
その指の先には”いかにも”な洋館が新緑の中ひっそりとたたずんでいたのである。
ガクンッ!!
「ああーこりゃもうダメだわ・・・」
そうこうしているうちにダンゴムシのパチロクが引いている馬車の車輪が悪路を走り続けたせいもあり壊れてしまった。
「ど、どうすんの?」
「うむ、行くしかなかろぅ!」
「行くって言ったってねえあんた、あんなの”いかにも”でしょうがーーーー」
ガサガサガサガサ!!その時、突然背後の茂みを掻き分けるような騒音が聞こえてきた。
「えっ何々!?」
「ちょっとプラプラ!あんたMP未曾有でしょ?何とかしなさいよ!」
「何とかしたいところだがあいにく私のMPは腹の減り様と常にリンクしている・・・すまぬ」
そういうとプラプラの腹の虫が早大になった。
「嘘、まじか・・・」
その合図を待てましたと言わんばかりに茂みから巨大な獣が飛び出した。
暗がりのシルエットが月明かりによって照らし出される。
それを目撃したメソメソは涙をボロボロ流しながら指差す。
「け、け、け・・・」
「毛玉!」プラプラがふざけた回答を出すがそんな事はいざ知らずメソメソは絶叫した。
「ケンタウルスだぁぁぁぁあああああああ!!!!」
三人の目がその現れた予想をはるかに超える巨体、そしてその後方・・・。
「ちょっとうそでしょ?!しかもかなりデカい!」
巨体もさることながら四足歩行の獣脚のその後ろ側は大葉で隠さなければならい程赤裸々なものがあった。
「お、おほおぉおおおおお!?」
「おほうじゃないわよ!逃げるわよ!こいつら魔法耐性半端ないんだから、メソメソ走って!!」
「ひひぃいいいいいい!」
三人はあらゆる意味で絶叫しながら一気に林を抜け、洋館まで走った。
途中、ピコピコがなけなしのMPで風圧魔法を放つがまるで効果がなく、それどころかご自慢の胸筋を
見せつけるように迫って来た。
「うわぁぁああああ!マジかぁ?!」
「どーすんの?!どーすんの私?!」
命と背に書かれたカードをいくつも眺めながら全力疾走で洋館へと向かう。
「見えた!」
「正面の扉、ちょこっとだけ空いてる?!」
「皆の者ダッシュでとびこめぇ!」
胸に実った大きなビーチボールみたいなものをバルンバルンと震わせながら三人は観音開きの扉を開け放つと
すぐさま閉めて鍵をかけた。
「はあ、はあ、はあ・・・た、助かった」
「・・・ふ、ふははは、や、やったぞ!我は勝った!勝利は我が手にあり~」
そう言うとあろうことかプラプラは閉めて鍵をかけていた扉を何とゆっくりと開けて隙間から外を覗こうとする。
「馬鹿ッ!何やってんの?!」
その時っ!
バンッ!「ウェーーーーーい”!!!!」
「ぎにゃぁああああああ!」
扉の隙間からケンタウルスが顔を飛び出させ、奇声をあげる。
「は、早く閉めてぇ!」
三人は扉のノブにしがみついて馬鹿力で入ろうとするケンタウルスを何とか押し戻した。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・ば、ばかじゃねーの」
三人はそのまま洋館の眩しいばかりの真紅の絨毯が敷かれたロビーに
暫く倒れこみ息を整えたあとようやく辺りを把握することが出来た。
「あ、明かりがついてる?誰かいるのかしら?」
広いロビーは会談に続く踊り場を抜けて二階にまで及び、両側には部屋へと続く扉がいくつも見受けられた。
「あ、これ、”かゆ・・・うま”な奴や」




