第18話
天高く張りあがった声にギャラリーたちのザワツキが一斉に収まる。
兄弟たちがその声の方向をたどると満月をバックに降り立つ姿があった。
シュタッ!
「姫様、お助けに参りました!」
シュバシュバシュバ!
魔力をまとったソードが明日太郎とプラプラを繋げるケーブルを次々とぶった切っていく。
「兄さんっ!」「落ち着けオルガンっ、想定の範囲内だ!」
「プルプルッ!ナイスだ!ナイスだぞプルプル!」
突如現れた救世主はエルフレート王国・親衛隊隊長プルゥ・プルンドル”プルプル”ヤッチマイナでは
辛酸を舐めたがこの話だけはと勢いよく惨状。
「”惨状”では無いっ!参上だ!前回のような無様な真似は見せんぞっ、姫様、これをっ」
ヒュッ!ぱしぃ!
投げつけられたドリンク瓶を勢いよく受け取るプラプラ。
ラベルを見ると、そこにはエルフレート王国謹製のマークが。
「こ、これは王国謹製MP限界突破マホ・ビン!ビン!ありがたき幸せぇ!」
若干キャラがズレつつあるがプラプラは腰に手を当て、まるで風呂上りに一杯やるように
一気にグイッと飲み干した、と同時であるっ。
カッ!
プラプラの目と口から閃光があふれ出る。
「ぬほぉおおおおおおおお!ぎっぎだぁあああああああ!!!」
ただでさえ尋常ならぬプラプラの魔力は一気に限界突破し、髪は逆立ち、黄色の訝し気なオーラを放ち、
シュワシュワシュワシュワとなんだかすごい音を醸し出しているそれはどこぞのスーパー野菜人を思わせるほどだった。
「おまんら・・・絶対にゆるさんぜよっ」
プラプラが眼を鋭くさせ兄弟のみならず撮影会や鑑賞会で夢中だったギャラリーたちにまで標的に捕えだした。
”ひひぃいいい!”
群衆がおびえた声を上げる中、ジャギアは臆することなく声を張り上げた。
「止まるんだ王女!後ろのこれが見えないのか?!」
「?!」
プラプラは兄弟の後方に注目するとそこには既に魔力が最大まで溜まりつつある明日太郎の姿があった。
「何という事だっ、姫様!今すぐレースを止めに行きますっ」
プルプルが急ぎ魔法をかけようとしたとき、メソメソから伝送魔法が入る。
”止めるのは待ってっ!ピコピコがっ、最後まで勝負したいってっ”
「何っ!?」プルプルは急制動をかける。
”お願い・・・こんなに熱くなったのは久しぶりなの。たぶんそれはアイツも同じ、お願い決着までつけさせて
アタシはーーー”
”不本意ながら、そのピコピコの言う通りだっ・・・アタイをこんなに熱くさせたのはこいつが初めて
もう、学園とかどうでもいいっ!アタイはーーー”
””純粋に勝負がしたい!””
「お前たち・・・」プラプラが感動を覚える中、兄弟はせせら笑う。
「ふっ、もはやレースなどどうでもいいっ!あの二人のおかげで先ほど明日太郎の魔力充電は90%に達した!」
「今日は満月・・・後は月の魔力を受ければエルフレートはプラゾニック砲で壊滅できる!」
そう言うとオルガンは明日太郎のトリガーのカバーを親指で上げた。
カコンっ!フィーーーーーん!
「くそっ、月は・・・月は出ているか?!」
「姫様っそのセリフはイササカ遅すぎるかとっ」
満月から迫り来る一筋の光、それは一直線に明日太郎の額のマークへと直撃した。
ぐぉおおおおおおおお!
光を受けた途端、明日太郎のボディは煌びやかに輝きだした。
「満充電百パーセント!最終照準補正!」
オルガンが遥か彼方に位置するエルフレートの城へと照準を当てた。
「くそっ、そうはさせるかぁ!」「姫さまっ!?」
プラプラは電光石火の如く詠唱を唱え、明日太郎の方へと飛んでいった。
そして道中でぶった切られたケーブルを両手、さらには恐ろしい事に両足で拾い上げ
明日太郎の元へと降り立った。
「なっ、貴様何をする気だっ!」
そこに、最終コーナーを抜けた二台の馬車が姿を現す。
すでに会場のボルテージは最高潮、所謂てんやわんやである。
「うぁあああああ!!」
プラプラは華奢な腕とは思えないほどに馬鹿力で明日太郎の装甲版にケーブルを突き刺し、叫ぶ!
「ダブルバ〇ターコレダァァァアアアアアアア!ぬうううぅううあああああああああ!!!」
「姫様っ!!それは色々ヤバいですって!」
プルプルの制止も聞く耳持たず、あふれ出る己の魔力をコーチに捧げんべく明日太郎へと急速に注ぎ始めた。
「王女めトチ狂ったか?!魔力ゲージ110・・・120・・・130・・・ふはははっこれでは王国は跡形もーーー」
140・・・150・・・180・・・200・・・
「待て!こ、これ以上だと臨界点を突破するっやめろ!やめるんだ!」
その時、後ろから凄まじいスキール音と共に馬車がやってくる。
「このレース!!」「もらったぁ!!」
二台がゴールラインを踏んだ直後、その馬車からあふれ出る魔力も相まって明日太郎は臨界点を越えた。
「「ぬほぉおおおおおおおお!」」
ズガァアアアアアアアン!
チュンチュンチュンチュン・・・
空を舞う、ブーメランパンツ。
いつの間にか、時間は深夜を越えて辺りを朝焼けに染めていた。
その場で 暴発した明日太郎はエネルギーを主に上空へ解放したためエルフレートへのプラゾニック砲は避けられた。
しかしながら辺りは大惨事。
ギャラリーは皆服がボロボロになり全裸同然で気を失っている、しかも黒焦げときたもんだからさしずめ辺りは
肌を焼いているようなヌーディストビーチであった。
プラプラは全ての元凶であるにもかかわらず一人全裸で大の字で寝転がりドヤ顔で満足そうであった。
プルプルはまたしても屈辱を受けたのがショックなのか一人朝日に向かって行き場のない怒りをぶつけた。
計画が失敗し、ご自慢のブーメランパンツまで失ったフロン兄弟は”フッ、また会おう”という
まったく懲りてない様子で股間に大きな針葉樹の葉を当てながらファッションショーのように
歩みながらその場を後にした。
そして・・・。
「あんた・・・いやピコピコ。今日から”友達”と呼ばせてくれや・・・」
「”ダチ”ですって”好敵手”じゃなくっていいのかしら?」
「!! モチだ!今日からダチでライバル!これが私の望んでいたものだ!」
勝負の行方は二人にしかわからない。
しかし朝日を背にガッチリと握手を交わしてそのまま抱擁するその姿を見れば勝負の行方など最早
どうでもよかったのかもしれない。
事の様子をボロボロになったパチロク馬車で眺めていたメソメソはふと呟いた。
「・・・ばかじゃねーの」
そして全ての事の成り行きを見届けた会長はただただ云々とうなずくだけだった。
・・・札束を握りしめて。




