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第16話

ギャリギャリギャリギャリ!!

「な、なんて鋭いコーナリングなんだ。だがしかし!!」

バックミラーに写るシルエットに恐れおののきながらも角刈りのエルフはニヤリと笑みをこぼし

レバーを操作する。

ガコッ!グインッ!

ギュィィン!!

「この俺の(実質)400馬力オーバーブイブイダンゴムシエンジンにかなう馬車などっーーー」

うなりを上げる黒光りボディの馬車が最後のヘアピンに差し掛かった時、既にインに差し掛かっているにも関わらず、

その更に”イン”からそれは現れた。

「何だとぉぉおおお!このタイミングでインに入る馬鹿がいるかっ、回れる訳がーー」

回った、その白と黒の古めかしいボディの馬車は型落ちながらも恐るべきポテンシャルを持っていた。

コーナー出口付近でその馬車に抜かれた時、角刈りのエルフはそれを見逃さなかった。

「冗談だろ・・・車輪を溝に落として回ってやがるっ!この俺が豆屋の馬車に負けるだとぉ!」

追い抜いた白と黒のツートンカラーの馬車はサイドに”エルフマメとうふ店”というペイントが施されていた。


「といういわれのある馬車なのね、これは」

ピコピコは胸を張り意気揚々と答えた。

「ちょ、ちょっと待ってよ!それってすごいのはその運転手なんじゃないの?!

ば、馬車関係ないしっ」

助手席にちんまりとのっているメソメソはあまりにも単純な理由に愕然とした。

二人は今まさに、レース開始直前のスタートラインに立っている。

二人して隣を見れば夜でも眩しい黄色いボディの馬車にムニムニが乗っており、こちらを視線を感じ取ると

コンプライアンス違反必須の手にモザイクが入るような仕草をした。

「・・・お、終わってる、完全に終わった私達、いっそのこと退学届けーーー」

「なにいってんのよっ!こっちだってプラプラとまではいかなくとも魔力は群を抜いて優秀なんだから、頼むわよ!ぱちろくエンジン」

彼女がそう言うのも無理はない。このダンゴムシエンジンに直結されたステアリングはドライバーの魔力を供給する役目も追っているのである。当然その魔力が強靭であればあるほどエンジンも出力は上がると言う訳である。

まあ、個々のエンジンによる限界はあるが。

そしてこのロッコ・D峠。道にはまるでどこかのカートレーシングゲームで見たようなカラフルな道になっているがこれは

魔法の発動を防ぐ役目を果たしており不正行為、つまりはチートは出来ないようになっている。

これは走り屋達の為ではなく、あくまで馬車が行きかう峠道の安全面を配慮した形だ。

「さ、さっきからこのおっさん何説明してんの・・・」

エンジンもあったまって来たところでスタート位置に並んだ両車の前にオルガンが現れた。

「さぁ、準備はいいかい?!兄さん・・・いいね?」

「オルガン、さあ啖呵を切るがいい」

両車のエンジンならぬダンゴムシがうなりを上げる。

「ピコピコとか言ったなぁ!?アタイのケツ・・・しっかり拝んで帰りなっ!」

「のんびりしてるとそのデカいケツに突っ込むわよっ!無駄に開発されたくなかったらとっとと走んなさい!」

それを聞いてムニムニは顔を真っ赤にした。

”10秒前・・・8・・・7・・・6”

「ちょちょちょちょっちょーーーお前、そ、そ、そんな、は、はずかーーー」

「や、やっぱもう私帰ろうかなぁ!私のってもウエイトになるだけだしっ!」

「それも、計算のうちなんだから今更降りたらバランスが崩れるでしょっ」

”5・・・4・・・3・・・”

そのとき、明日太郎のうえで縛り付けられてたプラプラが目を覚ました。

「・・・はっ!な、なんだここは?!そしてこの格好!この状況!この虫刺され!情報量が多すぎるぞっ!」

「やっぱ刺されてたんかいっ!」

”2・・・レディ・・・”

「行くわよ!」「アタイが勝つ!」

オルガンの持つ蛍光フラッグが勢いよく下に降ろされた!

”GO!”

ギュルルルルルルルルル!!ゴォオオオオオオオーーー!

二台の馬車は勢いよく飛び出した。


スタートダッシュは当然ロータリンダンゴムシエンジンのムニムニ。

有言実行、黄色いボディのリアランプをこれでもかと言わんばかりに見せつけている。

「流石ね・・・ここでちぎられるなんて最初からわかってるわよ」

ピコピコは何ら慌てることも無く冷静にムニムニの馬車を眺めていた。

「だ、大丈夫なの?めっちゃ離れていってない?!」

「このロッコD峠の距離は8.10キロ。その間連続ヘアピンカーブを3か所潜り抜け、さらに幾多のコーナリングを攻めなくちゃならないわ」

「・・・な、なんでそんなに詳しいの?まさかピコピコ・・・たまに夜中抜け出してるって聞いてるけど、も、もしかして」

メソメソの顔が半泣きを超えて顔面蒼白になっていく。

「・・・用意しときなさい、○○袋」

「そんなかわいい顔して○○袋なんて言わないでよっ」

前に続いてピコピコがコーナリングに入る。

それは誰が見ても鋭いイン攻めでありコーナであるにもかかわらず、抜ける頃にはまるで加速が増すような抜け方だった。

「ぎゃあああああああああ!!」

「伝わってくる・・・このエキゾースト。久しぶりにいい夜になりそうだわっ」

ピコピコが武者震いをしてゆっくりと笑みを浮かべる。

それを戦々恐々と見ていたのは前方を走るムニムニだ。

(な、なんだ、まさかそんな筈は。あんなスピードで抜けれるはずがないっっっ。

まぐれだ、まぐれに決まってーーー)

その時、ムニムニはふとステアリングを握っている手に目が留まった。


「このあたしが・・・震えている?!」

(な、何臆してんだアタイがっ、たまたまコーナリングがうまいだけだ。それならばーーー)

カーブを抜け、わずかな直線に入った途端凄まじい加速を見せるムニムニのロータリン。

しかしーーー。

「んなぁ?!」

思わずムニムニは素っ頓狂な声を上げてしまった。

引きちぎったと思われるピコピコのぱちろくはすぐ目前まで迫っていた。

「ほらどうしたの・・・ご自慢の尻はもう見納めになるのかしら?」

「くっ、こいつ良いようにされてたまるかぁ!」

最初の連続ヘアピンに差し掛かった時、あえてインをわずかにねじ込めるような隙間を開けてムニムニはコーナーに突入した。

「でたっ、ムニムニの”インから境界線!”」

「あえて、相手にインに行けると思わせておいてコーナリング中にその前を塞ぐドリフトッぉおお!!」

ギャラリーのちっちゃいエルフと背の高いエルフが誰に頼まれるでもなく解説のような声援を上げる。

ピコピコのぱちろくもまるで誘導でもされるかのようにようにそこに突入してゆく。

「馬鹿がっ!さあビビッてブレーキでも踏みなっーーーー」

その刹那、ムニムニはわが目を疑う。

(インの・・・さらにイン・・・だと・・・?!)

ギャリギャリギャリ!!

凄まじい車輪のスキール音。

両車の馬車はほぼ同時と言わんばかりに同時にヘアピンを抜ける。

そしてーーー。

「今度はあたしのケツを拝ませてやるわ!感謝しなさい!」

ぱちろくが前に出た。


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