第13話
「ひのふのみの、しらめのとったの・・・」
ピコピコは札束を銀行員顔負けの扇数えで瞬く間に今日の売り上げ集計を取って行く。
「あーもうつかれたもーん、やめたくなりますよぉ海の家」
メソメソはアイスティーをあおりながら今日の忙しさを嘆いていた。
「かにかにかにかに・・・」
「たくっまだ言ってんのー?いい加減忘れなさいよ。それか明日念写魔法でも使ってみたら?」
プラプラはよほど脳裏に焼き付いていたのか閉店になっても空飛ぶ蟹の事ばかり話していた。
「念写魔法か・・・いいかもしれん。いやしかし、やはりこの目で捕えたい!!
明日は集中して映写魔法で奴をとらえてやる」
「たのむから配膳に集中してくれないかしら、はあまったく。しかしまあさすが
王族に伝わる塩焼きそば、一割の利益しか出ないけどこれだけの客引きになったら御の字だわ、おほほ」
そういって、まとまった数字を見てピコピコはこぼれでる笑みが抑えきれなかった。
「ピコピコ・・・あんた商売人の方が向いてるよ・・・」
翌日ーーー。
「なんなのよこれはっ?!」
海の家の二階を間借りしている三人は開店準備の為一回へ降りてきて早々絶叫した。
「わかめわかめわかめわかめ・・・なに、波がここまできたとか?」
「今すぐ配送業者を呼べ!こんな納品の仕方があるか。で、きょうのおすすめはわかめチャーハンと
冷静わかめスープでいいんだな!」
「いやプラプラ、そういう問題じゃないって・・・」
しかしながら辺りを見れば各テーブルに山盛りにわかめが置いてありそれは明らかに人為的なものを
表していた。
「どう思う?」
「ど、どう思うって・・・あ、昨日うちの店めっちゃ荒稼ぎしたでしょ?そ、それで競合店が
恨めしがっていたずらしに来たんじゃないのかなぁ~」
メソメソはそう言いながら昨日の出来事を思い出していた。
プラプラ達の店は確かに繁盛した。
しかしながら他の競合店、それも最近できた崖の近くにある焼きそばを売りにしている小奇麗なペンション風の
海の家はその日お客が一人も来なかったという。
「あーダメだわそれは。少なくともメニュー被りなら後出しじゃんけんはご法度よ。
少なくとも後発店はメニューを変えるか競合しないよう対策をしなくちゃ・・・と言う訳で、頼んだわよ」
ピコピコはそう言うとどこから用意したのか菓子折りをプラプラに差し出して回れ右させた。
「?!どういう事だ?なぜ私が・・・」
「あんたの王国代々伝わる焼きそばのせいでこうなったんだからあんたが詫びに行くのは当然ってもんでしょ?
ほら、私とメソメソは開店準備で忙しいんだからとっとと行く!とっととくたばれプラ太郎!!」
そういうとピコピコはプラプラを締め出してしまった。
「・・・たぅ。何という扱いだ、仮にも王女だぞっ。そりゃ”ぬほぉ”とか”ひぎぃ”とか”イ〇〝っ”とか
言うかもしれんが・・・」
いいながらもだんだん気まずくなり頬を赤めらせながらプラプラは崖の近くの海の家へと歩き出した。
「海の家・・・なんて呼ぶんだ?”メガ・・・ゾニック”?」
何やらファンキーな文字で看板が掲げられており、他の海の家とはかなりかけ離れたサイバーパンクな
雰囲気が漂っている。
そして、あるものがプラプラの目に飛び込んできた。
「あーーーーー!!あれはっ!あれはもしやぁ!!!」
プラプラの見つめる先、そこには紛れもなく機能目撃した空飛ぶ蟹と思しき物体が屋根に鎮座していた。
鼻息荒くプラプラは渦中の所へと飛び込んだ。
から~ん。大きな正面ドアを開けると小気味よい来店を知らせるベルが鳴り響く。
「頼もうっ!店主はいるか!?」
するとプラプラの目に飛び込んできたのはばっちり決まったブーメランパンツのお兄さん。
「ぬほっ!ぶ、ぶ、ぶーめたん・・・」
思わず目を点にするプラプラを見て店員と思われるお兄さんはクスリと笑いあいさつした。
「これはこれはようこそ王女様、海の家・・・メガゾニックへ。私は店主のジャギア・フロンです。
カウンターにいる彼は弟のオルガン・フロン」
店主のジャギアとオルガンは共ににこやかに礼をした。
「て、店主よ、噂には聞いていると思うがうちの店がなにやら不手際があったようで、こ、これはその、あの
ぶーめら・・・いやお詫びのその・・・品だ!」
プラプラはブーメランをちらちら見つめながら菓子折を差し出した。
「これはこれは何というご配慮、恐悦至極ですね。オルガンよ、王女様をご案内して差し上げるんだ」カウンター越しに見ていたもうひとりのこれまたブーメランパンツのお兄さんがゆっくりと歩み寄りさわやかな笑顔を見せた。ぶーら、ぶーらと。
「おほおぉお!なんというブーメラン返しっ!」
「わかったよ兄さん、さあ王女様、こちらへどうぞ・・・」
プラプラは二人の兄弟のブーメランを交互に見つめながら目を泳がせて千鳥足で店主の後に続いた。
「こ、これは・・・カニ、蟹だ!かにかにかにかに・・・」
「フッ、オルガンよ。王女様はお前の”カニ”が大そうお気に入りの様だ」
兄のジャギアは不敵な笑みを弟に向けた。
「か、蟹だなんて兄さんっ、王女、いいですか?これは明日太郎。私の愛馬は狂暴です」
「なんとぉおおお、こ、これは愛馬というのかっ」
王女は目の前の愛くるしい巨大な蟹ならぬ愛馬にすっかり夢中になった。
「それよりも王女、アイスティでもどうです?あいにく他は切らしていて・・・」
「おおっ、何でも構わんっ、ちょうど喉も乾いていたところだ」
そう言うと王女は喉をゴクゴクならしながら一気にアイスティを飲み干した。
「しかし何という立派な蟹っーーー愛馬なんだっ良ければ私にも・・・・そだて・・・」
喋っているうちにプラプラの瞼は瞬く間に落ちてゆき、床に崩れ落ちて言った。
「フッオルガンよ。少々手荒が過ぎるんじゃないか?」
「何を言ってるんだい兄さん、差し出されたアイスティに睡眠薬は当たり前だよ」
床に崩れ落ちた王女を見ながらフロン兄弟は不敵な笑みを浮かべるのであった。
ちなみにここから18禁的な展開は、残念ながら、無い。




