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第12話

「うーみーはひろいーな~」

普段は森にいるのが当たり前なエルフが海にいるなんてレアじゃね?!

なんて思った君は時代遅れだ。

今やエルフにとって海は無くてはならないホットスポットでありパワースポット・・・。

「ちょっと何一人でぶつぶつ言ってんのプラプラ!!早く3番テーブルに運びなさいよ!!」

ピコピコはフライパンを大きく上げてこの界隈で名物であるグリーンビンズ焼きを瞬く間に仕上げた。

「ハイお待ちっ!!5番テーブルね!」

「ご、ご、5番テーブルっ、アイアイさー」

メソメソのいかにもきょどった言動が料理町の客を更にいらだたせる。

お、良いにおいがしてきた。

「はい、海ブドウわかめチャーハン上がったよ!後シュワシュワドリームLサイズ!」

無論エルフは血を体内に取り込むのはご法度なので魚はNG。だからといって

海の食材に無縁と言う訳ではない。

海草を中心としたミネラル豊富な海の幸はエルフにとってなくてはならない存在なのだ。

「だから早く運べって言ってんだろー!!」

すこーん!!

器用にもうちわを水平発射したピコピコの投擲は仁王立ちで海を眺めるプラプラの尻に縦で直撃した。


遡ること数時間前。

伝令魔法を受け、とある海水浴場へとやって来た三人。

そこのエルフ海観光協会の応接室でプラプラ達三人は観光協会会長とのにらめっこをしていた。

「会長、今なんと?」ピコピコは思わず耳を疑う。

「ですから、皆さんには海の彼方よりやってくるマジカを迎え撃つために海の家で働いてもらいたいのです」

海沿いの出身にもかかわらず日焼け一つしていないほっそりした老エルフはため息交じりにもう一度言った。

「い、いやいや、働くってどういうこと?ていうか普通に海の家で待ってちゃダメなの?」

「敵の敵はまず味方からと言いますし・・・

年々投影魔法の発展で客足は遠のくいっぽーーーうぉおおっほん!」

メソメソが露骨にいやそうな顔を(村長に見せつけるように)してアピールするが

老エルフはため息をつくばかりである。

「じゃあこっちから迎え撃てばいいのよ。だったらわざわざ待つ手間も省けるわ」

「マジカは今どこに生息してるかわからんのです。さらにいつどのタイミングで襲来するのかも訳解らん

訳で、最近は物価も上がる一方でコストダウーーーううええぇえっへん!」

会長は適当に話をはぐらかしたいのか、もはやまともに顔を見ようともせずただ明後日の方をみて愚痴るだけである。おまけに持病のシャクが何とかとか言い出した。

「はぁまったく・・・で、どうすんのプラプラ?こんな案件それこそニッセル師団長に伝令魔法でーーー」

「メニューは焼きそばか?言っておくが、冷凍魔法で冷凍された出来合いの物をただ温めるだけの

料理なんて妥協は無しだ!」

プラプラは鼻息を荒くして天高らかに拳を突き上げた。

「流石王女様・・・わしは、わしは・・・老後も安泰でしゅじゃ!」

「まーたはじまったよ」

二人は顔を見合わせげんなりし、会長だけが鼻息荒く意気揚々としていた。

「プラプラ、王女っていう立場も解らんではないけどさ、何でも首突っ込むのはやめなよ」

「ほ、ほんとそれ。いいようにこき使われておしマイケル・・・」

二人は過去の苦い経験上からか必死に止めようとするが元々お祭り好きの

プラプラは鼻息を荒くするだけだった。

「今すぐ王国に伝令を送ってオリーブオイルを速達で送ってもらおう。食材の手配も来客見込数に合わせて

出来るだけロスが出ないように・・・あ、いやだが我が王族代々伝わる塩焼きそばだけはコスト度外視だ!!」

「さすが王女様ぁ!さっそく海の家に手配に行きますじゃ!」

「王家に伝わる塩焼きそば・・・」

ピコピコは呆れて物も言えなかった。


「で、まあ百歩譲って働くのは良しとしましょうよ。でもこの格好は無いでしょ!!」

ピコピコはそういってカウンターから身を乗り出す。

それは水着という一言ではとても説明できないほどのきわどい水着だった。

「ま、マジそれ・・・こんなの”別の”店と言われても言い訳できない・・・」

「なにをいうかっ。会長曰く、客足を伸ばす魔法を込めた無敵のユニフォームというではないか!!」

ばいーん、ばいーん。ピコピコの目の前で二房のたわわが揺れる。

「あんたが一番きわどいんだよプラプラ。王女がそんなのでどうするっ」

「に、ニッセル師団長に勝てるかも・・・ね」

会長に別の意図があるのは既に明白だったが引き受けた以上ロクに反論も出来ずにいたが

幸いにも客足は伸び、今シーズン一番の来客が見込まれていた。

周りを見れば海水浴客も多く、大変な盛り上がりを見せている。

が、そんな中あくせく働くプラプラ達を少し離れた崖から望遠鏡で眺めるブーメランパンツの男。

「見つけたよ・・・にいさん」


そういいながら薄気味の悪いカニのようなオブジェの上に立ち、本人は気づいていないのか野次馬たちの

格好の笑いものだった。

「どうするにいさん・・・僕はいつでもいいよ」

望遠鏡を眺めながら男は呟く。

当然周りには誰もいない、しかし。

”待つのだオルガン、ここは引くんだ”

オルガンと呼ばれた男の頭に美声が響き渡る。

「?!でも兄さん、今あいつらは仕事に気を取られ無防備状態、チャンスだよ!」

”昨日までその海の家は開店休業状態だった、それが今日にいたってのこれだ。

やつらの動向を伺うんだ・・・”

オルガンは兄さんにたしなめられ歯がゆさを感じ、望遠鏡から目を離した。

眼だけが日焼けしてなかった。

「・・・わかったよにいさん」

そう言うとオルガンはブーメランパンツの端をパチンとしならせ魔法を使うと、足元のカニから

凄まじいジェット噴射がおこり空高く消えていった。


「んんっ?!」

プラプラは配膳しながら海の方をわき見していると凄まじいスピードで空を横切る物体が目に飛び込んできた。

「か、か、蟹だっ!蟹が空を飛んでいる!!」

配膳していた冷麺を客の頭にぶっかけながらしきりに空を指差す。

「か、蟹って誰かがいたずらで魔法でもかけたんでしょ・・・」

「プラプラ!油売ってないで飯売りなさいよ!!」

二人ともあまりの店の忙しさにプラプラの事など気にも留めていなかった。

「あれはでも、魔法でも何でもなく・・・たしかにいたんだ、うん、たし”かに”」

「だじゃれかよ・・・」



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