第11話
「ふぁーいっ!ふぁいお!ふぁいお!ファイオオオオオオォ!!」
恐るべき拳による風圧、右左右左と襲い掛かる規則正しいワンツーパンチは格闘技にはてんで素人の三人でも
明らかに”ヤバい”と思わせる程だった。
「ばっかっ、これで魔法も一つもかけてないってのっ?!冗談」
ピコピコはマッスルンのストレートを交わすのが精いっぱいでとても詠唱を唱える暇もなかった。
「ちょっとメソメソっ、あんたブルってんじゃないわよ!プラプラは何やってんの」
メソメソはマッスルンのあまりの気迫に圧倒され半べそをかいて一定の距離を保っている。
方やプラプラも最後まで生き残ったまるで筋肉の塊と言わんばかりの巨体な戦士に悪戦苦闘していた。
「・・・ふふふ。大胸筋、100%中の82%ぉぉおおお!!」
もりもりっ、もりぃぃいいい!!
「何という、下一桁刻みで身体の強化が出来るとは。ピコピコっ世の中は広いなぁ!」
「感心している場合かぁ!」
もはややる気があるのかないのかは別にしてプラプラはエルフの国には珍しいサングラスの
肌の色がとても悪い選手に夢中だった。
「今日の筋肉はぁ・・・たんぱく質がぁーほうーふっ!!!」
「なにいってんだこいつはぁー!!!」
凄まじい回し蹴を放つマッスルンにたじろいながらも応戦するピコピコ。
しかしその時。
スルッ!「しまっっーーー!」
ピコピコは重心があらぬ方向に向いてしまい体制が大きく崩れる。
「はいっ!モリモリマシマシ一丁上がりーーー?!」
バシュンっ!がしぃいいいん!
「喰らうと思ったっ?!この時の為にあのサドからどんだけ鍛えられたかっ!」
ピコピコはマッスルンの追撃を格闘家も驚くほどの足さばきで応じて見せた。
遠くの方で”さどいうなぁー”と言う野次のようなものが飛んできたがあえて知らないふりをする。
「防戦一方だと思った?!今度はこっちの番なんだからっカテゴリー13”バルンローブ”!」
ピコピコは抜け目なく相手の攻撃をかわしながらもわずかながら詠唱を続けていた。
手足の辺りを凄まじいつむじ風がまといだした。
「うぉおおぉおおりゃおりゃおりゃおりゃおりゃー!おりゃーーー!!!」
バシュバシュバシュバシュバシュ!
「こ、この弾けるビート!ホトバシル・・・エナジー!・・・嗚呼・・・イイ!」
(こんのぉおおおお、ど変態マジカーー!)
凄まじいラッシュを浴びせても倒れるどころか光悦の笑みを浮かべるマッスルンにピコピコはドン引きする。
その時、端の方から大きな歓声が沸き起こる。
「どおぉおおだぁ!」
思わず二人が完成の方を見るとそこには天高らかに紐のような鎧(鎧のような紐)を掲げたニッセルが仁王立ちしていた。
背景に”ドゴォーン!”という効果音が見えたような気がした。
「わが生涯に・・・一片の布なし」
そう呟いたのは足元で安らかな顔をしてビーナスのような姿で倒れるプリプリがいた。
観客から一斉に映写魔法が唱えられ中には身を乗り出し魔法陣の近くまで行くものまで現れた。
慌ててスタッフが制止に飛んで行く。
「駄目です下がってください!選手に向けての映写魔法は固く・・・ぶはッすごいなこりゃーー」
「馬鹿何やってんのっ!はい下がれ下がれ!こんなライザみたいな身体のどこが…どこが…ち、ちきしょーめ!」
若干涙目を浮かべながら乗り出した観客をあしらうスタッフはさておき、注目すべきは渦中の二人である。
「ほ、ほ、うほぉおおおおおお!!はい!はい!はい!さぁあああこい!恋!ばっち恋!」
そのプリプリのムチムチ18禁ボディにすっかり釘付けになっているのを遠巻きに見ていたメソメソにとって
正にチャンス到来だった。
「あ、あ、きた、チャンス来たよコレ!ざぁあこざぁあこ!カテゴリー18クラス2!」
メソメソにとっての最大級の魔法、氷雷柱生成を唱えた。
足元の魔法陣から伸びあがってくる氷雷柱。しかしながら魔法陣の影響により本来の十分の一程度の太さになっている。
それはまるで、研ぎ澄まされた長い槍である。
「ピコピコ!プラプラ!さ、作戦開始!!」
「「!!」」
メソメソの普段ではまず耳にすることがない金切り声を聞き真っ先に気が付いた二人。
「任せろ!」「頼んだわよっ!」
相手のスキをついて一気にフォーメーションを取る。
「いっけぇえええええええ!!!」
メソメソは持てる魔法力を総動員して二人の元に生成した槍を投げ放つ。
「クラス3、ヒョウレツ!!」
ピコピコは自身とプラプラに瞬発力を一時的に上げる魔法をかける。
「よしキタぁ!勝負!山ん中マッスルンとサングラスの人!!」
プラプラは槍を同時に持つと即座に向きを相手に向ける。
「のびろぉおおおおおおおお!!」
マジックリングにしこたまため込んでおいた伸縮魔法を唱える。
魔法陣の影響により威力が下がるもののプラプラにとってはむしろ丁度良いぐらいであった。
「?!大胸筋っ100%中の120パーーー」「?!さ、さーこい!ばっちこぉおおおーーーー」
ずばぁああああああん!!!
瞬発力を限界まで上げていたためよける暇もなく、山ん中マッスルンとサングラスの巨体は魔法陣の外へと飛び出た。
”場外・・・場外だぁ!!!”
観客の一人が叫び、それはたちまち会場全体に広がった。
「な、何とか作戦成功・・・」「たく、姑息な手段だけど、一番確実っちゃ確実か・・・」
「大そうであった・・・大そうであったぞ山ん中きんに君とグラサンの人!」
三人は一番懸念されていたマッスルンの撃退に成功するものの
背後に感じた鋭い視線にぎくりとする。
「・・・三人とも、よくやりましたね」
そこには未だに天に向かってひものような鎧を掲げる師団長ニッセルがいた。
「そ、そうだ・・・まだこの人がいた」
「どうすんの?!このサーーいや、強靭な戦士に勝つ手段なんてっ」
ピコピコやメソメソが困惑する中、二人を押しのけプラプラがニッセルの前に出た。
「そうだ、勝つ術なんてない・・・いや無くていいんだ、そうだろう皆の集?!」
プラプラは声を張り上げ観客に問いかける。
しばしの沈黙ののち、観客が一斉に沸き立ち師団長を称えた。
「そんなっ・・・王女様?!」
「魔法・武術共に優れ、民を守りまた取りまとめる強きエルフ・・・貴方こそこの都市の神官にふさわしい」
プラプラはそう言うと背を向けて魔法陣から退場してゆく。
「・・・わかりました。皆の者!このニッセル・プルンドル騎士師団長として、そして神官として
この武装都市を守り抜くことを宣言しよう!!」
わぁああああああああ!!!
一同が歓喜を上げ、ニッセルを称える。
「ま、まあマジカも倒したし・・・いいんじゃね?」
「あ、あまり深く考えないようにしましょ」
二人は苦笑いしながらプラプラの後を追った。
”ーーーニッーーーーーニップーーーーーニップル!”
「な、なにっ?!」
ニッセル次第にはっきりとしてきた観客の声援に驚愕する。
”ニップル!ニップル!ニップル!ニップル神官!バンザーイ!!”
「そ、そういうことかっ!!お、王女、や、やっぱり前言をっ」
後を追おうにも既に三人はその舞台からは姿を消していた。




