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「そんな部の設立は認めません」
俺も付き合って同行した生徒会室で、応対した、メガネをかけた神経質そうな執行部の女子が、冷たく言い放った。
「えー? なんでですかぁー?」
清人はわざとらしくショックな声をあげた。俺は別に構わないけれど、本音は不満じゃないのがバレるだろ。
続けて、こっそり俺に耳打ちをした。
「よかったね、悪者の役をやらずに済んで」
こいつ、すげえ余裕だな。ほんとに大丈夫なのか?
「当たり前でしょう。そんな訳のわからないクラブ」
目の前の女子生徒はにらむような顔つきで述べた。
「納得できません」
清人はほおを膨らませて返した。
「いや、してください」
女子はまともに相手なんかしていられないといった様子だ。
「だったら、この部の趣旨や良さを詳しく説明しますから、それを先生方に聞いてもらって、OKかやっぱり駄目か判断していただくってのはどうですか?」
清人は一転して真面目な表情で尋ねた。
執行部の女子は意表をつかれた感じになったが、すぐに態度を立て直した。
「わかりました。職員室に今の話を持っていきますので、先生が了解したら、そうしましょう」
そしてまもなく、評価クラブ創設の合否を決めるためのアピールの場が用意された。清人の訴えに、数名の先生が耳を傾けてジャッジするということで、管理役の生徒会役員たちに加え、興味のある一般の生徒も脇で傍聴できるかたちとなったのだ。
しかし清人の奴、先生が認めなかったら、どうする気だったんだ? そうはならないという計算だったのかもしれないが、あいつは温和なイメージだけれどもいざとなったらけっこう無茶もやって、ヒヤヒヤさせられるから俺にとっても良かった。
「現代は情報社会です」
他の生徒や先生たちを前に、教卓のところに立って、清人は語り始めた。
「例えば、多額の資金を使えることで、質も量も際立った大企業の宣伝や広告を何度も目にするうち、僕らは無自覚にその商品が良いものなのだと受け入れてしまっている面があると思います。それを、この評価クラブで、お菓子ならば食べるというように実際に体感して、果たしてどうなのか。『あれ? 想像していたよりもおいしくないぞ』と感じるかもしれませんし、時間を置くと『この有名な企業の商品がいまいちなわけがない』などと変化してしまうおそれもある他人の率直な意見をその場ですぐに聞くことで、『え? 自分は違うけどな。どうしてだ?』であるとか、『どこが良くないんだろう?』といった具合に、頭が働くと思うんです。つまり、経験知を増やすとともに、思考力が自然と身につく、そういう学習効果があると考えております」
清人の思惑通り、すんなり部の発足が許可されず、こうした場が設けられたことで、評価クラブは生徒たちのちょっとした話題の的になり、この席に加わりたい人数が多かったために抽選が行われたほどだ。ただ、そこまで倍率が高くなかったおかげで、俺は無事に傍聴する権利を得たのだった。
「また、テーマによって、集まった意見を企業など関係する人や団体に送付することを検討しています。これは立派な社会活動、いえ、相手方の役に立つのですから、社会貢献とさえ言ってよいのではないでしょうか? 例として挙げたのは、たくさんの生徒に興味を持ってもらえるように、お菓子やポップソングにしましたが、その時間内に読み終えられる少ないページ数の小説の感想など、真面目なものも取り扱う予定です。それでもちゃんとした活動となるのか懸念が消えないのであれば、当面は部費はいただかなくて結構です。なるべくお金がかからない題材を選んでやっていきますので。監視役として顧問の先生をつけてくださってもちろんいいですし、そのとき手の空いている先生がチェックしにきてくださったり、なんなら参加して意見を言ってもらっても構いません。構わないというより、歓迎ですね。こんなところですが、いかがでしょうか? 質問がございましたら、先生だけでなく生徒の皆さんも、どうぞ何なりと」




