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今いたのとは別の、一人で暮らしている、自宅のマンションへ向かって歩いている最中に、電話がかかってきて、それに俺は出た。
「もしもし」
「貝塚ですが、先ほどは大丈夫でしたか?」
「はい。大成功でしたね。皆さん、まったく疑う様子がありませんでしたし、部屋に入って顔を合わせた時点で私への嫌悪感があふれ出るほどでした。貝塚さんがそうなるようにとても上手く誘導してくださったおかげでしょう。お見事です。最後まで、大変お世話になりました」
「……しかし、本当に良かったのですか? もう一緒に行動できなくなるのは残念でなりません」
「私も同じ気持ちですけれども、仕方ありません。あの左派政治家の娘さんの安全を約束するのは、私が活動から身を引くことと引き換えで、それ以外は許さないと、はっきり警告されてしまいましたのでね。それに、もはや私がいなくても、皆さん方の手によって、日本社会は平和で弱者に優しい、望ましい状態にたどりつくと確信しております」
「いえいえ、角田さんの代わりは他の誰にもできません。その損失は計り知れず、我々のみで平和な世の中の達成などおぼつかないでしょう」
「そんなことはありませんよ。だいいち、我々が目指していたのは共生社会で、基本的に全員が対等な関係であり、リーダーのような存在は不要なはずです。太鼓判を押しますから、皆さん、自分たちの力を信じて、これまで通り活動を続けてください。必ずや明るい未来が訪れる、私もそう信じて、陰ながら応援しております」
「……わかりました。これまで、本当にお世話になりました。あなたのことは忘れません。ありがとうございました」
「こちらこそ、皆さんのことは忘れません。ありがとうございました」
「どうかお元気で。失礼いたします」
「はい。失礼します」
通話を終え、俺は携帯をポケットにしまった。
今の会話の通り、メンバーのなかでとりわけ優秀で、俺が最も信頼を置いていた貝塚さんに頼んで、わざと追いだされるように協力してもらっていたのだ。そして、駄目押しとして、みんなを幻滅させる振る舞いを自ら行った。
とはいえ、今までともに活動を、それもけっこうな期間行ってきたというのに、あのとき自分をまったく信じてもらえなかったことに対して、一抹のむなしさやさみしさが込み上げた。
まあ、いい。所詮、俺には孤独がお似合いだ。
その日、俺は自宅の部屋で一晩中、ザ・イエロー・モンキーの「間違いねえな」を聴き続けた。俺がこの世の中で一番好きな曲だ。




