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私は、その男が事務所のように部屋を使用しているマンションにやってきた。現在、建物からあと数十メートルという位置の路上に立っている。
目当ての彼、角田氏は、身の安全を確保するためなのか、常にと言っていいくらいに誰か別の人間が一緒におり、一人でいることはめったにない。
しかし、今がそれにあたる、火曜日の夕方の時間帯に行動をともするのは、大方が女性であることが調査によりわかっている。要するに、ガードが脆弱であるというわけだ。所詮は一般人、甘さも残る。
来た。
やはり今日も、単独でないのに加え、同行しているのは中年の女性一名のみだ。
私は彼らの背後から徒歩で迫っていった。
「すみません」
そう声をかけ、振り返った角田氏は、ヘビのようで実に不気味な顔立ちだ。おそらく、いや、間違いなく、整形手術によってつくられた容姿であろう。顔を変えた理由は判明していないけれども、それもまた、近づいてくる人間を怯ませるといった、危険回避のためではなかろうか。
「私は加納と申しまして、角田さまとお話をさせていただきたく参りました。願いを聞いてくださいませんでしょうか?」
私のその言葉に、露骨な態度ではないものの違和感を覚えているようで、彼はなかなか返事をよこさなかった。
「……わかりました。ここのマンションに使用している部屋がありますので、そちらでよろしいでしょうか?」
ようやく、そのように答えた。
「もちろん構いません。ありがとうございます」
私は深く頭を下げた。
「では、参りましょう」
そう口にした角田氏と女性の二人に導かれて、私はマンション内に足を踏み入れることに成功した。
それにしてもこの男、にらんだ通り、危険に対して敏感なようだ。私の見た目は紳士として完璧と言って良く、そのうえ、これ以上ないほど愛想よくしゃべったというのに、警戒心が尋常ではなかった。




