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「皆さま、ご協力どうもありがとうございました」
私はスタッフや支援者たちに頭を下げた。
それを受けて、事務所内に再び拍手の音が鳴り響いた。
あのマンションの部屋で、角田さんが私にくれた助言は次のようなものだった。
「左派の政治家がどうあるべきかというのは、私自身、以前より何度となく自問自答しているので、すぐにお答えすることができます。では申しますと、まず保守派の政党や議員たちに対して、言動が誤りであるという認識を示しても構いませんが、けなす批判は行わないことですね。それは彼らを支持している人々をも悪く言っているのと同じようなものだからです。その方々からの支持はさらに遠のき、自分たちの話にわずかも耳を傾けてもらえない結果を招きかねないと思います。また、政権を獲らなくてもやれることはありますよ。例えば、受ける要件を満たしていながら、知らないために社会保障の制度を利用していない方がいらっしゃるでしょうから、そうした役に立つ情報を教えて差し上げるのです。そもそも、議員の主な役割は法律を作ることですけれども、人間は決まり通りに必ずしも動きませんよね。反発したり、隠れて行う人が増加するといった具合に、ルールの制定は逆効果になるケースすらあります。ですので、与党以上に、助けになるなど、影響の大きい行動もできると私は考えています。国や自治体による援助についてだけでなく、生活の知恵といったものを提供するのも良いのではないでしょうか」
……そうか。
「なるほど」
「そして、国政選挙の際に有権者は、日本リベラル党の公約が最も実行に値すると判断したとしても、政権を担ったことのない彼らに任せて果たして大丈夫なのだろうかとの思いから、票を投じるのを断念してしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。環境の変化は不安やストレスを伴うものであって、他の国でも現在の政府や与党への不満がたまっていながら政権交代はなかなか実現しない現象は珍しいことではないですから、ただでさえ野党の側には相当な信頼が必要でしょうし。ですので、どれほど小さな自治体であろうと関係なく、知事や市長になって、運営ができるところを世間の人たちに見せるのが良いのではないかと思います」
というわけで、強力な対立候補がいなかったりと勝てる見込みが高く、もちろんその土地の勉強をしっかり行ったうえで、立候補した市長選挙で、たった今私は当選に至ったのである。
「どういった市政運営をなされるお考えでしょうか?」
会見で、記者から、そう質問を受けた。
「所属先の日本リベラル党も謳っていますが、私はトップダウンではなくボトムアップ型の社会が望ましいと考えております。それは、その状態が素晴らしいといった理由ではございません。どれだけ優秀であろうとも完璧な人間など皆無であり、上の立場の者があらゆる問題に際して、常に名案を思いつき、最善の対処ができるはずはないからです。ですので、まずは市民の皆さまから悩みや困り事をきちんとうかがってから、どうすれば解決や改善ができるかを、当事者やその問題について研究している専門家、またウェブサイト等を通じて市内外の一般の方からも募って、アイデアを出していただき、関係者にその提案者を含めた皆で話し合って前進させていくというかたちをつくる計画でいます。そうすれば、一部の人に過度な負担とならず、非常に困難な事案がいくつあっても並行して進めていくことが可能ですし。そのようにして、一つひとつの問題に丁寧かつ迅速に取り組み、確実に成果を上げていけるように努力して参ります」
これも角田さんがくれた言葉から行き着いたものだ。彼は言った。
「どうしたらいいのかわからないのであれば、訊けば良いのですよ。私にではなく、市民や専門家といった方々に、何が問題で、どう対応すればいいのかまで、そのすべてを。政治家というのは、困っていることを解決するのではなく、それができるように人々の連携をサポートするのが役目だと私は考えてます」
見てらっしゃい。私が運営するこの市を発端に、日本じゅうが協力し合って世の中を良くしていく社会を、必ずや構築してみせるんだから。




