第八十三話 おいしいお昼ご飯
「さて」
リーバ先生が腕を組む。
「お前たち、何を持ってきた」
突然の質問だった。
テティスが元気よく手を挙げる。
「サンドイッチ!」
「ほう」
「それとクッキー!」
「遠足か?」
「えっ」
ガイアが笑う。
「俺は干し肉と携帯食」
「まともだな」
「一応」
サナが一言呟く。
「保存食」
「以上か」
「以上」
アリア。
「栄養補助食と乾燥果実です」
「面白みがないな」
「必要ですか?」
「別に」
ライル。
「肉」
「雑だな」
「肉だ」
「そうか」
ミュシャ。
「果物」
「終わりか」
「終わりよ」
ヘスティア。
「携帯食と..肉です。」
「ほぅ?」
リーバ先生がライルの顔をチラッと見る。
それから、レオ。
「パン」
「それだけか」
「足りる」
「そうか」
...最後に僕。
「えっと……」
鞄をごそごそする。
「パンとスープの材料と、干し肉と……」
出てくる。
まだ出てくる。
さらに出てくる。
収納鞄から次々出てくる。
「待て」
リーバ先生が止めた。
「どれだけ持ってきた」
「みんなで食べられるかなと思って」
僕は首を傾げる。
だって、みんなで行く初めての遠出だよ?
楽しい思い出を作りたいじゃないか。
その言葉にガイアが吹き出した。
「はははっ!」
テティスも笑い出す。
「リオらしい!」
リーバ先生も完全ではないが確かに笑っていた。
「なるほど」
それからリーバは先生は頷く。
「よく分かった」
そして次の瞬間、またニヤリと笑って言った。
「では、それは全部しまえ」
全員が固まる。
「……は?」
ガイアが聞き返す。
リーバ先生は平然と言った。
「昼飯は自分で確保しろ」
沈黙。
テティスが瞬きを繰り返す。
「え?」
「この森の魔物を狩る」
リーバ先生は続ける。
「捌く、調理する、食う。今日の昼食は以上だ。」
さらに沈黙。
「待ってください」
アリアが真っ先に反応した。
「もってきたやつは食べないのですか?」
「しまえと言っただろ?」
「ではなぜ」
「お前たちが何を持ってくるか知りたかっただけだ。」
その言葉に全員が呆然とする。
「それと」
リーバ先生が地面に小さな袋を投げた。
ぽとり。
袋が破れる。
中から強い匂いが広がった。
ライルが即座に顔をしかめる。
「血か」
「正解」
リーバ先生は満足そうに言う。
「魔物誘引用の餌だ」
テティスが青ざめた。
「えっ」
「あと十分もすれば集まる」
「えっ」
「昼飯が向こうから来る」
「ええっ!?」
ガイアが頭を抱える。
「この人絶対最初からそのつもりだっただろ!」
「当然だ」
リーバ先生は即答した。
そしてまたニヤリと笑う。
珍しく、教師というより歴戦の魔法使いの顔だった。
「実戦で食える魔物と食えない魔物の区別もできない奴が、森で生き残れると思うなよ」
その瞬間。
森の奥から――
ガサリ。
何かが動く音がした。
リーバ先生は座ったまま言う。
「来たぞ」
そして平然とぐいっと酒を呑む。
「では昼食を始めろ」
生徒たちは、
「いや始まってるの戦闘なんだが!?」
という顔で一斉に立ち上がった。




