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第七十六話 準備


リーバ先生が教室を出ると同時に空気が一気に動いた。

さっきまで張りつめていたものが、今度は別の意味でざわつき始める。


「長期間って……どれくらいかな?」


「今日街行っていいってマジ?」


「装備どうすんだよ」


一斉に声が上がる。

僕はその中で、少し遅れて理解した。


(……長期間?)


課外学習、という言葉の軽さと今の指示がまるで噛み合っていない。


(いや、それ課外学習の範囲?)


後ろでテティスがぱっと顔を上げる。


「ねえねえ、泊まり!?泊まりだよねこれ!」


「……たぶん、いや絶対」


「やったー!」


素直に喜んでいる。

そもそも森の奥まで行くのに普通は数日かかる。

森の中で野宿の何が楽しいのだろう。

僕はヴァルクに修行だと、初めて家からほっぽり出され森で野宿した思い出を思い出しては少しゾッとした。

数年したらそれも慣れたけど、森に住んでいた僕でも初めは大変だったし、なんなら死を覚悟したこともあったような。

みんなで行くから、楽しいのかな...


そんな中、ライルやアリアはすでに動いていた。

何も言わずにその場を離れ、さっさと準備に向かう。

迷いがない。



サナは少し遅れて「あー、準備か」とどこか他人事のように呟いていた。


ミュシャは露骨にため息をついた。


「面倒ね……」


それでも動くあたり、完全に無視するつもりはないらしい。

ヘスティアは――

一瞬だけ、その場に残った。

何かを考えているようにも見える。

けれどすぐに、何もなかったかのように歩き出す。

その動きが妙に静かだった。

レオが僕の隣に立つ。


「お前は何を持っていく?」


いきなり、具体的な話。周りにいたみんなは、レオが僕に話しかけたことにまた少し驚いていた。


「……え?」


「長期間と言ってた。お前、森出身と聞いた。」


まっすぐな言い方で余計な含みがない。

僕は少しだけ考える。


「水は現地でなんとかなると思うけど……食料は最低限いるかな。現地で狩りはできるだろうけど...何が起こるかわからないし」


「保存食か」


「うん。あと寝る場所も分かんないし、寝具も。あとは...もちろん着替えがいるし、あ、調理道具とか小さいナイフとかはいるかも。あと...」


僕がたくさん言うのを一通り聞き終わったあと、レオは小さくわかった、と頷いて去っていった。


テティスはサナや僕たちに当たり前のように

「じゃあ、30分後にまた集合ね!」と自分の寮に帰っていった。






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