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第六十四話 アリア・ルミナの視点

訓練場の一角。


ドンッ!!


地面が大きく揺れる。リオの意見を聞いたガイアとアリアとミュシャがチームを組んで再現に取り組んでいた。


「……違う!」


ガイアが舌打ちする。

地面には亀裂。

だが——浅い。


「力任せすぎです」


静かな声。

アリア。


「分かってる...!」


「再現は難しいですね」


その横で——ミュシャは動かない。

ただ、傷跡を見ている。


「……三層」


ぽつりと呟く。


「土で持ち上げて雷で割って最後に固定してる」


「固定?」


ガイアが眉をひそめる。


「光の魔法でできます。」


アリアが答える。


「……光?」


「はい」


地面を指差す。


「ほら、ここ、崩れていないでしょう」


確かにアリアが指を差したところの土は割れてはいるのに、形は保たれている。


「普通このもろさなら崩壊しています。でもしていない。つまり、“留めている力”がある」


ミュシャが小さく頷く。


「……それが光」


「はい」


ガイアが頭をかく。

アリアは淡々としている。


「順番を決めましょう。最初にガイアが土。ミュシャ、雷。私が光で固定します。難しかったら順番を変えつつ挑戦してみましょう。」


「おう」


「……」


ミュシャは無言で頷く。


「いくぞ!」


まずガイア。


ドンッ!!


地面を持ち上げる。


だが——


「粗い」


ミュシャが突っ込む。


「うるせぇ!」


「形が崩れています。基盤が不安定だと全部崩れますよ」


アリアが静かに補足する。


「……チッ」


もう一度。今度は少し抑える。地面が整う。


「……いい」


ミュシャが手を上げる。


雷。


だが——落ちない。

空中で止まる。

そのまま、ゆっくりと落とす。


ドォンッ!!


地面が割れる。

だが——割れすぎる。


「強いです」


アリアがすぐに言う。


「削りすぎています」


「……」


ミュシャの目がわずかに動く。

そうして何度かやり直したとき、アリアが手をかざした。

光。柔らかい光が割れた地面に流れ込む。

“繋ぐ”。

崩れかけた部分を、固定する。

ガイアが目を見開く。


「……おい、それ」


「...崩れる前に止めています。補強ではなく、“形を維持する光”です。光を途中にいれてみました。」



ガイアが笑う。


「面白ぇな」


最後に、ガイアがもう一度踏み込む。


ドンッ!!


圧をかける。


今回は——崩れない。

光が支えている。


形が整う。


三人の前に、傷跡が完成する。

元のものと並ぶ。

ほぼ同じ。


「……できたな」


「合格」


リーバの声。


ガイアが大きく息を吐く。


「はぁ……これをあと2回も。魔力もつかな...」


「でも成功です」


アリアは静かに言う。

ミュシャは何も言わない。

ただ、傷跡を見る。


「……悪くない」


ぽつりと呟く。

アリアの目が、少しだけ柔らかくなる。


---------------------------------

《アリアの視点》


試験は、続いている。

ざわつく訓練場。

魔力の流れ。

ぶつかり合う音。

その中で——

アリアは、ふと視線を向けた。


リオ。

さっきの再現。

あれは、明らかに異質だった。


早い、だけじゃない。“正確すぎる”。


リオは合格して暇なのか、アリアの近くにあったリーバが指示した試験用ではないまた別の傷跡の前でしゃがみ込んでいる。

リオの指先が地面に触れる。


「……これ、どうやるんだろ」


小さく独り言を呟いている。

その声に迷いはある。

でも——恐れがない。


普通は分からないものに触れるとき、もっと警戒するはず。


アリアは静かにリオを見る。

リオの手。その手の甲。

ほんの一瞬の“違和感”。

灰色の痣のその奥。


(……)


アリアは目を細めた。

見たことがある。

王家の図書室の本で。王家に代々引き継がれている普通は出回らない魔法史で...


だが——リオが手を動かす。

思考が途切れる。


「えっと……」


リオは傷跡を再現しようとしているのか、リオから魔力が出て、光の魔法が出た。自然に流れ整っており、揺れることはない。


(どうして)


アリアの目がまたわずかに細くなる。

光を使うとき、意識すること。

“支える”。

崩れないように。均一に保つために。


でも——

リオは何も意識していない。

それでも崩れない。

意識していないのに魔法が安定している。

普通はありえない。


リオは首を傾げる。


「……うーん。ちょっと違うかも」


リオは迷いながらもやり直している。

でも——ズレない。


「……」


アリアは気づく。


この人、“支える”という意識が全くない。

それでも魔法を使いこなしている。

その瞬間、アリアの背筋がわずかに冷える。


(それは……)


“普通じゃない”


視線を落とす。


もう一度、リオの手の甲。灰色の痣。

その奥にうっすらと浮かぶ線。


「魔法陣……?」


思わず、声が漏れる。

リオが顔を上げる。


「え?」


「あ、いえ……」


アリアは視線を逸らす。

まだ、確信はない。

でも——


あの安定感は光の魔法だけじゃない。もっと根本的な……


言葉にならない。

ただ一つ、分かること。


この人は“普通の魔法使いじゃない”


そのとき。


「おーいアリア!」


ガイアの声。


「こっち手伝え!」


「……はい」


返事をする。

でも、視線は一瞬だけ戻る。

リオ。

無邪気に、悩んでいる。


……リオは自分の異質さに気づいてない。

それが、一番怖い。

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