第六十二話 ライル×レオ×サナ
リオの再現が終わったあと、訓練場の空気は明らかに変わっていた。
一人で解く試験じゃない。
“どう組むか”の試験。
ざわつきの中で、それぞれが動き始める。
「……」
その中で、動かない三人がいた。
ライル。
レオ。
サナ。
距離は近いが、会話はない。
最初に口を開いたのはサナだった。
「で?」
気だるそうな声。
「どうすんの」
ライルは視線を3人の近くにあった痕跡から外さない。
「組む」
短く言う。
「三人で?...まぁ、リオが答えを言ったようなもんだよな。」
サナは肩をすくめる。
レオは何も言わず、ただ、傷跡を見ている。
「……」
三人で、同時にしゃがみ込む。
目の前の痕跡。
焼け。
崩壊。
そして——
“消えている部分”。
「……この消えている部分は闇か」
ライルが呟く。サナが笑う。
「めんどくせぇな」
レオは何も返さない。
ライルが整理する。
「火、闇、風……いや、ここは削れてる。削ってるのは風じゃねぇな」
サナが口を挟む。
「もっと雑だ」
「雑?」
「無理やり“消してる”感じ」
レオの視線がわずかに動く。
「じゃあ役割だ」
ライルが立ち上がる。
「俺が火、レオ、闇、サナ——調整」
サナが先に言う。
「一番めんどーな作業じゃん。」
「できるだろ」
「まぁな」
軽く笑う。
「いくぞ」
まず、レオ。
闇が出る。
だが——見えない。そこに“ある”のに感じ取りにくい。
空気が、少しだけ歪む。
「……」
ライルの眉がわずかに動く。
「魔法がわかりずらい、薄い。もっと強く出せ」
レオが一言。
「必要ない」
「再現だぞ」
「見せる必要はない」
空気が張る。サナがため息をつく。
「はいはいストップ」
二人がサナを見る。サナが地面を指で叩く。わずかに残る歪みがあった。
「ここ、“消しきれてない”だろ。つまり完全に隠してない。中途半端に残してる」
「じゃあレオ、残る程度に出せ」
ライルが言う。
レオは一瞬だけ黙る。
だが、短く答える。
「……了解した。」
闇が性質を変える。今度は、“わずかに感じる”。
存在がある。
「それだ」
サナが笑う。
「ライル、火いけ」
火が灯る。
だが——
「強すぎ」
「……」
「レオの作ったやつ消えちゃうじゃん、それじゃ」
ライルが舌打ちしながら火を落とす。
闇の中に、火が流れる。
歪みが生まれる。
「うん、次俺。」
サナが風を動かす。
最小限。削る。形を整える。
三人の前に傷跡が現れる。
元のものと並ぶ。
ほぼ同じ。
「……できたな」
「合格」
後ろからリーバの声。
「だが、3人で協力したからあと2カ所作れ」
サナが伸びをする。
「めんどくせー」
レオは何も言わない。
ただ、わずかにライルを見る。
ライルは——自分の火を見る。
サナは空を眺める。流れていく雲はときどき速度を変えながら合流したり、離れたりしていた。
「なんかさ、俺たちみたいだね」
サナが誰にも聞こえないような声で呟いた。




