第六十話 魔法の理由と、揃わない魔力
結論から言うと、僕の学科試験...特に魔法史の試験はボロボロだった。
いや、わからないなりに一生懸命解いた。
結果はわからないけど、終わった後の達成感は大きかった。
それから今は訓練場にいる。
「実技試験、どんな試験なんだろうね」
テティスが少しそわそわしている。実技試験の内容は当日の今日まで聞かされていないからだ。
「なんかさ、今日訓練場もあっちこっち傷だらけだし...戦え!とか言われるのかな?」
通常、学院の訓練場はどういうわけか傷が元に戻るように魔法が施されている。
しかし今回は違う。焼け跡。えぐれ。ひび割れ。
円形の訓練場には不自然に残された傷跡がいたるところにあった。
「でも、私は聞かされてたところで勉強優先してたかも」
「え、なんで?」
僕はその意味がわからなくて聞く。テティスはコソッと言う。
「だって今回の試験はAクラスからCクラスまで共通の課題らしいよ?実技試験がみんな準備なしで挑むんだったら...私たち一応Aクラスの実力もってるんだし他のクラスの人たちより有利だと思わない?それなら学科の点数をとにかくあげる。」
「確かに。」
僕は納得した。
まぁ、僕の学科試験の実力はCクラス並かそれ以下だと思うけど。
それにしてもテティスのこの情報はどこからくるんだろう。
乾いた風が砂を撫でる。
「整列」
リーバ先生の掛け声でみんなが先生の周りに集まった。
「これから実技試験を行う。先ほどから違和感があっただろうが、訓練場にはいろんな魔法の使用形跡を残した。...これらを再現しろ。その再現度を試験の得点に反映する。協力しても構わないがその場合は必ず別の跡を使って人数分の再現をしろ。」
訓練場の傷をよくよく見るとただの破壊ではない。“何かがあった跡”。
それを再現する試験...
「はじめ!」
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リーバの掛け声とともに各々が傷跡を確認している。
リーバはその姿を見ながら不敵の笑みを綻ばせる。
...こいつらが再現するには時間がかかる。
何せ教師陣総出でいろんな魔法を組み合わせて作った傷跡だ。
まずはどんな魔法が使われたのかを推測する力。それから実際にそれを再現する技術。
必ず誰かを必要とする試験。
プライドが高いやつ、やる気がないやつ、コミュ障...
さぁ、青二歳のお前らが魔法の痕跡を再現するのは今日中でできるかな?
リーバは片手に持っているボトルの中身を呑みながら訓練場の端に座って堂々とサボろうとしていた。
リーバがボトルを口元まで持ってきたそのときだった。
「あの、僕、多分できます」
すぐに呼びかけられた。リオだ。
こいつのすぐ近くの地面には、大きくえぐれた魔法の跡がある。
リーバの笑いはすぐに消えた。
リーバはボトルを口元で止めたまま、ゆっくりとリオの方へ視線を向ける。
「……やってみろ」
低い声。
試すような響き。
「え?あ、はい」
リオは少しだけ困ったように笑うと、しゃがみ込んだ。
指先が、えぐれた地面に触れる。
リオはリーバに聞こえるか聞こえないくらいで小さく頷く。
「最初に....亀裂。それからさらに焼いて、最後に、圧力..」
リーバは黙っている。
リオは一言詠唱した。いや、詠唱と言うには短すぎる一言。
「雷」
ガァァァンッ!!!
すると訓練場の空に光が走り、
その静かな詠唱には似合わないとてつもなく大きな雷がえぐれた地面の横に落ちた。




