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第五十八話 灰色の痣と禁忌の記録(後半)

ヘスティアはほんの一瞬の違和感を覚えた。

痣の奥にうっすらと浮かぶ幾何学模様。

円と線。

重なり合う構造。ヘスティアの脳内でたくさんの内容が紐付けられていく。


……これ


見覚えがある。

本で、何度も。

ヘスティアはその手をまじまじと見て小さく呟く。


「古代魔法の魔法陣に似てる……」


「古代魔法の魔法陣?」


「……はい。500年前の魔法戦争はご存知ですか?」


「ううん、ごめんね、わかんないや。」


ヘスティアはゆっくりと手を離したかと思うと、ふらっとどこかに行って本を持ってきた。

それから少しだけ間を置いて本を開く。

どうやら世界地図が描かれた本だ。ヘスティアは静かに話し出す。


「今から500年前に」


静かな声。


「大きな戦争がありました」


「魔法戦争?」


「はい」


ヘスティアは頷きながら続ける。


「簡単に言うと——」


少しだけ言葉を選ぶ。


「“国が広げすぎようとした”ことで起きた戦争です」


「広げすぎ?」


「はい」


地図のページを開く。

五つの大陸。その中央を指差す。


「この大陸が私たちの国...当時、この大陸の中でもいくつかの国があって互いに領土をもっと広げようとしました」


「まあ、ありそうだね」


「はい」


また小さく頷く。


「でも、その途中で一つの国が古代魔法陣を開発しました。」


「それがさっきの?」


リオが聞く。


「はい。古代魔法陣は簡単に言うと」


本の図を指さす。


「普通の魔法陣...現代の魔法陣は昔のものとは全くの別物で、現代の魔法陣は自分の中の魔力を使います」


「うん」


「それに対して古代魔法の魔法陣は、“外に描いた魔法陣”を使います」


「外?」


「はい」


ヘスティアは円をなぞる。


「魔法陣に魔力を流すと、大きな魔法が出せます…その分、制御が難しいです」


「暴走する?」


「はい」


短く頷く。


「古代魔法陣は開発されていくうちに、その力は強大なものとなり、いよいよ国の戦争を終わらせられるほどの力を持つようになりました。」


「すごい」


「でも、古代魔法陣は力が強くなればなるほど生贄を必要としました。」


「...生贄?」


「はい。古代魔法陣は人間を生贄にして、魔法陣に魔力を直接流すのです。だから国の中でも意見が割れました。戦争に勝つために開発を続けるのか、古代魔法陣の研究をやめるのか」


「で、その戦争どうなったの?」


「……自滅しました。」


「自滅」


「魔法陣が強大になりすぎ人間の手に負えなくなって爆発。周辺の国もろともなくなったとされています。そんな中、今の国王の先祖...光の使い手が生き残り、他の大陸の力を借りて今の私たちの国を作り直したとされています。」


「だから今は古代魔法陣...人間を生贄にする魔法陣は禁忌魔法のひとつとして認識されるようになりました。それから」


ヘスティアは僕たちの大陸を指差す。


「私たちのいる大陸はとても大きいので、爆発した当時もいくつかの国は残りました。でも戦争を重ねるうちにだんだん冷戦状態になっています。...昔からやっぱり周辺諸国との小さな戦争は何度かあります。リーバ先生も戦で功績をあげていることで有名です。」


「リーバ先生も?」


「はい。そして今は...私たちの国は周辺諸国とは冷戦状態で、他の各大陸と私たちの国とは“互いを侵略しない”という協定を結んでいます」


「へえ」


「この国の悲劇を他の大陸でさせないためだとか、国を作り直すときにとてもお世話になったから頭があがらない、とか...」


「じゃあ、今はけっこう平和だね」


「はい」


少しだけ間。


「……表向きは」


小さく付け足す。


「?」


リオは気づかない。

ヘスティアが静かに言う。


「古代魔法陣の開発に積極的だった一部の人々が生き残り、今でもその意志が引き継がれた組織があると噂されています。その組織は...教団と言われています。」


「教団」


「今でも禁忌魔法を使い、国をのっとろうとしているらしいです。」


「それ、ほんと?」


「.....」


ヘスティアはリオには聞こえない声で呟く。


「...それを見つけるのが私の使命だから...」

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