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第五十三話 期限の3週間目

3週間目。

訓練場にてテティスを中央にAクラスのみんなが揃っていた。


「自分の好きなタイミングで始めていいぞ。今日できなかったら...わかってるな。」


「はい。」


リーバ先生が言う。

テティスが前に出る。

一歩。足が少しだけ重い。


テティスは思う。


大丈夫。


手のひらを見る。


みんなについていくんじゃない。自分でやるんだ。


ゆっくり、手を出す。

水が現れる。

最初は、いつもの形。

綺麗な球。

しばらくそれを見ていたリーバ先生が何かを言いかけた。


「……テティス。これでは何も変わって」


「待ってください!」


テティスはリーバ先生の言葉を遮るようにいった。

そう。これではだめ。

前と同じなんだ。


「待ってください...もう少しだけ、待ってください...」


リーバ先生は何も言わなかったが、その代わりにじっと待ってくれたようだった。


テティスは一瞬、昔の自分がよぎった。


ここで止めれば、きっと安全。


でも。違う。


息を吸う。


私は...



ほんの少しだけ、力を込める。水が揺れ、ぐにゃり、と歪む。

ざわ、と周囲が少し動く。

でも、止めない。


崩れてもいい、これは、私が決めた形。



水は完全な球じゃない。

歪で、不均一で、流れ続けている。

でも——“ある”

中で動きながら、ちゃんと存在している。


それから半分にして形を保ち続ける。

歪な球は、歪な形をしていても、その形は保たれたままだった。


「……」


静寂。

リーバ先生がさらに一歩前に出て少しの間じっと見る。

水を、そしてテティスを。


「……」



やがて、


「——合格だ」


短く。でも、はっきりと伝えた。


「……っ」


テティスの肩が、わずかに震える。


「形は歪だ」


リーバ先生が続ける。


「だが、ようやく“中身”がある。魔法は見た目じゃない。お前はやっとそこに立った」


「……はい」


小さく、でもちゃんと返事をする。


「よく頑張ったな」


リーバ先生はテティスの頭にぽんっと手をのせて笑った。


テティスは顔を上げた。

そして視線の先に...リオがいた。

目が合う。


リオは、いつも通りの顔でにっこりしながら


「よかったね」


軽く言う。

その一言で胸の奥がじんわり熱くなる。


「……うん」


小さく笑う。

今までみたいな誰かに合わせた笑顔じゃない。

テティスはちゃんと、


“自分で選んだあと”の顔で笑った。

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