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第五十話 テティス・フォンティーヌ

6大貴族の中でも、特に私には才能がなかった。

でも、みんなそれぞれ才能があった。


みんなで始めたことも

次の日にはすぐに追いてかれた。


勉強も、魔法も、遊びも、私だけが昨日と同じ。

みんなはどんどん前に進む。


だから私は笑って明るくしていないとその枠からはみ出る存在だった。


私はいつもひっそり、練習してた。

すぐに置いていかれるのは分かってる

でも空気を壊したくないから笑う

笑っていないと、その輪にはいられなくて...



やりたいことも、譲れないものも、これがいいっていうのも、何もない。

だから、笑いながらいつもみんなに合わせた。


誰かがやるって言えば、

「うん、やろう」って言って、

誰かが笑えば、一緒に笑って、

誰かが止まれば、そこで止まった。


楽だった。

自分で決めなくていいから。

間違えなくていいから。

置いていかれないから。


「テティスは優しいね」

「いい子だね」


そう言われるたびにちょっとだけ安心した。

ああ、これでいいんだって。


でも、ある日みんなで帰ってるとき少しだけ意見が分かれた。


どっちに行くか、何をするか、ほんとにどうでもいいこと


でも、みんなは、それぞれ言った。

「俺はこっち」

「私はこっちがいい」

「別にどっちでもいいけど、強いて言うならこっち」

「……」


私は、

何も言えなかった。


どっちがいいんだろう。分からない。

どっちでもいい。本当に。


「テティスは?」


誰かに聞かれる。


「……」


口を開く。


「……みんなと同じでいいよ」


その瞬間。

なんとなく、分かった。


あ、私、自分の意見がないんだ。


みんなは、同じ場所にいるのにちゃんと“自分”があって、その上で選んでる。

私は——


何もないから、合わせてるだけ


胸の奥が、少しだけ冷たくなる。

でも、すぐに笑う。


「そっち行こ」


それで終わり。

それ以上、考えなかった。考えても、何も出てこないし。


そうしてるうちにいつの間にか、自分が空っぽになった。


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