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第四十九話 テティス・フォンティーヌ

「...リオ」


テティスは溢れ出た涙を急いで拭いて、なんでもないように答えた。


「お疲れ様。ちょっと休憩しようよ。これ、あげる。飲んで。」


そう言ってリオがポケットを探り、小さな瓶を差し出した。

中には淡い水色の液体。

炭酸の泡がふわふわ浮いていて、

まるで小さな精霊みたいに揺れている。

その光は何色にも色付いていて、とても幻想的だ。



「さっき売店で買ったやつ。“スピリットソーダ“って言うんだって。なんか、可愛いし綺麗だったから。」


テティスが少し笑う。


「綺麗?」


「うん。なんか、テティスっぽいかなって」


リオにとって特に深い意味はない顔だ。


綺麗...

その言葉にテティスの目から涙がどんどん溢れる。


「えっ?なんか僕、悪いこと言っちゃったかな?」


リオは大焦り。

森育ちだったから、このドリンクは初めて見た。

安物すぎて失礼だったとか?


「ううん、ありがと。でもね、リオ。私、そんな綺麗じゃないよ。」


「え?」


「ちょっと、あっちに座ろ」


2人は訓練場の隅に座る。

リオは自分の分のスピリットソーダとやらを口に含む。

あ、美味しい。

甘くてシュワシュワしていた。

テティスが遠くを見ながらリオにといかける。


「ねぇ、リオ。6大貴族って知ってる?」

「ごめん、僕あんまり詳しくなくて...」


ヴァルクの家にも歴史書はあったが正直目を通すことはほとんどなかった。ヴァルクとずっと森の中に住むと思ってたからだ。だからリオはあまりこの国の歴史については詳しくない。



テティスは丁寧に説明してくれた。


「この国はね、王様がいるでしょ。」


うん、それくらいは知ってる。なんとなくだけど。


「その下に貴族がいてね。たくさんの貴族をまとめてるのが6大貴族なの。6大貴族は王家を中心として火、水、風、土、雷、闇...特にその力に特化し続けた強い一族がつかえてるの。

...ライルも、サナも、ガイアも、レオも...私もみんなその6大貴族なんだ」


「え」


リオは思わ吹き出しそうになる。


「やっぱ、知らなかったか」


テティスは少し無邪気に笑う。


「だって、他の人は私たちを見ると、だいたい驚いたり敬語になるもん」


「ごめん、僕平民出身だから...何も知らなくて、失礼だった」


僕は心の中で思う。

じゃあ、ライルは6大貴族の養子になったのか。



テティスは続ける。


「ううん、違うの。いいの。」


「だからね、Aクラスのリオ以外の人はみんな小さい頃から一緒だったの。」


「ミュシャと、ヘスティアも6大貴族なの?」


「ううん、2人は違うよ。ヘスティアは...いつも...ライルの後ろをくっついてたんだ。ほら、2人は火の家系でしょ?ミュシャは気づいたらいた。それでいつの間にか遊ぶようになって...」


テティスは目を細める。

そう、私たちはいつの間にか遊ぶようになった...。




--------------

そう、リオ以外のAクラスは昔からみんな一緒だった。


特別な約束があったわけでも、強い絆があったわけでもない。


ただ——

気づいたら、環境が似ているからか、いつも同じ場所にいた。


誰かが魔法の練習を始めればなんとなく集まって、

なんとなく一緒にやって、なんとなく笑ってた。


「見て、できた」


誰かが言う。

火だったり、風だったり、雷だったり。

それぞれ違うのに、

ちゃんと“その人の魔法”だった。


ガイアは雑だけど力強くて、

サナは適当なのにちゃんとできてて、

ライルは何度も繰り返して完成させて、

ミュシャは最初から完成してて、

レオは静かに“そこにある”感じで、

アリアとヘスティアは小さいけど確かに“芯”があった。


「……」


私は、それを見てた。


「テティスもやってみたら?」


ガイアに言われて、


「うん」


って笑って手を出す。


水が出る。

綺麗な球。

透明で、きらきらしてて、

見た目だけなら、誰よりも“それっぽい”。


「おー、綺麗じゃん」


ガイアが言う。


「でしょ?」


私は笑う。でも、ぽつりと誰かが言う。


「……軽いな」


誰だったかは、覚えてない。

でもその言葉だけ、残ってる。 


「軽い?」


聞き返すと、


「なんか、中がない感じ」


そんな風に言われた。


「……」


私はもう一度、自分の水を見る。

綺麗。

でも。

中……?よく分からない。

周りを見る。

みんなの魔法。

火も、風も、土も、雷も。

どれも、“ちゃんとそこにある”感じがする。


私のは——

なんとなく、そこにあるだけ。


「まぁでも綺麗だしな」


ガイアが笑う。


「うん、見た目はいい」


誰かが言う。


「……そっか」


私は笑う。その時、なんとなく思った。



ああ、この水、ほんとに私そっくり。





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