第四十八話 テティス・フォンティーヌ
それから何日か経った。
日中は皆、この練習をみっちりしていた。
そうしているうちにAクラスの制服が届いた。
どうやらクラスで制服が違うらしい。
白を基調とした制服。金のラインが入った重厚感のある制服。
袖を通したリオはそわそわしていた。
そして人がいなくなった放課後、テティスは一人、残って練習をしていた。
手のひらに水を出す。
いつも通り——綺麗な球。
透明で、歪みも少ない。
「……」
でも、分かる。
これじゃダメなんだよね...
そっと指で触れる。
——揺れる。
表面は整ってるのに、中がぶれる。
「……はぁ」
小さく息を吐く。
どうすればいいのか、分からない。
次の日の放課後も同じように手を出す。
「……中身。」
意識してみる。
水の“中”に触れるイメージ。
ぐにゃり、と歪む。
「……あ」
崩れる。
水がぽた、と落ちる。
「……また」
少しだけ、悔しそうに笑う。
そうして何度も繰り返しあっという間に2週間が経った。
その頃には授業中に合格してなかった他のみんなが次々と合格、と言われるようになった。
そして、あと5日。とうとうテティス以外の全員が合格した。テティスはおめでとう、と言いながらも心内心はすごく焦っていた。
綺麗に出す 、崩す 、崩れる
その繰り返し。
「……なんで」
ぽつりと呟く。
今まで通りなら、できるのに
“綺麗に出す”だけなら完璧。
でも——
それじゃ意味ない。
分かっている。
でも体がそっちに戻る。
周辺の木々が風で揺れる。
「まだやってんのか」
ガイアがやってきて声をかける。
「……うん」
「真面目だな」
「そうかな」
笑うけど、その笑顔に少し疲れが見える。
「できそうか?」
「……全然」
正直に言う。
「そっか」
ガイアは隣に座る。
「まぁ、焦んなよ」
「……うん」
でも、焦ってる。あと5日しかない。
分かってる。
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あと、2日。
一人、夕焼け。
手を出す。
水を出す。
中身を意識する。
ぐにゃり、と歪む。
「……っ」
今度は無理やり維持しようと圧をかける。
——弾ける。
水が飛び散る。
「……!」
びしゃ、と自分にかかる。
沈黙。
「……もうやだ」
ぽつり。そのまま地面に崩れ落ちる。
「できない」
「やっぱり私、ダメなんだ」
「...ずっとそうだし」
笑おうとして、できない。
そう、昔から、そうだった。
私だけ、できない...
一筋の涙が頬をつたい、地面に落ちたとき、後ろから声がした。
「大丈夫?」
同時に、テティスの濡れた身体に温かい風が吹き、すぐに服が乾いた。
そこにいたのはリオだった。




