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第四十四話 Aクラス基礎訓練

次の日の訓練場。

石造りの広い空間。

朝の光が差し込む中——


「集まってるな?」


低く、よく通る声。

リーバ・ボレアス先生。

颯爽と歩いてくる先生は今日は長い髪を後ろでまとめている。

昨日も思ったけど、胸がとても強調されています。

でもそれをはるかに超える圧倒的な威圧感。

下手したら殺される勢いだ。


リーバ先生はざっと全員を見渡す。


「お前らはAクラス。つまり——“できる前提”で扱う」

「できねぇやつは、できるまでやれ。それだけだ」


ニヤッと笑う。


「シンプルだろ?」


リーバ先生がその場の空気を軽くする気があったのかどうかはわからないけど、明らかにその場の空気は凍った。


「今日は基礎だ。基礎中の基礎。魔力制御の練習をする。」


その一言で、空気が締まった。


そんな中僕は安心して胸を撫で下ろした。

魔力制御は僕が最初にヴァルクから教えてもらったやつ。

よかった、基礎中の基礎で。


僕がほっとしていると隣にいたライルがボソッと呟いた


「...はっ、いきなりこれか」




---------------------------

「いいか」


リーバ先生が続ける


「魔力と魔法の違い言葉で説明できるか?」


「……」


誰も答えない。


「まあいい」


リーバ先生は肩を回す。


「簡単に言うぞ」


一歩前に出る。


「魔力ってのはな——」

少し考えて、


「水だ」


「……水?」


ガイアが眉をひそめる。


「ああ。そこに“あるもの”だ。溜まってて、流れてて、触れることはできる。でも、それだけじゃ何も起きねぇ。ただの水だ」


少し間を置いて、


「で、魔法は——」


指を軽く鳴らす。


「“水の使い方”だ。形を変えるのか、流すのか、押し出すのか。どう扱うかで、意味が変わる」


「……」


リーバの目が、一瞬だけテティスを見る。

その視線にテティス本人だけが気づく。


「中身がないって言われるやつでも魔法は出せる。でも、“どう使うか”がない。だから空っぽに見える」


テティスがわずかに反応する。


「もう一個言うぞ。魔力は“素材”、魔法は“料理”だ。素材が良くても、使い方が下手なら不味い。逆に、素材が普通でも、使い方で化ける」


ニヤッと笑う。


「で、お前らは今、素材だけ持って、ドヤってる状態だ」


数人が顔をしかめる。


「見せてやる」


リーバが手を上げる。


空気が、ピリッと張る。


「まずは魔力だけだ」


周囲の空気が揺れる。

目には見えないけど、“圧”がある。


「これが魔力」


何も起きていない。

でも、確かに“ある”。


「で、ここから——」


指先をわずかに動かす。

瞬間。

風が生まれる。

だが、それだけじゃない。

風は渦を巻き、一点に集まり、圧縮され、塊になる。


「これが魔法だ」


さらに、その塊が一瞬で拡散する。

衝撃波。

でも、誰にも当たらない。

寸分違わず制御されている。



「……」


誰も声を出さない。



「いいか」


ゆっくり見回す。


「魔力は“あるだけ”じゃ意味がねぇ。魔法は“どう使うか”だ。そして——それを決めるのは、“お前ら自身”だ」




「手を出せ」


全員が手のひらを前に出す。


「魔力を出せ。それから魔法をのせろ。ただし——」


指を一本立てる。


「“同じ量”を保て。揺らすな、増やすな、減らすな。それができねぇやつは、魔法を使う資格はねぇ」


ピリ、と空気が張る。


「始めろ」


次々に魔力が灯り、魔力に魔法をのせる。


水、火、風、土。


だが——


「ガイア」

「おう?」

「揺れてる」

「マジかよ」

「力任せだ。押さえつけてるだけ」


バッサリ。 


「土は安定が強みだろ。なのにお前が不安定でどうする」

「……っ」 


言い返せない。


「テティス」

「は、はい!」

「綺麗だな」


ぱっと顔が明るくなる。


「だが“見せ物”だ」

「えっ」

「整ってるだけで中身が軽い」 


容赦ない。


「流れに任せすぎだ。自分で掴め」

「……はい」


しょんぼりする。


「サナ」

「んー?」

「雑」

「だろうな」 


即答。


「整える気がない」

「めんどいし」

「舐めてるな」 


だが、少しだけ口元が上がる。


「できるのにやらないのが一番タチ悪い」

「はは」

サナは笑うだけ。



「ライル」

「……」

「安定してる」

短く評価。

「だが、固い」

「……」

「崩れないが、広がらない」

鋭く見抜く。

「“正解”に縛られてる」

わずかに、ライルの目が揺れる。


「ミュシャ」

「……何」

淡々とした声。

彼女の手のひらには、雷。

だが——

動かない。

普通なら弾けるはずの電光が、

完全に“止まっている”。

「……」

リーヴァが一瞬だけ見る。

「安定してるな」

短い評価。

「当然」


「レオ」

「……」

闇。

だがそれは——

“見えない”。

そこにあるはずなのに、感じ取りにくい。


「……ほう」

リーバ先生が少しだけ興味を示す。


「消してるのか?」

「馴染ませているだけだ」


短い返答。


「存在を薄くしてるな」


的確に言い当てる。


「悪くない。だが“逃げ”だ」

「……」

「見せることから逃げてる」


レオは何も言わない。

ただ、わずかに視線が動く。


「戦うなら、“ある”ことを認識させろ」

「……」


沈黙。

だが、わずかに変化。

闇がほんの少しだけ“輪郭”を持つ。



「アリア」

「はい」

「綺麗な光だな。...だが小さい。」


アリアは何も言わない。



「ヘスティア」

「……はい」


彼女も小さな火。

安定している。

だが——

弱い。


「抑えてるな」


一言。


「……」


返事はない。


「全力出せ」

「……できません」

「なぜだ」


沈黙。

リーバはそれ以上は踏み込まない。


「だがここが戦場だったら死ぬぞ」


一言だけ残す。



そして——


「リオ」

「え、はい」


手のひらに魔力を出す。

自然に。

揺れない。

完璧に、一定。

一瞬、沈黙。


「……」


リーバ先生の目が細くなる。


「……合格だな」


それだけ言う。

リオは首を傾げる。


「え、もう?」

「文句あるか?」

「いや、ないですけど……」


だって、これ、基礎中の基礎だよね?



基礎中の基礎、と思っているこの訓練。

普通の人なら卒業までにできるかどうかの技術。

本人がそれを気づくのはもっと後のことだった。




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