第四十二話 王立魔法学院寮制度
ご飯を食べた後、僕たちはテティスと別れて寮の部屋に向かって歩いていた。
王立魔法学院は全寮制だ。
魔法は日常の延長であり、戦闘の延長でもある。ゆえに——生活もまた“教育”の一部とする
という理由らしい。
寮は三階建て。男女で棟は分かれている。
一部屋あたり二名、もしくは三名、部屋割りは学院側で決定する。
僕は実はこれを聞かされたときはとても楽しみで、同時にとても緊張していた。なぜなら孤児院では友達がいなかったから。
仲良く、できるのだろうか...。
ガイアが小さく呟く。
「勝手に決められるのかよ……」
ガイアはブツブツ文句を言っていた。それに対してサナが言う。
「でも、実力、相性、適正、全部考慮して決めてるらしいよ?」
「じゃあ、俺とサナ、一緒の部屋じゃん。」
サナは
「そうだといいね、なんでもいいけど。」
と軽くあしらった。
■男子寮・廊下
木の床。
高い天井。
等間隔に並ぶ扉。
「お、あった」
ガイアがたくさんの部屋を急いで見てまわり、部屋の前に張り出されていた名前を見ながら勢いよく扉を開けた!
「……ここだっ!お、広っ」
中は三人部屋。
ベッドが三つ、机、簡易な収納。
「俺もここか。302号室」
後ろから、サナ。
「……あ、僕も」
リオが続く。
「みんな一緒じゃん」
ガイアが笑う。
「なんか安心したわ」
その時、一拍遅れて、ライルが入ってくる。それを見てガイアが言う。
「は?三人部屋じゃねぇのかよ」
ライルは言う。
「……一人多い。ガイア、お前部屋間違ってる。隣だ。」
サナが少し考えて言う。
「やっぱり?ガイアの名前ないと思ったから変だと思った。まぁいいんじゃね」
「いや良くねぇだろ」
ライルがツッコむ。ガイアが悲しそうに言う。
「えぇ〜、めっちゃいいメンバーだったのに〜」
ライルは少し困った顔で言う。
「なんかごめん。てか隣と間違えるか普通」
結果【男子寮302号室】
リオ
ライル
サナ
「なんか俺だけ除け者じゃね?」
ガイアが少し寂しそうに言う。
「隣だろ、たぶん」
サナが適当に返す。
「すぐ来れる距離だろ」
「まぁな」
少し安心する。
■男子寮・別室
「……ここか」
ガイアが扉を開ける。
「303」
中には、すでに一人黒髪の少年、レオがいた。
「……」
視線だけが向く。
「お、同室か?」
ガイアが軽く言う。
「……ああ」
短い返事。
「2人部屋、落ち着くな!いいな!よろしくな〜!」
「……よろしく」
少し間が空く。
ほんと静かだな、こいつ。
ガイアはそう思うが、深くは気にしない。
【男子寮303号室】
ガイア
レオ
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■女子寮
【女子寮201号室】
テティスが勢いよく扉を開ける。
「わー!広い!」
中にはすでに一人、金色の髪、アリアがいた。彼女は静かに言った。
「よろしくね」
「よろしくー!」
対照的な二人だが、どちらも優しそうな雰囲気だ。
【女子寮202号室】
静かな部屋。窓を開けながら薄紫の髪をなびかせ、ミュシャが窓際に座っている。
「……」
扉が開く。
たくさんの本をよろよろと持ちながらヘスティアが入る。
「……ここで合ってる?」
「ええ」
短い会話。それだけ。
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■男子寮302号室・夜
荷物を置き終えたあとガイアがいなくなって三人だけになったら少し静かになった。
リオはベッドに座りながら、部屋を見渡す。
「なんか……不思議だね」
「何がだ」
ライルが聞く。
「こういうの」
少し笑う。
「みんなで同じ部屋でわいわいするの。」
一瞬。ライルの手が止まる。
サナは気にせず言う。
「今までなかったのか?」
「...僕、孤児院育ちなんだ。そのあとヴァルクって人に育てられたけど孤児院ではあんまり友達いなかったから……」
言葉を濁す。
孤児院はもっと大部屋でみんなで寝ていた。
でも、誰とも話すことはなかった。
ライルは何も言わなかった。
「まぁ、いいんじゃね」
サナが横になる。
「屋根あって、飯出て、同じ年の奴らと寝起きすんの、たぶん今しかできない経験。」
「それはそう」
リオが少し笑う。少し、空気が柔らぐ。
その中で——
ライルだけが、静かにリオを見る。
……こいつと、同室か
昼の会話がよぎる。
“全部使える”そして、“自覚がない”
最悪だな
小さく、息を吐く。
だが——
目を閉じる。
逃げ場はねぇむしろ、好都合。
近くで見れる。そして——いつか潰してやる。
ライルの心に小さく火が灯った。
■廊下(同時刻)
静かに歩く影。全身黒ずくめのレオが隣の302号室の前で足を止めていた。
ここか
中からかすかな声。
笑い声。日常。
レオはしばらく、動かない。
そして——
「観察対象、近距離」
そのまま音もなく通り過ぎていった。




