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第十八話 剣の手本(1)

翌朝、森はまだ霧に包まれていた。

僕は昨日と同じ場所に立つ。

手には小枝。そして、深く息を吸う。


「……火」


小枝の先に小さな炎が灯る。

ゆらゆら揺れる。でも、消えない。

大きくもならない。僕はしばらくそれを見つめていた。昨日まで一年できなかった炎。それが今、当たり前のようにそこにある。


「……すごい」


思わず呟く。その時、後ろから声がした。


「それで終わりか」


振り向くとヴァルクが腕を組み、こちらを見ている。


「え?」


ヴァルクは小枝の炎を見て言う。


「それは入口だ」


「え?」


「魔法は出せるだけでは意味がない」


僕は首を傾げる。


ヴァルクは地面に落ちていた石を一つ拾った。そして僕に投げる。


「うわっ」


僕は慌てて避け、石は地面に転がる。ヴァルクは言う。


「戦いでは相手は動く」


「……」


「考える時間もない。ついてこい。」


ヴァルクは家の方へ歩いていく。僕は慌てて後を追う。


「次の修行を教える」


家の裏には倉庫のような小屋がある。ヴァルクはそこから一本の剣を取り出した。鉄の剣。少し古いけど、しっかりしている。


「え」


ヴァルクはそれを僕に投げた。僕は慌てて受け取る。


「お、おもい……」


剣なんて持ったことがない。ヴァルクは言う。


「振れ」


「え?」


「魔導士でも剣は使う」


僕は剣を見る。


「でも僕、魔法の修行を……」


ヴァルクは言う。


「魔法は時間がかかる」


「……」


「...詠唱、集中、魔力」


そして短く言った。


「その間に死ぬ」


僕は黙る。ヴァルクは続ける。


「だから近距離は剣だ。そして魔法を乗せる」


僕は驚く。


「魔法を……?」


ヴァルクは木を指差す。


「斬れ」


「え?」


「その木だ」


見ると太い木が立っている。僕は恐る恐る剣を構える。


「……はっ」


ブン


剣が空を切る。


カン


剣は弱々しく木に当たったが、ほとんど傷はついていない。ヴァルクは言う。


「火を乗せろ」


僕は驚く。


「え?」


「剣に炎を流す」


僕は言われた通りやってみる。剣を持ち、魔力を流す。


「……火」


ボッ


剣の先に炎が出た。僕はびっくりして振る。


ブンッ

ドン!

木の表面が焼けた。


「うわっ!」


僕は驚いて剣を落としそうになる。

ヴァルクは静かに言った。


「それだ」


僕は木を見る。焦げた跡がついている。さっきより強い。ヴァルクは続けて言う。


「魔法は遠距離、剣は近距離。強くなりたいんなら両方使え」


僕は剣を握り直す。


「……はい」


その時だった。森の奥から

ガサッ

音がした。

僕は振り向く。


「……?」


茂みが揺れる。低い唸り声。

グルルル……

何かいる。ヴァルクはゆっくり振り向いた。

その目が鋭くなる。


「……来たか」


僕は聞く。


「な、何ですか?」


ヴァルクは短く言った。


「魔物だ。さっき結界を少し弱めた。」


僕の心臓がドクンと鳴る。

ヴァルクは自分の剣を抜いた。

その動きは静かで無駄がなかった。


「リオ」


「は、はい!」


ヴァルクは言う。


「よく見ていろ」


森の奥の影が動く。紫

の目の大きな体が低い唸り声をあげている。


僕の初めての実戦が始まろうとしていた。

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