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第十七話 1年の炎(2)
僕は小枝を持ち直し、今までと違うことをする。
炎を故意に出そうとしない。ただ、赤い魔力をそっと流す。
「……火」
小さな炎が生まれる。ゆらゆら揺れる。
僕は息を止める。
大きくなるな。
消えるな。
ただそこにいろ。
炎は――
揺れた。
でも、消えない。大きくもならない。
小枝の先で静かに燃えている。
「……」
僕は目を見開いた。
「……できた」
そのとき、後ろから声がした。
「遅い」
振り向くとヴァルクが立っていた。
「え」
ヴァルクは炎を見る。
「一年だ」
僕は苦笑する。
「すみません」
ヴァルクは小さく息を吐くが、その目は少しだけ柔らかかった。
「……まあいい」
そう言って家の方へ歩き出す。僕は炎を見る。
小枝の先で小さな炎が揺れている。
一年。
ずっとできなかった炎。
それが今静かに燃えている。
できた。できた。できた...!!
胸が熱くなった。
森の夜風が吹く。
その炎は消えずに揺れていた。
僕はその炎を眠くなるまでずっと見ていた。




