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第十六話 1年の炎(1)

循環の森に来てから一年が経った。

春が来て、夏が過ぎ、秋の落ち葉が森を埋め、そしてまた春が近づいている。それでも――


「……火」


小枝の先に炎を灯す。

ボッ

炎は一瞬で大きくなり、小枝ごと燃え尽きた。


「……はぁ」


僕は肩を落とす。また失敗だ。

地面には燃え尽きた小枝の灰が山のように積まれている。一年。毎日この修行を続けている。

それでも、まだできない。後ろから声がした。


「焦るな」


振り向くとヴァルクが立っていた。相変わらず無表情だ。僕は慌てて立ち上がる。


「す、すみません」


ヴァルクは小枝の灰の山を見る。


「……一年か」


僕は少し笑った。


「才能ないですよね」


ヴァルクは首を振る。


「逆だ」


「え?」


「ありすぎる」


僕は苦笑する。


「それ、褒めてます?」


ヴァルクは答えず、ただ言う。


「やれ」


それだけだった。僕はまた小枝を拾う。


「……火」


炎が出る。また暴れる。

パチッ

小枝が燃え落ちた。ヴァルクはそれ以上何も言わず家へ戻っていった。森は静かだった。

僕はしばらく炎の練習を続けたけれど、夕方になる頃には腕も頭も疲れていた。


「……今日はこのくらいにしよう」


家に戻る。ヴァルクの家は、正直に言って最初に来たときは古くて少し怖かったけれど、今ではもう慣れてしまった。なんなら心地良い空間だ。

僕は台所に立つ。


「えーっと……」


鍋に水を入れ、野菜を切る。……いまだに切り方がよく分からない。


「こんな感じかな」


形がバラバラだが、気にせず鍋に入れる。しばらくするといい匂いがしてきた。たぶん。

そのときドアが開く。ヴァルクはいつの間にか森で狩りをしていたようだ。

手には森で採ったらしい獣肉がぶら下がっている。


「おかえりなさい。えっと、今日はシチューです。」


ヴァルクは鍋を見て少し沈黙する。


「……今日は食えるのか」


「多分!」


僕は胸を張った。食卓に料理を並べる。具材が歪なシチューと少し焦げたパン。ヴァルクは無言で座り、シチューを一口食べる。僕はこの瞬間、いつもドキドキする。


「……どうですか」


ヴァルクは少し考えて言った。


「死にはしない」


「それって褒めてます?」


「事実だ」


僕は苦笑した。


こういう生活が続いている。

朝は修行。昼も修行。夜はご飯を作る。

ヴァルクは無口だけど、たまに狩りをして肉を持って帰ってくる。そして夜になると、本を読んでいることが多い。魔法の本や古い研究書。時々、難しい顔をして何かを書いているが僕が覗くとすぐ閉じる。


その日の夜、僕はまた外に出た。空には星が広がっている。森は静かだ。僕は小枝を持つ。


一年。


できなかった炎。

どうしてうまくいかないんだろう。

ライルは今の僕よりも幼い年で、あんなに上手に火を操っていたのに...


悔しいのと悲しいのとで感情が行き来している時、森の葉の隙間から月の光が落ち、地面に小さな光が揺れる。でも、消えない。揺れているのに消えない。


「……あ」

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