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崩壊した世界でみんなで楽しく生きていく〜サバイバル〜  作者: 伊右衛門


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覚醒編9

○「あっ」

ベッドに横たわった優子さんが声を上げる。

「どうしたの?」

まだ、触ってないんだが?

「帰ったきたみたいだよ」

微笑む優子さんの長い耳がピクピク動いている。


そのまま二人で待っていると玄関の方が騒がしくなってきた。


バタンッ!

寝室の扉が物凄い勢いで開く。


「真人さん!」

慌ただしく寝室の扉を開けた香織さんがオレ目掛けて飛び込んできた。

ダイブする香織さんをがっちり受け止める。

抱き締めた香織さんの肢体からいい匂いがする。


あ~、香織さんの匂いだ。

香織さんの首筋辺りに顔を埋めくんくん匂いを嗅ぐ。

香織さんの肌から立ち上る甘酸っぱい匂いを肺一杯に吸い込む。


「香織、靴、靴」

優子さんが慌てて香織さんの靴を脱がす。


オレの帰還を知った香織さんは靴も脱がずに一目散に寝室に飛び込んできたのだ。

迷いもせずに寝室に向かったのはさすが香織さん。

オレの行動パターンを理解している。


「優子さん、ずるいです」

オレに抱き付いたままで香織さんが優子さんに苦情を言う。

「ごめん、我慢出来なくなって。香織、脚上げて」

優子さんは苦笑しながら香織さんの靴を脱がしていく。

「わたしが帰るまで待っててくださいよ」

「はい、はい。香織、脚動かさないで」

香織さんがオレに抱き付いたまま動く気配が無いので優子さんが香織さんのブーツを脱がしていく。


「もう、始まってたんですか?」

優子さんに靴を脱がしてもらった香織さんはようやくオレに廻した両手を離した。

「う~ん、一応まだかな?」

脱がしたブーツをベッドの脇に片付けながら優子さんが答える。

「一応?あっ!」

「きゃっ」

香織さんが優子さんを抱き寄せて口に顔を近づける。


「香織、近い、近いよ」

顔をがっちり捕まれた優子さんが逃れようとするが香織さんはどんどん近づいていく。


「落ち着いて、香織。取り合えず落ち着こう」

どうどうと優子さんが香織さんを宥めるが香織さんはますます優子さんに顔を近づけていく。


「にゅきゅ」

ついには香織さんは優子さんのくちびるに吸い付いた。


「ん〜、ん〜」

優子さんがじたばたするが香織さんは吸い付くのをやめない。


面白いのでもう少し見ていたいが優子さんは妊娠中の身だ。

「香織さん、ストップ」

吸い付いた香織さんを優子さんから剥がす。


ずぽんと音がしそうな勢いで香織さんの唇がようやく優子さんから離れる。


「もう、いきなりなにするのよ」

口を拭いながら優子さんが香織さんの額をぺちんと叩く。


「真人さんのを独占した優子さんが悪いんです」


オレに抱えられたまま香織さんがなおも優子さんに手を伸ばす。

「諸悪の根源ははすぐそこにあるじゃない」


「もう、無いもん」

「まだ、そこはかとなく風味が残ってます」

「風味ってなに!?」

「ソムリエには解るんです」

「ソムリエってなに!?」


ベッドの上できゃわきゃわ騒ぐ二人を見る。

どうもかなり混乱してるみたいだな。


「あんっ」

香織さんを後ろからギュッと抱きしめる。

そのまま、しばらく抱きしめていると香織さんの肢体から徐々に力が抜けてきた。


「た、助かった。真人、ありがと」

「どういたしまして」

原因はオレだしね。

香織さんが戻ってくる事は分かってたんだから待つべきだったな。


「ごめんね」

抱きしめながら香織さんの耳元にささやく。


「いえ、あんっ、少し、混乱、うっ、してしまって」

時おり、肢体を痙攣させながら香織さんが許してくれた。

めでたし、めでたしだな。


香織さんの呼吸が少し乱れているのは抱きしめすぎているんじゃなく、オレの勤勉な両手が疲れて帰ってきた香織さんを優しくマッサージしているからだ。


どこをマッサージしているかは内緒だ。


「いつもはすぐなのにどうしたの?」

シーツで肢体を覆いながら優子さんが首を傾げる。


「なんか我慢出来ずに新妻を襲ってるみたいで燃えるんだよね」

「新妻、いい響きです」

その言葉で香織さんの顔がうっとりと蕩ける。


いや、間違いなく二人とも新妻なんだよ。

忘れないで欲しいなぁ。


香織さんをマッサージしていると優子さんがオレに抱きついてきた。

「ん〜。真人。私も!」

「もちろん。喜んで」


二人の全身をじっくり入念にマッサージしていたら二人とも息も絶え絶えになってしまった。


これは危険だ。夫として二人を全力で介抱しなくては!



★わたしが意識を取り戻した時に見た光景は優子さんに怒られる愛しい人の姿だった。


え〜っと、昨日は帰ってきて優子さんと二人で真人さんからじっくりマッサージしてもらった事は覚えているけど、途中から記憶が無い。

どうやら、わたしは途中で意識を失ってしまったようだ。


「ご、ごめんなさい」

「あんなに激しくしたら二人とも壊れちゃうでしょ!」

怒り心頭の優子さんが彼の頭をぽかぽか叩いている。

わたしのブーツで・・・


えっと・・・


わたしは静かに瞳を閉じた。


ごめんなさい。

真剣に怒っている優子さんはわたしには止められません。


わたしは心地よい疲れと身体に残る甘い痛みを感じながら幸せな眠りに堕ちた。


真人さん、わたしは今、最高に幸せです。



○二人をじっくりと味わった翌日からオレは長旅の準備を始めた。


とりあえず、今回はかつての首都まで探索してみるつもりだ。


ギルド本部から旧首都まではおおよそ二十日程度の距離だが、途中にあると思われる集落や新生物の調査も行う予定なので、それ以上の日数が掛かるのは確実だ。

その長旅の為に必要な鎧を工房で新しく作って貰わなくてはいけない。


オレの持っている鎧は戦闘用の鎧なので普段から着込むには不都合な所もある。

鎧の重さはオレにとって大した負担にはならないが、歩くとガチャガチャ音がしてしまうし着たり脱いだりも一人ではしにくい。


そういった不都合な部分を改良した新式の鎧をこの機会に作る事になっている。

普段着として使える鎧だ。


・・・まさか鎧を普段着として考える事になる時代が来るとは想像もしなかったなぁ。


マスターたちと工房に向かいながら世界の移り変わりに内心、苦笑する。


急所(バイタル)は絶対に守らなくちゃいけないわね」

「だが、そうすると重くなるぞ」

「出来るだけ薄く作ったらどうかしら?}

「う~ん、そりゃ簡単に出来るがどれぐらい薄くすりゃあいい?余り薄くすると意味がねえし厚くしすぎるとやはり重くなるぜ」

「そうねぇ。近距離でボウガンの矢が防げるぐらいかしら?」

「だから近距離ってのはどれぐらいなんだよ?1メートルか?10メートルか?」

「間を取って5メートルにしましょ」

「5メートルだと鉄モグラの新素材を使っても厚みは1センチはいるな」

「それじゃ薄くはならないわね」

「ああ、これまでの鎧と大差無いな」

「難しいわねぇ」

「ああ、これは苦労するぜ」


マスターとおっさんがこれまで使用していた戦闘用の鎧を前に話し合っている。


玲子はそれを尻目に工房で飼われている新生物、鉄モグラに興味深々だ。


地中に住む哺乳類なのでモグラを呼んでいるがその姿はモグラとは似ても似つかない。

前腕はモグラのように土を掘り進むのに適した形になっているが身体は細長くなっておりシルエットとしてはモグラというよりイタチなどに近いように感じる。


「へえ、結構可愛い顔してるね」

「世話も簡単だし、かなり役に立ってくれる」

「こいつのうんちが新素材の材料になるんだよね」

「・・・老廃物を再利用してるんだ」


すっかりおっさんの一番弟子になっているアキラの説明によると、鉄モグラは基本的に磁石にくっつく鉄製品を好んで食べるそうだ。

どうやら体内に自前の磁石でもあるらしい。

そして食べた鉄をアキラの言うところの老廃物として排出する。

排出された老廃物は鉄では無くなんらかの合金に変化しているそうで磁石につかなくなる。

工房では捕獲した鉄モグラを飼育してその合金を採取している。


「その老廃物はかなり頑丈みたいだな?」

工房の隅に集められている老廃物をつついてみる。

特に匂いもしないし黒い塊なので言われなければ老廃物とは分からないだろう。


「ああ、溶かして固まるとより頑丈になる。問題は重さだ」

アキラによると重量比では鉄とほぼ同じだそうだ。

「そこまで望むのは都合が良すぎると分かってはいるんだけどね」

そう言ってアキラが肩をすくめる。


「結構、楽しそうにやってるみたいだな」

なんというかアキラの存在はこの工房にしっくり馴染んでいる。

「まあな」

アキラもそれを感じているのだろう。

以前より、表情が豊かだ。


「ここに攻めて来た時はこんな事になるなんて想像もしてなかった」

そういえばアキラはギルドを攻めて来たんだったな。

「そんな事、誰も気にしてないだろ?」

日々、様々な事が起きるので過去の事はさして気にならない。

そんな事もあったなって感じだ。

「あぁ、誰も気にしてないな」

そう言ってアキラは微笑んだ。


「それより、あれ、止めなくていいのか?」

アキラがマスターとおっさんをそっと指差す。


「部分鎧でいいって言ってるでしょ!」

「だから、そう簡単に鎧は出来ねえんだよ!」

話し合ってる間にヒートアップしたらしい。


関わりになりたくないから無視してたんだが、そろそろ限界みたいだな。

このままだと、おまえの母ちゃんでべそとか言いかねない。


「おっさん、新しく全部作るんじゃ無く、今出来上がってる鎧を改造するとしたらどれぐらいで出来る?」

後ろからマスターの口を押さえ、おっさんに聞いてみる。

「そうだな。それでも調整やサイズ合わせに二十日やそこらは掛かるぜ」

約3週間か・・・

「新しく作ったらどれぐらい掛かる?」

「全員の分となるとフル体制でも二ヶ月は掛かるな」

それなら簡単だ。

「今使ってる鎧を改造してくれ」

焦ってはいないが余りのんびりとする訳にもいかないだろう。


「いいのか?今、使ってる鎧は使えなくなるぜ?」

「ちょっと惜しいけど仕方ない」

結社とやらがどれぐらい勢力を広げてるのか気にはなる。


それから、各自、自分が使用している鎧を持ち込んで不要と思われる箇所をおっさんとアキラに伝える。


「腰から下は膝下以外全部いらない。腕も肘から先だけでいいんだけど少し分厚くしてくれと助かる」

アキラに不要な部分を細かく伝える。

「この部分はパーツを外すだけでいいから簡単だが腕は再加工が必要だ」

アキラがオレの鎧を確認しながら必要な作業をピックアップしていく。


「いっその事、腕だけは作っちまうか」

「その方が簡単かもしれませんね」

各自でピックアップされた作業をどう進めるかおっさんとアキラが話し合う。


「どれぐらいで出来る?」

おっさんは難しい顔で腕組みしながら全員の鎧を見ている。

「10日でなんとかしてやる」

おっさんの言葉を聞いてアキラが少し驚いている。

結構、無茶な日程なのだろう。


「大丈夫か?」

オレの言葉におっさんがにやりと笑う。

「任せとけ!」



本日はここまでとなります。

読んでいただきありがとうございます。

気に入ってくだされば幸いです。

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次回、投稿は明日の予定です。

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