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崩壊した世界でみんなで楽しく生きていく〜サバイバル〜  作者: 伊右衛門


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覚醒編10

○本部に帰還してあっという間に10日間が経過した。

おっさんは工房に籠りきりとなり約束通り全員分の鎧を仕上げてくれた。

これまでより防御力はやや低下したが、動きやすく移動時の音も静かになっている。


「ありがとう。期待以上の出来だ」

見送りに来てくれたおっさんにお礼を言う。

おっさん、少しやつれたな。かなり、無理をして仕上げてくれたのだろう。

「構わねえよ。なかなか楽しい仕事だったぜ」

旅から戻ったら新型鎧の感想をおっさんに報告する約束だ。

おっさんはオレたちの感想を元に日常的に使える鎧を開発し、量産する予定になっている。


「それじゃ、そろそろ行くね」

見送りに来ている優子さんをぎゅっと抱き締める。

う~ん、大分お腹が大きくなってるな。順調そうでなによりだ。

「気をつけて行ってきてね」

優子さんもオレを強く抱き締めてくれる。

・・・優子さん、またお胸が大きくなったな。

肉体に感じる弾力が実に心地いい。


このままだと何時までも経っても離れられないので意を決して優子さんの身体を離す。

そして、跪いて優子さんをもう一度抱き寄せる。


今度は我が子に旅立ちのあいさつだ。

「ママたちをよろしく頼むよ」

ー昨夜、というか連日騒がしくしてごめんな。

声に出さずにお腹にいる我が子に謝っておく。

旅から戻って来た時にはもう産まれているかな?


「気をつけて行って来て下さい」

最後にさとるさんとあいさつをしてオレたちは旅立った。


「あれ?香織姐さんは?」

無邪気な玲子の質問は聞こえなかった。


・・・これで最後かもしれないと思うと止まらなくなってね。

明け方までず~っと香織さんを攻め立ててたんだよね。

香織さんは完全に蕩けてしまって出発の時間になっても起き上がれなくなってしまったのだ。

足腰の立たなくなった香織さんとは部屋で挨拶を済ましてきた。

香織さん、半分意識が無かったけど・・・

うん、全面的にオレが悪い。


「ん?」

「アニキ、どしたの?」

「今、誰かがオレを呼ばなかったか?」

「なにも聞こえなかったよ」

ふ~ん、気のせいか。

ライカンスロープである玲子の聴覚はオレよりずっと鋭いからな。


なんか、パパって呼ばれたような気がしたんだが・・・

やっぱ、気のせいだよな。オレの子供はまだ優子さんのお腹の中だもんな。



それから、オレたち一行は旧首都に向け旅立った。


オレたちは基本的にかつての街道を利用して旧首都に向かう事にした。高速道路や線路を使う事も考えたのだが、途中に必ずあるであろうトンネルや橋が崩れている可能性を考慮すると昔の街道の方が安全と判断したのだ。


旅を進めていくと各地に集落を発見する事が出来た。わずか数人しかいない集落と呼ぶのを躊躇われるような小規模集落から数百人以上住む集落までが形成されていた。


パニックから一年以上が経過し、保存していた食料や燃料がほぼ全て使用された事も集落の形成の原因の一つだろう。

元々、長期保存が可能な食料などはパニック初期から各地で品薄になっていた。

物によってはまだ消費期限を迎えていない食料などもあるだろうが、食料より人間の方が先に耐えきれなくなったのだ。


まだ、自給自足体制を確立出来ていないような小さな集落や既に他の集落との交易などを開始している大きな集落などがあり、それぞれに特色があって面白かった。


予想されていた事だが新しく発見された集落のいくつかは残念ながら人間至上主義の集落だった。

外見的に人間と認められないヒトは集落に受け入れないそうだ。

しかし、有り難い事に予想していたより遥かに人間至上主義の集落は少なかった。

自分達もいつ変異するか分からない状況では人間至上主義を貫くのは難しいだろう。


そもそも現在では人間の定義自体が曖昧になっている。


どんな外見なら人間と認めるのか?どんな外見だと人間では無いのか?

ライカンスロープのように変化する肉体を持っている場合はどうするのか?

常人離れした能力を持つ者は人間として認めるのか?

答えられる者は誰もいなかった。


旅の間、心配していた食料に関しても問題は無かった。

変化したウイルスの影響で発生した新生物の中には大型の生物が多く一頭を仕留めると充分な食料になった。

むしろ、四人では食べきれず捨てなくてはいけない事が多くて日本人としては心苦しかった。

尊い命を貰っている訳だから無駄無く使いたいと思うのは傲慢なのだろうか。


途中、何度か山賊や盗賊の襲撃があったが全て簡単に撃退出来た。


まぁ、このメンバーなら当然だろう。


玲子たちライカンスロープは超感覚を持っているので不意打ちされる心配は無いし、マスターは100メートル先の盗賊を弓で簡単に射抜く事が出来る。

大抵の場合、待ち伏せしている盗賊を玲子たちが先に発見し、接近するまでの間にマスターが弓で攻撃。

苦労して近付いてもオレがいるので叩き潰される。


生き残った盗賊は近隣の集落に引き渡す。

引き渡された盗賊が集落でどの様な目に合うかは自分達のこれまでの行動次第だ。

捕らえた盗賊がどんな目に合おうと基本的にオレたちは口出ししない。

無闇に痛め付けるなど見苦しい真似が無ければ処刑されようと止める事はしない。

加害者の人権などという物は恵まれた世界にしか存在しないのだ。


時おり、盗賊に拐われた住人の救出を頼まれる事もあった。

旅の日程は遅れてしまうが困っている人を見捨てるのも忍びない。

それにギルドのいい宣伝にもなるしね。



オレたちは現在、拐われた住人を探して山中を調査中だ。


玲子と藤井くんの二人が先導して匂いを追う。


今回の依頼は拐われた住人の救出と山中に潜む盗賊の退治だ。

依頼してきたのはこの山の麓で発見した集落だ。

200名程の集落なのだが湖の畔に出来た集落で水利を活かして主に米を栽培している。


最初、近付いた時にはかなり警戒されたが持っていた塩を渡し事情を説明すると快く受け入れてくれた。

塩の効果はやはり絶大だ。

これまでの集落でも塩を渡すと大抵の集落が受け入れてくれた。


話を聞いてみると近くの山に盗賊がやって来て困っているとの事だった。

食料を奪われ女性も数人拐われた。

盗賊に抵抗した住人は殺されたそうだ。

集落を捨てて移住しようとの意見も出たがせっかく出来た田畑を捨てるのは惜しいし、拐われた女性も心配だ。

大人数で盗賊退治に向かうと拐われた女性が殺されるかもしれない。

どうしようかと悩んでいる時にオレたちがやって来たのだ。


それならと言う事でオレたちが盗賊退治をする事にした。

オレたちなら万が一発見されても集落とは無関係なので拐われた女性たちが即殺されるような事にはならないだろう。

集落の人たちも悩んだが他に上手い手立ても無い事からオレたちに任せてくれた。

オレたちからは報酬として米を要求した。

盗賊一人で米1キロ。拐われた女性を救い出せば一人につき10キロの米を譲ってくれるそうだ。


盗賊の命の価値は米1キロか。盗賊の命って安いなぁ。



先行していた玲子と藤井くんが立ち止まる。


見ると木々の向こうに粗末な小屋が建っている。

小屋の前には男が二人。

見張りだろう。


マスターと藤井くんをその場に残し、オレと玲子が小屋に近付く。


小屋から据えた匂いとくぐもった声がする。


ーちっ、手遅れだったか。


玲子と視線を合わす。


ーオレが右。お前は左。


簡単な打ち合わせをハンドサインで行いタイミングを合わせて見張りに襲いかかる。


玲子は持っていた大型ナイフで見張りの後頭部を抉る。

オレは見張りの首を一瞬で握り潰す。

二人の見張りは声を出す暇も無く事切れた。


絶命した見張りを引きずって森の中に放り込む。


小屋の周囲を素早く調べるが本当に粗末な小屋だ。

おそらく寝る為だけの小屋なのだろう。


小屋の入り口で合流したマスターたちと頷き合う。


小屋が狭いので玲子も藤井くんも獣化はしない。


そのまま小屋の入り口を引き剥がして内部に突入する。

小屋の中は薄暗いが隙間だらけなので充分に見通せる。


拐われた女性には盗賊が襲いかかっていた。

女性の上にのし掛かっている奴。

女性の下から突き上げてる奴。

女性の髪を掴んでいるのは咥させているのだろう。


「うわっ!」

「なんだ!てめえら!」

「見張りはなにやってる!」


驚き騒ぐ盗賊たちに無言で襲いかかる。

今度はお前らが襲われる番だ。



盗賊達を全員始末して女性たちを助け出す。


「あ、ありがとうございました」

抱き合って泣いている女性の一人が気丈にお礼を述べる。

「もう、大丈夫です」

オレの言葉を聞いた女性の顔が歪み始める。

「あ、ありがどう・・・」

その女性も他の女性と抱き合い一緒に泣き出した。


女性たちのお世話をマスターと玲子に任せてオレと藤井くんで盗賊たちの死体を始末する。


「命は助けられましたが、イヤな気分ですね」

「まったくだ」

盗賊たちの死体を掘った穴の中に適当に放り込む。


はぁ~、優子さんや香織さんに会って癒されたいなぁ


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