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崩壊した世界でみんなで楽しく生きていく〜サバイバル〜  作者: 伊右衛門


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覚醒編5

○「本当か!」

藤井くんの肩を揺さぶる。

「ほ、本当です。それに京子さんも戻ってません」

激しく体を揺さぶられながらも藤井くんが答えてくれる。


会議が長引いたので既に辺りは暗くなっている。

慎重な二人がこんな時間まで戻らないなんてあり得ない。

これまでも二人は必ず暗くなる前に支部に戻って来ていた。


「詳しい話を聞かせてください」

さとるさんがオレの腕を掴んで藤井くんを解放する。


藤井くんの説明によると、さくやさんは京子さんたちと町を見学していたそうだ。

今後、町にも電気を供給するとなるとソーラーパネルの設置場所はかなり重要になる。

それでさくやさんたちは設置に最適な場所を探して町を探索していたらしい。

藤井くんたちが案内を申し出たのだが二人は遠慮して断ったそうだ。


「どうして強引にでも付いていかん!」

田中さんが支部の机を殴り付ける。


ここは危険な町だ。特にさくやさんのような高変異者にとっては・・・

住民は変異者に慣れてきたとは言え、ついこないだまでは人間至上主義者に支配され変異者たちを殺害していたのだ。

住民の全てがオレたちギルドを歓迎している訳では無いだろうし、変異者を認めている訳でも無い。


オレや玲子のように自分で自分の身を守れるなら問題は無い。

しかし、さくやさんにはそこまでの戦闘能力は無いだろう。

変異しているさくやさんの下半身は強力な武器になるが、それを人間相手に使えるかどうかはまったく別なのだ。


「玲子たちはどうした?」

さきほどから玲子の姿が見えない。


「お二人の匂いを追っています」

玲子たちライカンスロープが総出で二人の匂いを追っているそうだ。


「マスターは?」

「ギルドメンバーを連れて町の出入り口を見張っています」


この町は前回の襲撃から城壁を強化してある。

町に数ヵ所ある出入り口を抑えれば出入りは難しい。


京子さんは長身だしさくやさんも身長というか全長はかなりある。

二人をこっそり町から出すのは至難の技だろう。


支部に残っていたメンバーは出来る事を全力で行っている。


「代表者たちにも二人を探すよう要請します」

立ち上がった田中さんをさとるさんが止める。


「代表者たちは信用出来ますか?」


さとるさんの言葉に田中さんの動きが止まる。


確かに最近の代表者たちの動きは不可解だ。

突然、ギルド本部の移転を要望する。

ギルド側としては本部移転の件は既に断っているのに何度も協議を重ねたりしている。


「時間稼ぎですか?」

「分かりません」


時間稼ぎと仮定した場合、なんの為に時間を稼いでいるのだろう?

時間が経過すればする程、相手には不利だと思うのだが・・・

玲子たちライカンスロープなら匂いで相手を追いかける事が出来る。

時間が経てば追い詰められるのは相手の方だ。


まさか、移転を強要する為に二人をさらったりはしないだろう。そんな事をすればギルドとの関係は間違いなく悪化する。いくらなんでも代表者たちがそこまでアホだとは思えない。


そのまま玲子たちの帰りをオレたちはまんじりともせず支部で待つ。


さとるさんは冷静な感じだったが、その尻尾の動きを見れば決して冷静じゃないのが分かる。

左右に忙しく動き、時折床を打ち付けている。

さとるさんの尻尾は自分で動かせない部位なので内心が現れる。


夜明け近くになって佐藤くんが支部に戻って来た。


「二人がどこにいるか分かったか?」

田中さんが怖い顔で佐藤くんに詰め寄る。


「それが・・・」


佐藤くんたちは手分けして町中で二人の匂いを追った。

二人は町中を歩き回っていたらしく、あちこちに匂いの断片があったそうだ。

時間と共に薄まる匂いをなんとか追いかけた佐藤くんたちはある建物の中に二人の匂いが続いているのを発見した。

そこは・・・


「代表者の家か」

苦々しい顔で田中さんがつぶやく。


ある代表者の家に二人の匂いは続いていたのだ。


「しかし、信じられんな」

その家は代表者たちの中でも最もギルドに近い人物の家だったのだ。


通常なら一気に突入してしまいそうな玲子も自分の感覚を信じる事が出来ずに何度も確認したそうだ。

しかし、何度確認しても匂いはその家に続き、そこから出ていった匂いは無かった。

現在、玲子たちはマスターたちと合流して代表者の家を見張っている。


「どうします?」

代表者の家を襲撃すれば、この町との関係は一気に悪化するだろう。

しかも、その証拠は匂いという一般人には理解しがたい証拠だけだ。

しかし、あまり時間をかけたくは無い。

二人が行方不明になって既に数時間が経過している。

・・・最悪の事態を覚悟しなくてはいけないかもしれない。


さとるさんと田中さんが視線を合わす。

「ギルドはなにがあろうとも仲間を見捨てません」

「この町での活動が出来なくなっても仕方無いだろう」

二人が大きくうなずく。


二人の決定を受けてオレはその家に向かった。

二人にはお願いして支部に残ってもらった。


玲子たちの感覚は鋭いので勘違いの可能性は低いがその可能性を排除する事は出来ない。

最悪、ギルドとこの町の関係悪化を目論む者の策略の可能性もある。


「アニキ」

玲子が静かにオレに近付いて来る。

「様子はどうなんだ?」

もう少しで完全に夜が明ける。

出来ればその前に二人を救出してしまいたい。


「周囲を包囲してるけど誰も出てきてないわ」

マスターが代表者の家をじっと見つめる。

「でも、本当にあの人が犯人なのかな?」

玲子は不安そうな顔だ。

自分でも信じられないのだろう。

「間違いなく匂いはここに入ってるんだな?」

「うん、それは間違いないよ」


「おまえはここで周囲を警戒しててくれ」

玲子たちを下がらせる。


室内では槍は役に立たないだろう。

オレは腰に付けている手斧を取り出す。

オレには手斧サイズだが一般人からすれば普通の斧に近いサイズだ。

これの方が室内では振り回しやすい。


「あたしは一緒に行くわよ」

ナイフを抜きながらマスターが隣に立つ。

「最悪、あたし達二人が暴走した事にしましょ」

マスターがにっこりオレに笑いかける。


オレとマスターは二人で代表者の家に静かに侵入した。


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