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崩壊した世界でみんなで楽しく生きていく〜サバイバル〜  作者: 伊右衛門


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拡大編3

○その後、倒したゴブリンたちを調べてみる。

どうやら、ゴブリンはメスの方が大きくなるらしい。

オレたちが倒していたのはほとんどがオスの個体でメスは珍しいようだ。

この付近でゴブリンが増殖しているのはメスの個体がいるからだろう。

それが分かっただけでも収穫だ。

ゴブリンの繁殖方法は不明だったがこれでゴブリンの増殖を食い止めやすくなる。


オレと玲子はギルド支部に戻って、この事を報告する。

「それじゃ、メスを積極的に駆除しなくちゃいけないわね」

マスターの言葉にうなずく。

オスは放っておいても増える事は無いからね。

・・・ゴブリンって、性転換とかしないよな。


その後もオレと玲子はゴブリンの駆除、マスターたちは狩り、田中さんは町の新しいボスたちと折衝を続けた。

「バカどもが変異者の武装を制限しろと言ってきよった」

ボスたちとの話し合いから戻った、田中さんが怒っている。

どうやら、変異者に対する偏見は根深いようだな。

「変異した者はいつ狂い出すか分からんから危険だそうだ」

田中さんが肩をすくめる。

自分たちも変異してる自覚は無いみたいだね。

「どうせ、前の代表者たちからの圧力よ。放っておきましょ」

マスターが田中さんを宥める。


現在、この町にいる変異者はオレや玲子たちライカンスロープだけなので、武装制限はギルドの勢力拡大を妨害する為の提案のようだ。

「アホだよねぇ」

玲子が呆れた声を出す。

まったくだ。武器無しでは駆除も狩りも出来ない。

もっとも、オレや玲子なら素手でも充分可能だろうけどね。

「前のボスたちってまだ威張ってるんですね」

聞いてみると田中さんが渋い顔でうなずく。

どうやら、新しい代表者の中には前のボスのスピーカーが混じってるようだ。

「ギルドは町の内政には干渉しない方針だから、難しいわね」

「だが、ギルド法ではギルドメンバーの武装は認められる予定だ」

田中さんはさとるさんと連絡を取り合って、ギルド法の細部をつめている。

偏見の残るこの町ででた問題の打開策をさとるさんは作成中のギルド法に盛り込んでいるようだ。

見せてもらったギルド法の草案には、ギルドメンバーの武装を認める事やメンバーの移動を制限しない事、さらに将来的にはギルドに対して無課税を認める事などを明記するようだ。


「前のボスにはどんどん反対意見を言ってもらった方がさとるちゃんは喜ぶわね」

彼らの無茶な反対意見に対応したギルド法をさとるさんが考えてくれるからね。

「わしのストレスは溜まるがな」

マスターの言葉に田中さんが苦笑しながらうなずく。

・・・さとるさん、だから、この町に最初の支部を作ったな。


「だから、大丈夫よ」

マスターがオレの肩を叩く。

・・・前のボスたちをちょっと脅そうと思ったんだけど、やらない方がいいみたいだな。



「あの~、すいません」

控えめな声と同時に支部の扉が開かれる。

「はい、なにかご用ですか?」

歯医者だった頃の受け付けに座った藤井くんが愛想よく応対してくれる。

支部を訪れた男性は藤井くんの姿にほっとしたようだ。

ライカンスロープだけど普段の藤井くんは見た目、爽やか好青年だからなぁ。


男性は農作業を行うグループのリーダーだが、昨日、作業中に妙な人影を見たそうだ。

「ゴブリンですか?」

藤井くんの質問に男性は首を振る。

ゴブリンは身長1メートルちょっと、メスでも170センチぐらいだ。

しかし、彼が見かけた人影は2メートル近かったらしい。

それで怖くなった男性は作業中の護衛を依頼に来たのだ。


「なるほど」

藤井くんが男性と話し合う。

護衛するのは構わないけど、それだといつまで必要になるのかが分からない。

藤井くんは人影の調査を男性に勧める。

男性もそれで納得したようだ。

「それで、依頼料ってのはおいくらぐらいになるんですか?」

男性が恐る恐る藤井くんにたずねる。

藤井くんが相場を説明し、この依頼は食料1週間分で受けられた。


う~ん、藤井くん受け付け業務に慣れてきたなぁ。

町の住人はギルドを徐々に受け入れ始め、このような依頼が増えてきている。


「どうだ?」

玲子がクンクン鼻を鳴らして、周囲の匂いを確かめる。

ライカンスロープの玲子は獣化してなくても匂いに対してかなり敏感だ。

「う~ん、なにかの匂いはするんだけどなんの匂いか、分かんない」

匂いを確かめた玲子が首をかしげる。

玲子が嗅いだことの無い匂いって事はゴブリンじゃないな。


現在、オレと玲子は畑に出た人影の調査に出向いている。

「こういうのも楽しいね」

匂いを追う玲子は嬉しそうだ。

ここのところ、ゴブリン退治ばっかりだったからなぁ。

だが、努力の甲斐あってゴブリンの数もかなり減らすことが出来た。

最近は畑に出没するゴブリンの数は激減しているそうだ。

おかげで町の人々はギルドを認め始めている。

順調だな。


「アニキ、これ!」

匂いを追っていた玲子が足元を指差す。

ぬかるんだ地面に足跡がついている。

「かなりでかいな」

オレの足と大差ないように見える。

一番の問題は、足跡が裸足だって事だろう。

指先には爪のような跡まで見える。

「アニキの言ってたトロールってのかな?」

どうだろう?

オレの倒したトロールは一体だけだが、これよりサイズが大きかった。


「なにか分からんから油断するなよ」

本来なら4人での行動がギルドの原則なんだが、支部は人手不足で二人一組ツーマンセルでの行動が多い。

募集はしているのだが、応募はこない。

まぁ、ギルドの信頼が増せば応募してくれる人もいると信じよう。


そのまま、玲子と足跡と匂いを追って森に入る。

「なんか変な匂いがする」

匂いを追う玲子が顔をしかめる。

「どんな感じなんだ?」

オレも鼻はいい方だが、玲子には及ばない。

「んと、アニキの匂いを強くして弱めたみたいな感じ」

・・・分からん。

玲子ががんばってオレに説明してくれるが、匂いを感じていないオレにはいまいち伝わらない。

「あ~、動物っぽい匂いか?人っぽい匂いなのか?」

「ん~、分かんない」

どういう事だ?

ライカンスロープなのかな。


警戒しながら玲子と森を進む。

半日ほどするとオレの鼻にもかすかに匂いを感じる事が出来た。

なにかの獣っぽい匂いだ。

これって、オレの匂いに似てるのか?

軽くショックを受けながら匂いを追う。


「アニキ」

玲子が身を沈める。

前方になにか建造物が見える。

なにかの工場だろうか?

匂いはあの建物に続いているようだ。


「危ないと思ったら、逃げるんだぞ」

玲子にきつく言っておく。

少し、バトルジャンキーの気質のある玲子には注意が必要だ。


警戒しながら二人で建物の中に侵入する。

建物の通路は埃だらけだが、その分足跡が分かりやすい。

・・・二つある?

でかい方はオレたちが追ってきた足跡に間違いないだろうが、それ以外にも足跡がある。

もうひとつの足跡はそれに比べると小さい。

しかも、小さな足跡の方はきちんと靴を履いているようだ。

「「・・・」」

訳がわからなくなって玲子と目を見合わせる。

どういう事なんだろう?


訳は分からないがここでゆっくり相談する事も出来ない。

そのまま、警戒しながら足跡を追う。


数分、進むとなにかの音が聞こえてきた。

・・・これって話し声じゃないのか?

生存者が住んでいるのだろうか?

でも、生存者ならどうして町に移動しないんだ?

ゆっくりと声のする方へ近づいていく。


「・・・あ・・もっと・・・」

・・・これって喘ぎ声だよなぁ。

玲子を見てみると玲子にもなんの声なのか分かったのだろう。

顔を真っ赤にしている。


う~ん、これって突入していいのかなぁ?

声の感じからして無理矢理といった印象は受けない。

両者合意の上なら邪魔するのは野暮だろう。

そう思って、この場は一時引く事にする。

頃合いをみて、再度、来ればいいだろう。

玲子の肩をつついて、後ろに下がらせる。

だが、後ろに下がる途中で玲子がすっ転んでしまう。

どうやら、喘ぎ声を聞いて舞い上がってしまったようだ。



扉の向こうからばたばたした物音がする。

ばっちり気付かれたようだ。

「だれや!」

扉の向こうから鋭い女性の声がする。

「あ~、近くの集落から調査を頼まれてやって来た」

結局、野暮な事をしてしまった。


扉越しに事情を説明して、こちらから襲わない事を約束して部屋に入れてもらう。

中に居たのは、大柄な男性と小柄な女性だった。

男性の方は変異しており下の犬歯が上に向かって大きく伸びている。

それに手や足の爪も鋭く尖り、筋肉質の体をしている。

かなり強いんじゃないだろうか?

女性の方は変異してないように見えたが、よく見ると腕にはウロコが生えている。


二人は恋人というかご夫婦で町を探して放浪していたそうだ。

「ようやく町を見つけたけど、うちらみたいな化け物は入れてくれんかった」

二人は諦めて別の集落を目指そうとしたんだけど、奥さんがケガをしてしまいここで休んでいたそうだ。

「なんで、畑の近くにいたの?」

玲子の質問に奥さんが答えにくそうにする。

「うちがケガしてもたからやねん」

旦那さん一人では奥さんを置いて、遠くまで狩りに出掛ける事も出来ない。

そこで、畑から定期的に作物を失敬していたらしい。


「こういう場合ってどうするの?」

玲子に聞かれるがオレもこんな事態は初めてだ。

やむにやまれぬ事情があったにせよ、盗みは盗みだ。

しかし、彼らが作物を盗まざるえなかったのはあの集落が変異者を拒否してたからでもある。

う~ん、変異体対策は考えていたけど、こういった事態は考えてなかったなぁ。


「まぁ、町の人に謝って許してもらうのが一番じゃないかな?」

「でも、あの町にはうちら入れてもらえへんよ」

二人はここに居たので町が変わった事を知らないようだ。

町が少し変わった事やギルドの事を二人に説明する。

「そうやったんや」

奥さんは驚いている。


結局、二人は町に来て畑で作業していたグループに謝る事を約束してくれた。

やれやれ、良かった。


町に戻る道すがら、玲子が奥さんといろいろ話している。

お二人は元々夫婦でお互いに変異した後も助け合って生きてきたそうだ。

夫婦で変異するなんて運が良かったんだろうなぁ。


しかし、犯罪対策なんて考えてなかったな。

今後、こういった時にギルドとしてどう動くべきかをさとるさんたちと相談しといた方がいいだろう。

今後、ギルドを大きくするとなればいろんな依頼に対処しなくてはいけなくなる。

警察が機能していない現在、犯罪者の捕縛を依頼される事もあるだろう。

ゴブリンなどの変異体の生態を調べて効率的な対処法も確立しなくてはいけない。

ギルドが大きくなるには、人々の信頼が絶対に必要になる。

それには、ギルドが人々の期待に応えられる組織でないといけない。

どれも必要な事だ。それらの事も考えておかないとな。





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