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崩壊した世界でみんなで楽しく生きていく〜サバイバル〜  作者: 伊右衛門


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82/118

拡大編2

○オレは田中さんたちと例の集落に入った。


以前、来た時は集落の中には入れなかったので、オレが集落の中を見るのはこれが初めてとなる。

迎えに出てきた集落の新しい代表者に案内されて集落の中を歩く。

集落の中は特に目を見張る物は無い。

普通の町を歩いている感覚だ。


使用中の建物のドアや窓がフェンスなどにがっちりと覆われ安全性を高められているのが、以前の世界との違いだろう。

町中にも建物を取り壊して畑などが作られてる。

そこで働いている人たちが歩くオレたちをちらちらと見ている。

いや、正確にはオレを見ている。


「やっぱり、変異者は珍しいんですかね?」

先頭を歩く代表に聞いてみる。

「・・・以前の事でこの町に変異した人が入るのは久しぶりなんです」

やや、言いにくそうにだがきちんと説明してくれる。


代表の人は農業グループで働いているそうだ。

以前のボスたちは変異者を殺害していたので、全員解任されたそうだ。

もっとも、今もこの町に住んでいるのでそれなりの影響力を持っているみたいだ。

もしかしたら、新しく選ばれたばかりの今の代表者より影響力は強いかもしれない。

新しく選ばれた代表は色々、苦労してるみたいだな。


しばらく町中を歩いて、ある建物まで案内される。


かつてのメインストリートから少し外れた所にある住居の付随したなにかの店舗のようだ。

「皆さんにはこちらを使ってもらおうと思っているんですが、いかがでしょうか?」

ふむ、結構おしゃれな建物だな。建物の前には大きな駐車場がある為、敷地もかなり広い。

「あら、かわいい建物ね」

マスターは気に入ったみたいだ。

ここ、なんのお店だったんだろう?

看板は壊れているので、駐車場の方を見てみる。

・・・歯医者さんだったみたいだね。


「ここを自由に使用して構わんのですかな?」

田中さんが建物を見渡しながら、代表に問いかける。

「はい。中も一応、掃除しておきました」

解放感を出す為のガラス部分が多いのが気になるが、きれいだしいいんじゃないかな?

誰も反対しないのを確認して田中さんが代表の手を握る。

「ありがたく使わせていただきます」

代表が立ち去るのを見送って中を確認してみる。


入り口の左に待ち合いのスペース、中に並んでいる小さな個室は治療スペースだろう。

「結構、いいんじゃない」

まだ、住居スペースは見ていないが充分な広さだし清潔だ。

「わたし、歯医者嫌い」

まぁ、歯医者が大好きな人間は珍しいだろうな。


その後、住居スペースに移動して部屋割りを行う。

といっても、女性である玲子に個室を与え、他のメンバーは主寝室でざこ寝になる。

玲子は自分も一緒の部屋でいいと言ってくれたがそれはこちらが困る。

「せっかくなんだから個室を楽しめ」

「え~、掃除とか自分でやんのめんどくさい」

「・・・がんばって自分でやりなさい」

こいつ、それで一緒の部屋を希望したのか。



それから、約一ヶ月が経過した。


心配していた住民との関係も、まずまず良好に構築出来つつある。

田中さんとマスターは見た目に関してはほぼ普通だし、玲子たちライカンスロープは獣化しなければ普通の人と区別するのは難しいからね。

一番、目立ったのはオレだが周囲の人と積極的に話すようにしてなんとか慣れてもらった。


この町で多いギルドへの依頼はゴブリンなど変異体の駆除と減った狩人に代わって食料調達だ。

特に変異体の駆除は基地のある本部と比べ数倍の数だ。


今日もオレは玲子と変異体の駆除をこなしている。

「ほれ、そっちに行ったぞ」

茂みに隠れていたゴブリンたちを追い出す。

「は~い」

獣化した玲子がゴブリンの頭を蹴っ飛ばす。

ぐしゃっ

音を立ててゴブリンの頭が潰れる。

「よいしょっ!」

オレも槍を振るってゴブリンを両断する。


うん、なかなかいい槍だな。

定期的に本部へ伝令に走る佐藤くんが持ち帰ったおっさん特製の新しい槍だが、穂先が長いので使いやすい。

う~ん、オレの太刀はいつ出来るんだろう。

楽しみだ。


「全部、倒したよ」

玲子が手足を血に染めて歩いてくる。

「・・・おまえの槍は?」

玲子にもおっさんが槍を作ってくれたんだが・・・

「ちゃんと持ってるよ」

玲子が槍をぶんぶん振り回す。

「いや、それを使えよな」

「え~、もったいないよ」

玲子が槍を庇うように抱き締める。


おっさんが玲子に鍛えてくれた槍には、女性が使う事を意識して少し装飾が施されているのだが、玲子はそれがいたくお気に召したらしい。

結果、槍はいつもぴかぴかに磨かれるばかりで実際に使用された事は一度も無い。

・・・玲子、それだと槍を持ってくる意味無いんだよ。

今度、おっさんに頼んでもっと武骨な槍を鍛えてもらおう。



「しかし、この辺ゴブリンが多いな」

オレたちが倒したゴブリンを確認する。

玲子が討伐証明の為に耳を切り取る。

「もう、袋がいっぱいだよ」

玲子が腰に着けている袋は大きく膨らんでいる。


玲子と変異体退治に出て二日だが、その間に倒したゴブリンは50体近い。

ここは森の中を数時間歩けば、ゴブリンの群れに出くわす状態だ。

基地周辺だとゴブリンを倒すより探し出すのに苦労するのになぁ。

「前からこんなにゴブリンが多いのか?」

これだと普通の人が狩りをするだけでも一苦労だと思うんだが。

「こんなにたくさんのゴブリンを見たのは初めてだよ」

やっぱり、そうだよな。


狩人が減る。

  ↓

獲物が増える。

  ↓

ゴブリンの餌が増える。

  ↓

ゴブリンが集まる。



こんな感じなんだろうか?

しかし、いくらなんでも数が多すぎるような気がする。

う~ん、さとるさんがいればなにかに気付くかもしれないが、オレと玲子ではちょっと無理だな。


「アニキ、そろそろ町に戻る?」

「そうだな」

夜営しながら玲子と今後の計画を話し合う。

狩りの得意な玲子がいれば食料に困る事は無いが、ゴブリン退治にはきりがないからなぁ。

たき火であぶられる猪を見ながら考える。


「もう一日、ゴブリン退治をしたら町に帰るか」

ある程度、ゴブリンの数を減らさないと我々の食料まで奪われてしまう。

「うん」

玲子がうなずきながら、肉に手を延ばす。

ただ、塩をまぶしてあぶっただけの肉だが旨い。

「へど、ほんなにゴブリンがほほいはんへおおろきだね」

肉を口一杯に頬張りながら玲子がしゃべる。

「・・・肉を飲み込んでから話せ」

オレの言葉にうなずいて玲子が口を動かす。

「こんなにゴブリンが多いなんて驚きだね」

「ああ」

ゴブリンは共食いや生存者に狩られてだいぶ数を減らした筈だ。

それなのにこの森のゴブリンの密度はパニック直後に近い。

なんで、この森にこんなにゴブリンが集まってるんだろうなぁ。


翌朝、玲子と二人で森の中をゴブリンを探して歩き回る。

「アニキ、見つけたよ」

玲子が前方を指差す。

・・・ほんとにゴブリンが多いなぁ。

玲子の前方200メートルぐらい先にゴブリンの群れがいる。


食い物を探しているのか、地面に四つん這いになっていてこちらには気付いていない。

「アニキ、やろうよ」

玲子が鎧の紐を緩めて獣化しようとする。

「待て」

玲子が獣化するのを腕をつかんで止める。

獣化を止められた玲子が首をかしげる。

「なんで?」


「なんか様子がおかしくないか?」

あのゴブリンたち、さっきからずっと四つん這いだぞ。

「虫かなにか探してるんじゃない?」

確かにゴブリンは虫をよく食うみたいだが、それにしてもおかしいぞ。

虫を探しているのなら動き回ると思うが、さっきからゴブリンたちはじっとしている。

・・・あれって土下座みたいな感じじゃないのか?


逸る玲子をなだめ、木陰に隠れてゴブリンたちを観察する。

しばらくすると、四つん這いのゴブリンたちの前方の茂みががさがさ揺れ始めた。

茂みの中から出てきたのは、一際巨大なゴブリンだった。


その大きなゴブリンは片手に他のゴブリンを捕まえている。

捕まっていた個体は巨大なゴブリンが手を離しても離れようとしない。

結局、そのゴブリンは巨大なゴブリンに蹴り飛ばされるまですがり付いていた。


巨大なゴブリンは、

「ギャ、ギャ」

と鳴いて、四つん這いのゴブリンたちを威嚇しているようだ。


威嚇されたゴブリンたちはずるずる後ろに下がるが、立って逃げる気配は無い。

「・・・なんか威張ったゴブリンだね」

玲子がささやく。

確かにあの大きなゴブリンは他のゴブリンに対して威張っているように見える。

「・・・ボスなのか?」

ゴブリンの群れにボスが存在するのは普通だが、あれほど大きなゴブリンは珍しい。


巨大なゴブリンは唸り声をあげて、他のゴブリンたちを威嚇している。

すると、四つん這いのゴブリンの一体がなにかを差し出した。

遠くてはっきりと確認出来ないが、なにかの虫を差し出したようだ。

大きなゴブリンは差し出された虫を奪い取って貪り食う。

それだけでは足りなかったのか、さらに威嚇するが、四つん這いのゴブリンたちはもう虫を持っていないようだ。

それに腹を立てたのか、大きなゴブリンが四つん這いのゴブリンの一体を蹴り飛ばす。

かなり強く蹴り飛ばされたのか、蹴られたゴブリンはそのまま動かなくなった。

それを興味無さげに見ていた大きなゴブリンはまた茂みの中に入っていく。


「アニキ」

「あのでかいのを逃がすなよ」

あの巨大な個体は普通のゴブリンではなさそうだ。

「うん!」

玲子が鎧を緩めて獣化を始める。


こちらに気付いたゴブリンたちが立ち上がる。

ゴブリンの群れにオレと玲子が襲いかかる。


「なんだったんだろ、こいつ?」

獣化を解いた玲子が仕留めた大きなゴブリンをつつく。

茂みの中にいた大きなゴブリンは逃げようとしたところを玲子に仕留められた。

他のゴブリンたちは一匹残らずオレが倒した。


う~ん、ボスかと思ったけど、この大きなゴブリンはボスじゃないみたいだ。

大きなゴブリンはオレたちを確認すると真っ先に逃げようと走り出した。

他のゴブリンたちが邪魔だったので玲子を先行させて倒す事が出来たが、あの動きは群れを見捨てて逃げる気満々だった。


ボスだから威張ってると思ったんだけど違うようだ。

じゃあ、なんでこのゴブリンはあんなに威張っていたんだろう?


「・・・玲子、ちょっと目をつぶっとけ」

「う、うん」

玲子が素直に目をつぶる。


それを確認して、オレは巨大なゴブリンの纏ったぼろ布を槍で切り裂く。

・・・やっぱり。


「玲子、もういいぞ」

オレの言葉で玲子が目を開く。

「アニキ、どしたの?」

首をかしげる玲子に巨大ゴブリンの死体を指差す。

「こいつ、メスだ」



今夜はここまでとなります。

ありがとうございました。

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