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崩壊した世界でみんなで楽しく生きていく〜サバイバル〜  作者: 伊右衛門


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調査編5

○オレは議長に連れられて建物の中を歩いている。


オレは結社の幹部たちと同盟の諸条件に関して話し合っていた。

もっとも、ギルド幹部の一人に過ぎないオレの一存では同盟の締結は不可能だ。

もちろん彼らもそれは分かっていた。

今回の話し合いは今後ギルドと結社が同盟を話し合う為の話し合いだ。


「実は君に見て欲しいものがあるんだ」


議長が会議の席でそう言った時、他の幹部たちは慌てて議長を止めたが彼の決心は変わらなかった。

「これから協力する以上、全てを知ってもらっておいた方がいい」

幹部たちの慌て方は芝居では無かった。

どうやら議長は幹部たちには相談せずオレに結社の秘密を明らかにする事にしたようだ。


そうしてオレと議長は廊下を二人で歩いている。


それにしてもこの建物ってもしかして・・・

最初見た時は建物より中にいる人物に気を取られ気付かなかったが・・・


「気が付いたようだね。そう、ここは我が国最大の図書館だ」

議長が隣を歩くオレを見て微笑む。


やっぱり、そうか。

以前に冷やかし半分で一度だけ来たことがあったので、なんとなく覚えていた。


「なぜ、結社は図書館を本拠地に?」

他にも本拠地をして使用するなら適切な建物はあると思うが?


「こここそが我々の始まりなんだよ」

議長の説明によると結社は元々失われていく知識を保護する為の組織だった。

しかし、混乱する世界を放っておけず知識を活用した結果、様々な人々が集い現在の組織が出来上がったそうだ。


オレと議長は建物の最奥まで進んだ。

重厚な扉の前に二人の護衛が立っている。


「彼は大丈夫だ」

静かにオレを睨む二人の護衛に議長が声を掛ける。

二人はしばらくオレを睨んでいたが扉に手を掛け開けてくれた。


暗い室内に足を踏み入れる。

暗さにだんだんと目が慣れてきた。


「・・・なんだ、これは?」

これという言い方は不適切かもしれない。

オレの眼前には一人の女性がいた。

いや、女性というより少女といった方がいいのかもしれない。

その顔にはまだ幼さが残っている。

しかし、これを少女といっていいのだろうか?

確かに顔は人間の少女なのだが、その肉体は腕は肘から下が胴体は腰から下が完全になにかに変異している。

そのなにかは室内に広がり少女はまるで壁から生えた胸像のようだ。


「私になにかご用ですか?」

少女の声が室内に響く。


「いや、彼に君を紹介したかっただけだ。邪魔をしてすまない」

少女が反応した事に議長は少し驚いたようだ。

「初めまして。わたしは加藤 ハルカです」

そう言って少女はオレを静かに見詰める。


「なぁ、加藤って?」

議長と同じ名字だがなにか関係があるのだろうか?


「彼女は私の娘だ」

「・・・」

年齢は美咲ちゃんと同じぐらいか少し上ぐらいだろうか?

言われてみれば少女の顔には少し議長の面影がある。


「彼女のあの姿は?」

「彼女の肉体は変異してこの建物の地下まで拡がっている」

この建物の地下ってかなり広大なんじゃないだろうか?


「痛みは無いのか?」

「・・・それは全くありません」

オレの質問に少女が一瞬驚く。

「なんだよ?」

「いえ、私に会い肉体の心配をしたのは父以外ではあなたが初めてです」

彼女の表情から苦痛は感じなかったが、念の為、確認しておきたかっただけだ。


「彼女の肉体はこの建物の蔵書を飲み込み膨張している」

オレと少女の会話を静かに聞いていた議長が説明してくれる。


「書物を食ってるって事か?」

「いや、彼女は体内に取り込んだ書物から知識を読み取っているんだ。書物だけでは無く電子データからもね」

一種の生体コンピューターという事だろうか?


「では、そろそろ戻るとするかね?」

「ん?ああ、そうだな」

彼女の興味はあるがいつまでものんびりとはしていられない。

マスターたちも心配しているだろう。

議長に促されてオレは扉に向かう。


「待ってください」

振り向いたオレに少女が声を掛ける。


「なんだ?」

「ハルカ、どうしたんだね?」


「行かせません」

滑らかだった壁が蠢きだした。

気が付かなかったが周囲の壁までもが変異した少女の肉体だったようだ。


「ハルカ、何をしている!」

議長が動き出した壁の前に立つが壁の動きは止まらない。

もしかして、この床も少女の肉体なんだろうか?


「むっ!」

壁の一部、いや、少女の変異した肉体の一部がオレを包み込むように動く。

「ハルカ!やめなさい!」

議長が慌てて少女、ハルカを止めるが少女の肉体はそのままオレを飲み込んだ。


-ちっ、油断しすぎたか。

無垢な少女に見えたので抵抗しなかったばかりにオレの全身は少女に飲み込まれてしまった。


可哀想だが力ずくで脱出させてもらおう。

全身を包む少女の肉体の強度からオレの力なら脱出出来るだろう。

少女を傷付けたくは無いけど仕方ない。


むう!

オレは全身に力を込める。


-待ってください。


-ん?なんだ?

今、なんか頭の中で声がしたぞ。


-危険はありません。

さっきの少女か?


-危険は無いって言われてもなぁ。

確かに全身を少女に包まれているが不思議と呼吸は出来るし圧迫感も無い。


-お願いします。わたしの話を聞いてください。

脳内に響く少女の声には真摯な響きがあった。


-お願いにしては変わったやり方だな。

殺意や害意を感じないのでとりあえず全身に込めた力を抜く。

さっきの感じだと無理矢理力で脱出は可能だろう。


-ありがとうございます。

オレが抵抗を止めた事に安心したのか少女の力が少し緩む。


-なんでこんな事をした?

口まで少女の肉体に包まれているので頭でそう少女に問い掛ける。


-すいません。どうしても見てもらいたい事があって・・・

やっぱり脳内の思考を読んでるな。

マスターと同種の能力だ。


-見てもらいたい事?


-はい。


-なんで、オレに?

そんな事は結社の仲間や父親である議長に見てもらえばいいんじゃないだろうか?


-あなたに強く関係している事です。


-オレに?

少女とは今日初めて会ったのだが?


-これです。


少女の言葉と供に脳内に映像が溢れ出す。


それは様々な光景だった。


ギルドと結社が仲良く行動している場面があったかと思えばギルドと結社が争っているような場面もある。


色々なパターンでギルドと結社が同盟した場面と対立した場面を見せられる。


状況は様々だったがひとつの共通するパターンに気付いた。


ギルドと結社が同盟した場合は少女は無事だったがギルドと結社が敵対した場合は状況に関わらず少女は殺されていた。

そして、少女が殺される場面では必ずオレが少女に止めを刺している。


ギルドと結社の共存が少女にとって必要だという事なんだろうか?


-そうです。


-これを信じろっていうのか?

この映像はあくまで少女の予想に過ぎないのでは?


-人の行動パターンや集団心理を考慮した極めて確度の高い予想です。


そう言って少女は様々な未来予想をオレの脳内に見せつける。


なるほど。少女は膨大な知識を有するようだ。


-でもなぁ

少女はギルドのメンバーを実際に知っている訳では無い。

それではこの未来予想は確度が高いとは思えないのだが・・・


-わたしは変異して以降、世界の深部にアクセス出来るようになりました。


-世界の深部?

なんだ、それ?


-ヒトの魂の奥底に眠る領域です。


集合意識とかいうやつだろうか?なんか、一時期そういうのが流行ったような気がする。


そう考えるとオレの脳内が暖かくなった。

脳内が暖かくなるなんて変な感じだがそうとしか思えない。


-その感覚が最も近いと思います。

どうやら正解だったらしい。


-でも、やはりなんでオレに言うんだ?

ギルドの一幹部に過ぎないオレに言ってもあまり影響は無いのではないだろうか?


-あなたが単体でわたしを殺害可能な稀有な存在だからです。


-ん?強いって事か?

世界にはオレと同等の力を持った変異者はいると思うが?


-戦闘力だけではありません。あなたの思考はわたしの影響を受け付けません。


-それってオレがえらくワガママな男に聞こえるんだが・・・

年端もいかない少女にそう認定されるのはちょっとカナシイ。


-わたしは無意識にですが周囲の人々にわたしを守るようにお願いしています。


・・・それってお願いじゃなくて洗脳じゃないだろうか?


-無意識ですので止められませんし、洗脳ほど強力ではありません。


-ほんとかな~?


-ヒトの意識の天秤を少し傾けるだけに過ぎません。


-少女を殺す意識と守る意識があったら守る意識を優先させるのか?


-そうです。しかし、何故かあなたには通用しないんです。


-なんでだろう?特に思い当たる事は無いが?

ん?少女の能力は自分を守らせる。

それって敵対心を弱めるあのコウモリ男の能力に似てるんじゃないだろうか?


-不肖の兄がご迷惑をおかけしました。

脳内で少女がぺこりと頭を下げる。


兄だったんかい!

って事は、あいつが言ってた新世界の救世主ってこの少女の事か。

・・・議長も色々苦労してるんだろうなぁ。


あのコウモリ男は議長の息子でハルカの兄か・・・

オレがコウモリ男の事を考えてるとなんだか周囲がもにょもにょするような奇妙な感覚を感じた。


-あいつの事、嫌いなのか?

-・・・その、なんというか、・・・苦手です。

一応、身内だけど、いや、むしろ身内だからか・・・


-あの、どうでしょう?わたしとお友だちになってくれますか?


-お友だちねぇ。ここで友達になるって言っても解放されたら裏切るかもしれないぞ?

大人はズルいんだぞ。


-それは大丈夫です。あなたとわたしは現在、直接思考が繋がっているのでウソを言えば分かります。


-あっ、そうなの?

マスターと同じく接触テレパス的な感じだと思っていた。

どうやら、少女の能力はマスターよりかなり強力なようだ。


オレは脳内で見せられた光景を思い出す。


-うん、いいよ。友達になろう。

この年で友達宣言ってちょっと照れるな。


-ありがとうございます。


少女の明らかに安堵した感覚がダイレクトに伝わってくる。

なるほど。これが思考を直接繋げた感覚か。


-どうして了承してくれたのですか?


-それも分かるんじゃないの?


-あなたの思考にはアクセスしにくいんです。


ふ~ん、ウソついても分からなかったかもな。


-あっ、それは感覚的に分かります。


-そうなのか。

まぁ、騙すつもりは無いけどね。


-参考までに教えてもらえますか?


-オレの一番大切な人たちの事を考えたからだよ。


先ほど見せられた未来予想の光景の中でギルドと結社が争うパターンでは優子さんや香織さんが犠牲になった光景が何度かあった。

優子さんだけが犠牲になるケースや香織さんだけが犠牲になるケース、最悪のケースでは二人ともが犠牲になっていた。

しかし、ギルドと結社が手を結んだ未来予想では二人が犠牲になるケースは見られなかった。

正直、少女の事はオレにとって最優先事項では無い。

オレの最優先事項はあくまで(ゆうこさん)(かおりさん)だ。

二人が犠牲になる未来など断じて認める事は出来ない。

他の誰が犠牲になったとしてもだ。


-だから、きみと友達になる事にした。


-納得出来ました。


-あの二人が犠牲になったらきみに八つ当たりするかもしれないから気を付けてね。

少し殺気を放つ。


-・・・心しておきます。

オレの本気が分かったのだろう。

少女の声が少し震える。


-二人が無事ならきみとも友達。みんなで幸せになろう。


-はい、今回は不躾なお願いを聞いてくださりありがとうございました。


-面白かったから構わないけど、今後は男の子を誘う時は段階を踏むように!

じゃないと尻軽娘と思われるぞ。

そしたら、議長は悲しむだろうなぁ。


-はい、今後は気を付けます。

少女の思考が少し笑っている。

この少女、内面は案外いたずらっ娘なのかもしれない。


-んじゃ、そろそろ解放してくれ。

苦しくはないけど自由に動けない状況は好きではない。


-はい。今回のお礼を受け取ってください。


-お礼?


-それは後のお楽しみです。

少女の笑顔の波動が伝わってくる。


-やっぱりいたずらっ娘だな。


-またわたしにも会いに来てくださいね。


-わたしにも?どういう意味だ?

なんかニュアンスが不気味なんだけど?


-レディに対して失礼ですよ。


-ごめんなさい。


笑いの波動を感じながらオレの全身を包んでいた少女の肉体が緩んでいく。


こうしてオレは少女との邂逅を終えた。



本日はここまでとなります。

たくさんのアクセス、ありがとうございます。

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次回、投稿は明日、朝の予定です。

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