エピソード27 = 小さな勝利
ハイヴまであと少し。
しかし、眼前には遺神体が3機、どれも攻撃態勢を取っておりとても通してくれる雰囲気ではなかった。
ハイヴに向かう事で、このようなリスクが起きる事は分かっていた。
……でも、オレ1人が死んだところで大きな犠牲にはならない。
そんな想いだけが、オレをここまで突き動かしていた。
『…それじゃあ結果誰も救われはしねぇんだよ!!』
突然脳裏にライズさんの言葉が響く。
今までのピンチには、必ず誰かが助けに来てくれた。
しかし、そんな奇跡はもう起きない。
『大人になって大きな事が出来るようになったら絶対にこの借りを返すんだ。』
その次に浮かんだのは、オレ自身の決意。
_______ああ…!
「そうだ!オレは……、強くなって!…あの人達に恩返しをするんだ!」
大ムカデの影響で産卵した瓦礫から、折れた鉄骨を拾う。
子供のオレにはとても重たいが、振り回せない程ではない。
「……だから!こんなところでお前らなんかにやられるか!!」
大声で自分を鼓舞し、オレは拳を握りしめる。
…ライズさんならこんな奴ら、苦戦もしてなかった。
…思い出せ…ライズさんはどうやって戦っていたのかを。
遺神体はアーム以外の攻撃方法を持っていない。
ライズさんはそれを刃に触れないようにアームから受け流して、その隙に開いた中を直接破壊していた。
オレは折れた鉄骨をライズさんの動きを意識しながら振り回した。
想像以上に重たいが、きっと破壊力はあるだろう。
遺神体はそれをスッと躱して、アームをオレめがけて振り下ろす。
「うおぉッ!」
鉄骨で受け流そうとしたオレは、うまく力を逃がし損ねてアームの力で振り払われる。
尻餅をつきつつ起き上がると、鉄骨が軽くなっていることを感じる。
受け流し損ねたまま先端がアーム先の刃を掠めたようで、斜めに切断されている。
全く手応えを感じなかったその刃の鋭利さに身震いをするが、まだ戦意はなくならなかった。
切断された鉄骨は鋭利な刃と化し、先ほどまでよりも攻撃的な姿をしている。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
素っ頓狂な掛け声とともにオレは再び飛びかかった。
しかし、今度はアームで防がれて勢いを殺される。
跳ね飛ばされると思った刹那、アームがその節のような関節を利用して上から襲いかかる。
「くっ!」
転がるようにかわして姿勢を立て直すと、急に別の遺神体が飛びかかってきていた。
「あっ……。」
かわせないと思った。もう駄目だと思った。
オレは目をつぶってしまった。
_____ガスッ!!
「ギッ!………。」
腕に伝わる鈍い感覚に目を開けると、反射的に突き出していた鉄骨に遺神体が串刺しになっている。
その重さに耐えきれず、鉄骨を落としてしまった。
遺神体から引き抜こうと力をかけるがビクともしない。
「……ははっ…!……やったぞ!…………。」
獲物を危機的状況にも関わらずオレは俄然戦意が沸き立っていた。
小さな個体ではあるが、あの遺神体を破壊したという事実がオレをライズさんに少しだけ近づけたようで嬉しかった。
そんな状況で待ってくれるわけもなく、さっきオレを吹き飛ばした小型の遺神体は間髪入れずにオレに襲いかかる。
何もしていないようだった大型の方も4本目までのアームを展開して近づいてくる。
流石に手の打ちようがないので走って逃げる。
ハイヴ内で追いかけられたから分かっている事だが、小型個体は子供のオレの脚にすら追いつけない。
走るだけで小型は撒けてオレに負ける。
一機撃破した事で自信がついたオレはさっきまでとは違って、死ぬ気など全くなくなっていた。
問題は大型個体だった。
巨体ゆえに歩幅が大きく、攻撃用のアームも1つではない為に隙がない。
このまま走っていては、すぐに勢いをつけたソイツに追いつかれてしまう。
あのときライズさんは………。
ライズさんは不思議な力を使って倒していた。
勿論オレに真似が出来る筈もないが、ライズさんはその力を使う前に……_____
__「懐に潜り込んで、攻撃を避ける!!」
突然急停止して向かって来たオレに対応出来なかった遺神体のアームは空を斬り、そのままオレは股下を潜り抜ける。
勢いがついて止まれなかったようでそのまま瓦礫に衝突していた。
…よく見ると、撒いたはずの小型個体がそれに巻き込まれてひしゃげている。
挟み打ちを狙っていたのだろうか……入り組んだここは挟撃に適しているのは確かだった。
あのまま走っていたら、そのままアームの餌食だったかもしれない……。
オレは遺神体の知能に驚きつつも、自分一人で3機も倒した事に酷く興奮していた。
「……よしっ!」
ハイヴまでの道へ戻る。
遠くで大ムカデが暴れているのが見えた。
あの絶望を見ても、今度は勇気が掻き消える事はなかった。
やっと主人公らしいムーヴをさせる事が出来た…。




